46 もしかして…
あの悲劇から数日の間、ノアたちは村の復興のために身体を動かし、一日でも早い村の再起を願った。
「は〜い、お昼ご飯できましたよ〜!」
「「「おおお!!!」」」
「お、もうそんな時間か」
「私たちも行きましょっ」
ノアとフェリスは協力して街の復興に取り組み、アメリアはセリーなどの女性と共に昼食を用意するなどして村の復興に貢献する。
そんな風にして数日が経ち、村は異様なスピードで復興を遂げた。
「あれ?もう終わりか?」
「昨日まではあの辺の片付けできてなかったのになぁ」
「多分村長さんたちが頑張ってくれたんだろうな。今度お礼しに行かないとな」
明らかにおかしい復興のスピードに村民たちは疑問を抱くが、キツイ復興作業が終わったことによる幸福感の方が大きかったため誰も気にせず各々の帰るべき場所に去っていった。
そしてこの復興の立役者であるノアは村長の住まう家にお邪魔して食事をいただいていた。
「ん〜!おいひいれふ〜!!」
昔一度だけセシリアの料理をいただいて感動を覚えたアメリアは今も彼女の料理を頬張って満面の笑みを浮かべている。
「毎日食べたいれふ〜」
「確かに、これなら毎日食べても飽きないな」
「あの、後でレシピをお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろん構いませんよ〜」
「ありがとうございます」
この場の全員が一口二口とセシリアの料理を食べ進め、気づけば皿には何もなくなっていて。
「はっ!!もうなくなっちゃった…」
「ふふふっ、良い食べっぷりですねっ。おかわりありますけどどうしますか?」
「いただきますっ!」
「私もお願いします」
「あ、俺もお願いします」
そして完全にセシリアの料理や魅了された三人は続々と出された料理を頬張りつくす。
「はっはっはっ、みなさんよく食べますねー」
「お母さんの料理はとても美味しいので気持ちはよくわかりますね」
「あら♡嬉しいこと言ってくれるわね〜」
どうやらセシリアの料理に惚れ込んでいるのはノアたちだけではなく、家族までもが彼女の料理の虜になっていた。
そして私がこの場の全員が料理に夢中になり、気づけばおかわりもなくなってしまって。
「あら?もうおかわりなくなっちゃったわ〜」
「「「「「!!!!!?????」」」」」
セシリアの報告を聞くと、この場にいた全員が虚無感に襲われた。
「も、もう終わりですか…?」
「ええ。ごめんなさいね〜」
「もっと食べたかったなぁ…」
「あと五杯はいけたな」
「まあ押しかけてるのは私たちの方なんだし、ここは我慢しましょ?」
「ま、それもそうか」
「本当にごめんなさいね〜。今晩はもっと用意しますから」
「いえいえ、おかまいなく」
てか、なんかしれっと今晩も招待されてしまった。
そもそも今日来た目的はダンテから話があるからであって、三人はそれが終われば宿に向かうつもりであった。
だがここの家族にそうさせるつもりはなく、今晩は意地でも泊まらせるつもりであった。
「まあ遠慮しないでくださいよ。村を助けてくれた礼ですから。本来ならもっとまともな物を渡せれば良いのですが、今の私たちにはこれぐらいしかできませんので」
ダンテは少し表情を暗くしてそう言ったため、ノアたちは何も言えなくなって渋々首を縦に振った。
「…わかりました。今晩だけお邪魔させていただきますね」
「ありがとうございます!」
「今夜は騒がしくなりそうね〜」
といった感じでお泊まりが決定し、同時にアメリアやフェリスは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「どうした?そんなに嬉しかったか?」
「そうねっ。お泊まりって言葉を聞くだけでどこかテンションが上がってしまって」
「それにセリーちゃんと一緒だなんて最高だよっ!」
「ふふふっ、そう言っていただけると嬉しいです」
どうやらこの三人はこの数日間で絆を深めつつあるようで、今晩もおそらく三人で女子会を開くのであろう。
そうなるとノアは一人寂しく眠りにつくことになるが、最近復興支援などによって疲れが溜まってきているので逆に有り難くもあった。
(久々に安眠できそうだ)
今晩だけは何も考えずにゆっくり眠れると考えてお泊まりが少し楽しみになっていると、突如ダンテがこちらに向かって真剣な表情で話しかけてきた。
「あの、申し訳ありませんが少し話があるので別の部屋に来ていただけませんか?」
「ん?俺だけですか?」
「はい」
「わかりました」
どうやら女性陣は楽しそうに会話を弾ませているようであったため、男二人は静かに別室に去って行った。
そして二人が椅子に座り、メイドがお茶を出して部屋から出て行った直後に話は始まった。
「さて、ノアさん。この度は何から何まで本当にありがとうございました。村民一同あなたに心から感謝をしております」
「いえいえ、何度も言ってますけど、当然のことをしたまでですから。そこまで感謝されることではありませんよ」
「ホント、優しい人ですね」
「そんなことないですよ。俺よりもお宅の娘さんの方がだいぶ優しいと思いますよ?」
「はは、ありがとうございます。確かにセリーは優しい子ですね。あの子は将来いい嫁さんになりますよ」
「確かに、想像つきますわ」
二人は仲良さげに会話を繰り広げるが、そこでダンテの表情は変わった。
「で、実はその件で少し話があるんです」
「?その件…?」
ノアは何の話か分からず頭の上に?を浮かべるが、ダンテは強引に話を始めた。
「ノアさんはセリーのことどう思ってますか?」
「どう、ですか…まあ優しくて綺麗な人だとは思いますけど」
「なるほど…なら大丈夫か」
「大丈夫…?」
相変わらずダンテの言葉は理解できないが話は着々と進んでいく。
「セリーにパートナーができない話は知ってますか?」
「まあ…聞いてますけど」
「一応あの子も村長の娘ですので、跡継ぎが必要なんですよね」
「そうですねぇ…」
なんかこの後とんでもないことを言われる気がしたのでつい顔が引き攣ってしまうが、ダンテは強引に話を続けた。
「それなのにセリーはどの男にもときめかないんですよねぇ…このままじゃいつになっても結婚できそうにないんです」
「は、はぁ…」
「そこでノアさんに相談があるのですが」
「…」
あ、コレもしかして…
「もしよかったら、セリーのことを嫁に貰ってくれませんか?」
「…」
やはりと言った感じの言葉を受け、ノアはさらに疑問が深まった。
「えーっと、何で俺なんでしょう?」
「それは簡単ですよ。あなたみたいな強い男に娘を託したいってだけです。それに、セリーのノアさんを見る時の目は他の男を見る時と全然違うんですよね」
「…そうですか」
正直ダンテの言っていることは間違っていないため、ノアは真剣に頭を悩ませ始めた。
(確かに滅茶苦茶いい人なんだけど…三人目かぁ…)
流石に三人目ともなると不誠実な気がし、ノアは首を縦に振るのを躊躇った。
「少し、話し合わせてくれませんか?俺の一存で決めれることではないので」
「それもそうですね。ごめんなさい、少し早まりました」
「いえいえ、それだけ信頼してくれてるってことですよね」
「その通りです」
こうして男二人のナイショの話は終了し、二人は部屋を出てみんなが待つ場所に向かった。




