16 子供の前ですよ
翌朝になるとノアは早速報告の為に両親をリビングに集め、そしていつもよりかしこまった雰囲気で話し始めた。
「えーと、この度フェリスと結婚することになりました」
「「え?」」
どうやら現実を受け入れることができていない両親は目をパッチリ開いてその場に固まった。
そして数秒後、ようやく理解が追いついたレノスが少し落ち着きのないまま口を開いた。
「お、おめでとう…」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「まさかノアが結婚する日がくるなんてな…」
「え、ほ、本当に結婚するのよね…?」
まだ少し理解が落ち着いていないアリアは今もなお目を見開いたまま質問をしてくる。
「ああ、本当に結婚するよ」
「そ、そうなのね…」
ノアの言葉を聞いてようやく現実味を帯びてきてアリアはようやく二人に笑顔を見せた。
「おめでとう二人とも」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「昔から仲が良かった二人が結婚だなんて…私泣いちゃうわ〜」
アリアは涙を流しながら二人を祝福する。
「旅立つ前に結婚する姿が見れて本当に良かったわ〜」
「そうだな。ま、フェリスちゃんのウエディングドレスは見れなさそうだけど」
レノスは娘同然に育ててきたフェリスのウエディングドレス姿が見れないことに対して若干悲しみを抱くが、それでもレノスは笑っている。
「本当におめでとう、二人とも。アルカルナ公爵家の当主として、二人の結婚を祝福するよ」
「それってつまり…」
「ああ。俺は二人の結婚を認めるよ」
「!!ありがとう」
「ありがとうございます!」
「ふふっ、よかったわね〜」
リビング内は和気藹々とした空気に包まれ、アリアなんかはもう子供かというぐらいにはしゃいでいる。
「今晩は赤飯にしましょ〜!あ、二人がイチャイチャしているところ見てみたいわ〜!お願いできるかしら?」
「母さん、ちょっと落ち着__」
「わかりました」
「え!?やるの!?」
「仕方ないわ…。お義母さんのお願いだもの…」
「キャー!♡お義母さんだって〜!♡」
アリアがキャッキャと騒いだいる間にフェリスは顔を近づけてきて。
「ほら、イチャイチャ…しましょう…?」
「グッッッ__!?」
フェリスに可愛い顔で見つめられ、ノアは心を銃弾で撃たれたかのような感覚に襲われる。
(クソ…!こんなに可愛いいと断れねぇ…!)
ノアは諦めてイチャイチャすることを決意し、フェリスに顔を近づけてそのまま唇を合わせた。
「おお…」
「キャー!可愛いっ!♡可愛すぎるわ〜!♡」
「母さん落ち着いてくれ。もうイチャイチャタイム終わりだから」
そう言ってアリアを落ち着けようとすると、彼女は頬を膨らませて拗ねてしまった。
「え〜もう終わり〜?もっと見たかったわっ」
「もう許してやりな。二人は結婚したてなんだから、まだ恥ずかしい時期だろう?」
レノスはアリアを説得し、それによってアリアは冷静さを取り戻した。
「それもそうね…。私たちも昔はあんな感じだったかしら」
「そうだったかもなぁ…でも、初夜を迎えてからは一皮剥けたよな」
「そうだったわね〜♡」
「「……」」
一皮剥けてなくてすいませんね!!!
全然今でも初々しくて悪かったですね!!!
というかそもそも息子夫婦の前でそういう話をしないでくれよ!!!
そんなノアの心の声は届かず、二人は人前でも全然イチャイチャしていた。
それに対してどう反応していいかわからなくなるが、それはフェリスも同じようだった。
「相変わらず仲がいいのね」
「だな。全く、いくつだと思ってるんだ」
「いいじゃない。いつまでも仲良しの夫婦ってとても憧れるわ」
「…そうか」
それってつまり、フェリスはいくつになってもずっと仲良しでいたいと思ってるってことだよな?
(あー幸せすぎる)
こんなに幸せになっていいのだろうか?などと思うが、今までが滅茶苦茶悪かったのだからそうであってくれないと割に合わないだろう。
なのでノアは今の幸せを存分に噛み締め、愛しの妻の肩を抱いた。
「俺たちも、一生仲良しでいような」
「うんっ!」
フェリスは満面の笑みで元気よく返事をした。




