37 別に行くつもりなんて無かったんだからね!
シルクレーター領を去った翌日、三人は旅の途中にある場所に立ち寄っていた。
その場所というのは…
「海だぁ〜!!!」
そう、三人は近くにあった海に来ていたのだ!
きっかけは昨日両親と別れて泣いていたアメリアがノアにお願いした事だった。
アメリア曰く昔よく家族で遊んだプライベートなビーチがあるらしく、今回しっかり許可もとっている。
涙目で妻にお願いされてノアが断れるはずもなく、今回は仕方なく寄り道をしたのである。
別に二人の水着を見たいからとかいう不純な理由では決してないからな!!!
「じゃあ水着に着替えてくるねっ!楽しみに待っててねっ!」
アメリアはまるで子供のように喜んでいるようで、昨日の重い空気が嘘みたいであった。
それだけでもここに来た甲斐があったというものだが、ノアにはもう一つ目的があった。
それが一体何なのかは言うまでもなく、二人の水着を見るためという超絶不純な理由である!!!
(てか、いつ水着買ったんだ?)
二人の水着姿に期待を寄せている最中、ノアの脳にふとそのような疑問が浮かんできた。
何せ今回海に来たのは予定外な事だったため水着など用意できるはずがないのだ。
だが彼女らは水着に着替えてくると言った。
(まさか…計画通り…?)
今思い出してみれば、数日前に二人は街に買い物に出掛けていた。
そしてその買い物袋の中には夏を象徴するような柄が入った袋もあった。
つまり二人はその時からすでにここにくるつもりで…?
(まあ、悪くないな)
何がともあれ、嫁二人の水着姿をお目にかかる事ができるという事実だけでそのようなことはどうでも良くなり、ビーチ用テントなどを設営しつつ二人の着替えを待った。
いやなんでビーチ用のテントあんねんお前も来る気だったやろ。
どうやらノアはある欲望には忠実らしい。
そんなことはどうでもいいとして、ノアが色々準備しているうちに二人の着替えは終わり、まずはアメリアがこちらにやってきた。
「ふふふっ、どうかな?♡」
「っ!?」
アメリアの水着は彼女の髪と同じ色の黒を基調とした水着で、圧倒的なプロポーションも相まってかなりセクシーな見た目であった。
このまま彼女を直視していたら色々と大変なことになりそうなのであまり見たくはないが、多分見ないと怒られてしまうため仕方なくアメリアの身体を見つめた。
「よく似合ってるな。アメリアのいい部分がよく引き出されていてとても可愛いと思うよ」
「そ、そう…?♡ありがと♡」
アメリアも見られて恥ずかしそうではあるが、それ以上に嬉しさがあるような笑みを浮かべている。
そしてその直後、今度はフェリスが近くにやってきて水着の感想を求めてきた。
だがそこでノアのノアはフリーズしてまう。
(か、可愛すぎるぅ…)
フェリスの水着は白を基調としたヒラヒラな水着で、彼女の抜群なスタイルにフィットしたとても素晴らしいものであった。
ここでもノアは目を逸らそうとしたが、そうすれば今度はアメリアが視界に入ってしまうので諦めてフェリスの方を見つめた。
「ああ、フェリスの水着もよく似合ってるな。真っ白で長い手足が美しく曝け出されててとても綺麗だよ」
「そ、そう…?♡ありがと♡」
フェリスも頬を赤くしながら笑い、そしてノアは笑顔の二人を同時に見つめた。
(いや天国か)
二人の美少女妻が自分のために水着を着ているという事実がノアの心を昂らせていく。
だがここで欲情するわけにもいかないのでそこら辺のことを考えつつ二人のことを眺めていると、アメリアがある物を渡してきた。
「はいこれ」
「?何だこれ」
「もちろんノアの水着だよっ♡」
「???」
アメリアから渡された物を広げてみると、それは男性用の水着の形をしていて。
「いやなんでこれを?」
「だって…これがないとノアが泳げないでしょ?」
「そういう意味じゃなくて…まあいいか。とりあえず着替えてくるよ」
もう考えるだけ無駄というか、最初からそのつもりだったのだろうと勝手に結論付け、さっさと更衣室に向かった。
そして数分後着替えを終えて二人のもとに向かうと、彼女らはなぜか赤面して顔を両手で覆った。
「ど、どうしたんだ…?何か変か…?」
「そ、そういうわけではないのだけれど…♡」
「ちょっとセクシーすぎるというか…ね…?♡」
(何言ってんだこの人たち)
ノアは素でそんな感想を抱き、二人の謎の耐性のなさに驚きを示した。
二人とも…もっと恥ずかしいところ見たことあるよな…?
なのになぜ今更上裸ごときで恥ずかしがってんだ?
そんな理由など男には理解できるはずがなく、ただ二人がこちらに慣れてくれるのを待った。
そして待つこと一時間(?)、ようやく慣れた二人はこちらのことを直視できるようになり、いよいよ海に入る事ができるようになった。
…と思っていたのだが、二人はなぜかテントの中でうつ伏せになってビキニの背中の紐を解いた。
「えーっと…?」
「コレ、お願いねっ♡」
そう言いながらアメリアは謎のクリームを渡してきた。
「どうしろと…?」
「そんなのわかってるでしょ?♡」
ええわかってますとも。
日焼け止めでしょ!塗ればいいんでしょ!!
正直絶対にやりたくないが、二人とも塗り終えないと動く気配がないため仕方なくクリームを手に出した。
「じゃあ、塗っていくな」
「「よろしく」」
クリームを両手に馴染ませたあと、真っ白な二人の背中に同時に手を当てた。
すると二人の身体は大きく跳ね、そして変な声を上げながら身体を震えさせた。
「ちょ、なんでそんな声出してんだよ」
「だ、だってぇ…♡」
「そこ…っ♡くすぐったいのぉ…♡」
二人はまるでベッドの上でのような声を出し、ノアの男心をくすぐる。
(何だコレ!?新手の野外プレイか!?)
いや何もプレイしてないけどな!
そのような変な思考に至ってしまうほどノアの脳はおかしくなり、そのまま手の動きを早めていった。
「あ♡そこ、だめぇ…♡」
「激しい…っ♡」
うん、ここビーチであってるよな?
普通に寝室って言われても全然信じるぞ?
(落ち着け俺!!!平常心だ平常心!!!)
そうだ、心を無にして手を動かせばきっと何事もなく乗り切れるはずだ。
そう考えたノアは心を殺して手を動かし続けた。
「…」
「あ♡」
「ダメぇ…♡」
だがしかし耳にはとんでもない声が着地してくるし、手にはもちもちで柔らかい感触が伝わってくるし。
こんな状況で心を殺すなど、年頃の男にできるはずもなく。
(あぁぁあぁぁあ!!!無理だ!!!この状況で平常心なんて無理だぁぁぁ!!!)
そんな心の叫びが誰かに届くことはなく、ノアはひたすら手を動かし続けた。




