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22 二人きりだと起こること


「落ち着いたか?」

「うん…」


親たちと別れた後、フェリスは小さく涙を流し始めた。


元々親が大好きな子だったので仕方あるまい。


そんな彼女を親と引き離すことになってしまって申し訳ないと思うが、それでもフェリスは着いてきてくれた。


だから謝罪するのは違うと思い、ノアは何を言うでもなくフェリスの肩を抱きいて常にくっついていた。


「にしてもこの馬車、結構揺れるな」

「そうね。でもこれから半月はこの馬車なのだから我慢しないと」

「俺たちは恵まれてたんだな」


これが貴族と一般人の生活レベルの違いというやつだろうか。


貴族の馬車は高級で揺れも少なく、森や山道でも何も問題なく進むことができた。


だがこの一般人向けの馬車は安価で揺れが大きい。


正直寝れるかどうか怪しいところであるが、こればかりは仕方がないので何とか受け入れる。


そして数分間ボーッと外の景色を眺めていると、突然御者から声をかけられた。


「お二人とも、そろそろローブを被られては?」


四十代ぐらいの御者の人がそうアドバイスをしてくる。


「そうですね。フェリス、はい」

「ありがとう」


大きなカバンの中にあるローブを取り出し、フェリスに被らせる。


「あれ、あなたは被らないの?」

「ん…まあ、大丈夫だろ…」


正直にいうと、あまり被りたくはない。


ローブを頭まで被っていると普通に視界が狭くなって窮屈だし、何よりこれがあるとフェリスの顔が見にくいのだ!


こういった理由からローブを被らずにいたのだが、そのうち御者から顔を見られることの危険性について説明を受け始めた。


大方予想通りの説明をされるが、最後だけは完全に予想外だった。


「ちなみに、男でも顔が良かったら高く売れたりしますからね。整った顔の男が馬車にいるとわかれば襲ってくる可能性も低くありません」


ふーん、整った顔か。


「俺には関係なさそうだな」


そうやって油断をしていると、急にフェリスがこちらに顔を覗かせてきた。


「そんなことをないわよ。ノアの顔は綺麗に整っているのだから、ちゃんとローブを被らないと」

「そ、そうか…?」

「そうよ。あなた少し自覚なさすぎよ?」


実際のところ、ノアの顔は誰がどう見たって整っている。


街を通れば女性からの視線が集まり、日によっては逆ナンされたり。


でもそれは貴族に対して向けられた感情だと思っていた。


だがフェリス曰く、それはノアの顔がかっこいいからなようで。


「そ、そうだったのか…全然気づかなかった…」

「もう少し自分に自信を持って?その、私の夫なのだから…」

「っ…!!」


その言葉は反則だ!!


それを言われて心を打たれない男などいるはずもなく、ノアは頬を赤らめながら頷いた。


「そうだな。フェリスが選んでくれた人間なんだから、もっと自信持って堂々としてないとな」

「それもそうだけど、今はローブを被って顔を隠してないと」

「そうするよ」


ノアは渋々ローブを被り、そこでようやく旅が始まった気がした。



夜になる頃に一つ目の街に到着し、ノアはフェリスを連れて宿に向かった。


資金はそこそこあるがあまり贅沢をしては今後が心配であるため、ノアは一部屋だけ借りてフェリスと共に寝ることにした。


「ん…これは…」

「少し…狭いわね」


部屋の鍵を開けて中を見てみると、安いから当然といった感じの狭さであって少し虚をつかれた。


だがこれからの旅ではこのレベルの部屋に泊まることが多くなるだろうから何とか我慢して泊まることにした。


ちょっとした荷物だけその辺に置き、ノアはフェリスに先に風呂に入るよう提案するが彼女はあまり納得がいっていない様子で口を開いた。


「せっかく一緒の部屋だし…お風呂も一緒に入らない…?」


フェリスは甘い声で誘惑してくるが、ノアは強い意志を持って首を横に振る。


「いや、やめておこう。一緒に風呂なんか入ったら変なこと考えてしまいそうだから」


これから長旅をするにあたって無駄な体力を消費するのはリスクがあるため、旅の途中で営みはやめておこうと心の中で決めていた。


だがそんなノアの苦労も知らず、フェリスは真っ赤に頬を染めて上目遣いで言葉をかけてくる。


「いいのよ…?私たちは夫婦、だから…♡」


(クソっ…!反則だろ…!!)


