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25 ナイショの話


アメリアを乗せて馬車に揺られて三日、ようやく近くの街についてゆっくりできる時間がやってきた。


「疲れたなぁ」

「そうだね〜。今すぐ眠っちゃいたいよ」


アメリアは冗談めかしくそう言い、そして申し訳なさそうな顔を浮かべた。


「本当にいいの?私も二人と同じ部屋で…」

「ええ、俺は問題ありませんけど…」


一体何が不安なのだろうかと考えていると、アメリアは頬を赤く染めながら小さく答えを告げた。


「その…夫婦の夜をお邪魔しちゃって大丈夫なの…?宿で泊まるの久々なんでしょ…?せっかくなんだし夫婦水入らずでゆっくりした方が…」

「ちょっと落ち着いてください!?」


アメリアは暴走気味にブツブツと話し続ける。


「(別に二人がいいなら私は隣で見てるから大丈夫なんだけどでもそれだとちょっと焦ったいからできれば私も混ぜて欲しいなって思ったりするんだけどもしよかったらだけどね)」


早口すぎて聞き取れない!


だがしかしフェリスには少しだけ聞き取れたようで、彼女はアメリアにまた内緒話をし始めた。


何を話しているのかは全く聞き取れないが、二人の顔を見て恥ずかしい話をしていることだけはわかった。


(まあ多分俺には関係ないか)


どうせ二人はまた恋愛についてでも話しているのだろうと思い、ノアは荷物を片付けて風呂場に向かった。


「じゃあ俺先風呂入るな。早めに出るから待っててな」

「あ、うん。いってらっしゃい」

「別にゆっくりでいいわよ。アメリアさんと二人で話がしたいから」

「ん?そうか。ならお言葉に甘えてゆっくり浸かってくるわ」


風呂好きであるノアのことを気遣ってくれたのか、フェリスは優しい言葉をかけてくれた。


そしてノアはそれに甘えるようにゆっくりと温かい湯に浸かるのだった。



ノアが風呂に入ったのを確認し、フェリスはベッドに腰掛けてアメリアを隣に呼んだ。


そしてアメリアが隣に座った後、フェリスは顔を赤くしたまま話し始めた。


「あの、さっきの話ですけど…アレについては私の一存だけでは決めれそうに無いので、もしよかったら後でノアに訊いてみてください」

「えぇっ!?」


さっきの話というのはアメリアがブツブツと呟いていた話である。


それについてのフェリスの考えをアメリアに告げると、アメリアは困惑気味に顔を赤く染めた。


「い、いいの!?私も一緒にってなると三人でってことになっちゃうけど…」

「まあ…ノアが望むのなら、私からは何も言うことはありません」

「ノアくん、私のこと求めてくれるかな…」


アメリアは不安そうに胸に手を当てた。


そしてフェリスはその手を目で追い、その付近にある胸部に目を向けた。


「…多分大丈夫だと思います。あの人、結構好きなので」

「え、何が?」

「いえ、なんでもありません」


フェリスは少し羨ましそうな目を向けるが、アメリアに気づかれる前に目を逸らしておく。


「ねぇフェリスちゃん」


自身の身体の成長について考えていると、アメリアが風呂場の方を見ながら声をかけてきた。


「私、ずっと前からノアくんのことが好きなの」

「はい、知ってます」

「彼といると胸が高鳴って、心が温かくなって…安心するの」

「私も同じです」


フェリスはアメリアの話を笑顔で聞き続ける。


「この前も少し話したけど、もしよかったら本気でノア君とお付き合いしたいの」


アメリアはいつにも増して真剣そうな表情でフェリスに語りかける。


そしてそれに感化されたフェリスはアメリアに優しく言葉をかけた。


「ええ、構いませんよ。あなたなら、ノアのことを支えられると思いますから」

「本当にいいの?私なんかが…」


アメリアは不安そうな顔を浮かべるが、フェリスは自信を持ってアメリアに言葉をかける。


「アメリアさんはとても優しくて温かい人です。それに、一緒にいてとても楽しい。あなたには私には無い魅力がたくさんあります」


主に胸部に!なんてフェリスが言うはずもなく。


「だから私は正妻として、あなたを迎え入れる準備ができています。あとはノアの答えを待つだけです」

「フェリスちゃん…ありがとうっ」


アメリアは少し勢いよくフェリスを抱きしめた。


「私、絶対にノアくんとフェリスちゃんのこと幸せにするね」

「ノアだけでいいんですよ?」

「ううん、私は年上として二人を幸せにする義務があるの。だからフェリスちゃんも私にいっぱい甘えてねっ」

またしてもアメリアは年上ぶっている。


そんな姿がまた子供らしいということも知らずに。


まあフェリスはアメリアのそんなところを気に入っているのだが。


「そうですね。じゃあたくさん甘えますねっ」

「うん!ドンときて!」


アメリアは得意げに自身の胸を叩いた。


その姿を子供を見つめる目で眺めると、どうやら気づかれてしまったようで。


「あ、今子供っぽいとか思ったでしょ」

「い、いえ…思ってないですよ?」

「うう…私そんなに子供っぽいかな?」

「そんなことは…ないですよ?」

「やっぱりそう見えるんだぁ…」


アメリアは悲しそうにシクシクと泣いている素振りを見せる。


流石にこのままではこちらが悪者になってしまうのでフェリスは苦し紛れの褒め言葉を放った。


「アメリアさんはその、身体がとても大人びていますよね…」

「え?そ、そうかな…?」

「はい。特にその胸とか、大人でもそれ程のものを持っている方はそうそういないですよ」

「えへへ…なんか照れるねっ」


アメリアが自覚していない魅力をフェリスが褒めると、アメリアは得意げに鼻を高くした。


「まあ私はお姉さんだからねっ。フェリスちゃんもノアくんも、いつでも私の胸に飛び込んできていいんだよ?」

「そ、そうですか…」


フェリスは気まずそうに苦笑いを浮かべた。


「その言葉、多分ノアには言わない方がいいですよ」

「どうして?」


アメリアは全くもって自覚がない。


どれだけの凶器を自分が持っているのかをまるでわかっていない。


流石にことまま無自覚でノアの近くでベッドに入ってしまうとノアを暴走させかねない。


流石にそれはお互いに良くないと思い、フェリスはアメリアに注意喚起をする。


「ノアはその、結構欲が強いんですよ。そんな言葉を使えば毎晩のように襲ってくるかもしれません。なのでアメリアさんに無自覚でいられるとノアの体力がなくなってしまいます」

「う、うん?」

「なのでアメリアさん。あなたは自分が思っている何倍も魅力的な身体をしていることを自覚してください。そしてそれに見合った言動をしてください。いいですね?」

「は、はい…?」


まだ自覚できていなさそうであるが、アメリアは反射的に返事をした。


そしてフェリスは少し呆れたようにため息をつき、もう一度アメリアの身体に目を向けた。


(改めて近くで見ると…やっぱりすごいわね…)


平均的な身長ながらも出るとこは爆発的に出ており、まさに男の理想といった感じの体型である。


別にフェリスも出るところはしっかり出ていてかなりのスタイルなのであるが、この胸部を前にすると流石に恐れをなしてしまうようで。


(ノアは…きっとこれぐらい大きいのが好きよね…。私も頑張らないと…!)


そうでもしなければノアがアメリアに夢中になってしまう。


それだけは阻止しなければと思い、フェリスはただ一人静かに成長大作戦を始めるのだった。


とりあえず、勝手に人の性癖について話すのやめようか。


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