結局ノアは首を縦に振ってしまうが、しっかり腰にタオルを巻いて対策をして風呂に入った。


当然フェリスにもタオルを巻かせたのだが、なぜか拗ねられてしまった。


一体なぜだろうか。


それを理解できるのは多分5分前だろう。


まあそこは一旦どうでもよくて、今はこの目の前の美少女に目が吸いつけられてしまっていることが問題であった。


「ねえ…どうして目を逸らすの?」


フェリスに目を向けているととんでもないことを考えてしまいそうだったので反射的に目を逸らしたのだが、フェリスからは不満そうな目を向けられてしまう。


「いや、特に深い理由はない」

「そうなの?ならもっと私の方を見て?♡」


フェリスはニコニコとこちらを挑発してくる。


流石にそんな幼稚な挑発にノアが乗るわけ__


「ならそうさせていますね???」


前言撤回。滅茶苦茶挑発に乗っていた。


ノアはフェリスの言葉を口実に彼女をじーっと眺めつつ風呂に浸かった。


だが残念。ノアが見つめているのはフェリスの顔であった。


「な、なんでそんなに顔を見てるの…?」

「見ろって言われたから」

「それならもっと下の方とか…見た方がいいんじゃないの…?」

「いや、それは遠慮しておく」


ノアは強い心を持ってフェリス顔を見続けて自制心を保とうとする。


だがしかし、いつのまにか目の下に映る二つの立派なモノに感情が持っていかれてしまっていた。


「……」

「ノア…?ちょっと目が怖いよ?」

「ん?あ、ああ…ごめん。ちょっと夢中になりすぎてたわ」

「そうなの…?嬉しい…」


フェリスは胸に手を当てて喜びを顔に表した。


ですがごめんなさい。


実は顔なんて見えてませんでした。


目には顔が大きく映っていたけど心は端の方に見える大きな山に吸い寄せられてしまってました。


(なんて言えるわけねぇ…!)


そんなことを言ってしまえばフェリスが完全にその気になってしまう。


そしてノアは誘惑に乗って襲いかかってしまう。


それだけは避けたいので結局フェリスから目を逸らすと彼女はノアの足の間に入ってきた。


「!?なんでそこにっ__」

「いいでしょう?ここ、ちょっと狭いから♡」


フェリスは頬を紅潮させつつも上機嫌そうに言い訳を並べた。


だが当然そんな言い訳は通用しない。


「狭いのはわかるけどこれはちょっと近すぎないか?主に場所がよくないんだが」


フェリスはノアの股に入り込んで来ているため、ノアは自分を抑えることに全神経を注ぐ状態となっている。


だがそれでも抑えられないものは抑えられないわけなのではやく離れてくれないと気づかれてしまう。


その為少し強めにフェリスに退くように言うが、フェリスはノアの話しを全く聞いておらず、上目遣いで小さく呟いた。


「だめ…?♡」


(っ!!)


もはやこの人自分が好かれているのをわかってこういうことをしていないか?


でも可愛いからいっか!⭐︎


「…いいよ」

「やったっ」


つい首を縦に振ってしまい、そしてフェリスは全身をノアに預けた。


「ノアの身体、温かい…」

「そ、そうか?」

「それに、ドキドキしてる…?」


どうやらフェリスは背中からノアの胸の鼓動を聞いたらしく、嬉しそうに笑いながら手を握ってきた。


「私もドキドキしてるよ…?触ってみる…?」

「いや、遠慮しとくよ」

「ほ、本当にいいの…?私の胸、触らなくて…」

「っ…」


はい触りたいですが???


この人もう途中から直接的に言ってきやがったよ。


まあそういうのも嫌いじゃないんだけど。


というわけで、ノアはフェリスの言葉に唆されて結局胸に手を伸ばしたのだった。


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