表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴族剣士は、辺境でスローライフを送りたい!~王都を離れてのんびりしたかったのに、なぜか追放先が最強国家になってしまいました~  作者: 七生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/180

第3章 内政編 第10話 到着


 それから一週間後。

 ウーゾの店の前には、アウル領へ向かう者たちが集合していた。


「皆さん、おそろいっすね」


 一人ひとりに言葉を交わし、満足そうにうなずくモルト。


 クラーチ家の就職希望者は、元の使用人やメイドは十五人。それに加えて新たにメイド希望が三名。エルフと獣人の女の子が、それぞれ一人ずつ。それに加え、何と人間の女性が一名、応募してくれている。

 使用人希望の男性はいなかったが、今回メイドを希望してくれた彼女たちは皆、屋敷の手入れや修繕を含め、使用人がするような仕事もしてくれるということだ。


 入植希望者は四家族。合わせて二十名。中にはいつかの痩せた犬人族の男もいる。


「モルトさん、その節はどうも……」

「気にすることないっすよ。入植者の募集に応じてくれて助かったっす」


 申し訳なさそうに頭を下げる男に笑顔で応えるモルト。


「お~い!」


 満足そうにもふもふ尻尾をゆっくり揺らしているモルトの元に、ウーゾとバドがやって来た。


「あまり集まらなくて、すまんな」


 ウーゾ申し訳なさそうに大きな体を小さくして謝る。


「十分っすよ」


「実はな、モルト……」


 バドによると、アウル領ブラックベリーで、風土病が出たという噂が出回っているという。その影響もあってか、使用人やメイドの応募者の内、何人にも断られたそうだ。


「俺もウーゾも、もう少し集まると踏んでたんだけどな」


「仕方ないっすよ。ただ、あの病はもう出さないってレオン様が言われてるんで、心配することもないんすけどね……」


 今回は、大型の馬車が三台。御者はカールトンとその息子たちである。全員が乗り込んだのを確認してモルトが、声を上げた。


「それじゃあ、出発するっすよ」


「おう、元気でな」

「モルト、またな~!」


 腕組みをして笑顔を浮かべるウーゾの隣で、モフモフ尻尾を揺らしながらバドも大きく手を振っている。


「バド~! ウーゾ~! 行ってくるっす~!」


 三台の大型馬車に乗り込んだ一団は、一路ブラックベリーに向けて旅立っていったのだった。





 ブラックベリーでは、建物の内装の補修工事と、農地の整備が着々と進んでいた。その進捗具合に、俺も大満足である。これ以上の開墾は、入植者に任せてもよさそうだ。


 この日、視察を終えた俺は、屋敷に帰ってくるなりドランブイに呼び止められた。


「レオン様、ウチの商会の船が着いたようですぞ」


 ドランブイと共に見に行くと、港には巨大なガレオン船が五隻。それぞれに品物が山のように積まれている。山エルフの船員たちも積み荷の運搬作業を手伝ってくれていた。


「傷モノや、古い在庫ばかりです。本来なら処分品なのですが、その中でも使えたり食べたりできるものは、全て持ってくるよう指示を出しておきました」


 積み荷は、日用品・家具・衣類・生活雑貨・穀物などの食料といったように多岐にわたっていた。


「こんなにもか……。本当にいいのか?」


「はい。構いませんよ」


 ドランブイの商会は『シードル商会』という大陸南部では指折りの大店。特にキールの所の御用商人となってからは、業績もうなぎ上りだという。


 街で内装作業中の山エルフを除いて、総出で運搬作業を行った。屋敷に収まり切れない分、は領主屋敷の近くの民家を倉庫代わりにと思っていたのだが、一軒だけではとても入りきれず、三軒分使うことになってしまった。


「ドランブイ、ありがとうな」

「いえいえ。お役に立てて何よりです」


 キールからは、書簡が届けられた。内容は、ラプトル肉のお礼とモルトたち一行が無事キールの館に到着したという知らせ。翌日ブラックベリーに向かうそうだ。それと、俺が贈ったラプトル肉を使って、バーベキュー大会をしたらしい。いいなあ。手紙の末尾には、美味しくて大好評だったので、また欲しいという言葉が添えられていた。


 ここから西へ船で半日もあれば、ドラゴンの一大生息地である『大森林』に着く。ここの入り口に罠を設置するのはどうだろうか。


「試される価値はあるかと」


 ドランブイの言葉を聞いて安心した。俺は、早速山エルフたちに相談し、館のラプトルを輸送につかった檻を、何個か送ってもらえるように頼むことにしたのだった。





 そして翌日、ついに、モルトたち一行がブラックベリーに到着。


「レオン様~。お久しぶりっす!」

「久しぶりだな、モルト。元気そうで何よりだ」


 せわしなく尻尾をぶんぶん振るモルトを先頭に、皆続々と下船して俺の前に整列する。

 カールトンをはじめ、元の屋敷の使用人にメイド。それから、新しく募集に応じてくれたメイド希望の女の子たち。そして入植者の皆さん。


「坊ちゃま。呼び戻していただき、ありがとうございました。是非もう一度お仕えしとうございます」


 カールトンは、皆を途中まで運んでくれただけで良かったのだが、モルトによると、ここに残ると言い出して聞かず、結局ここまで付いて来たのだという。


「本当にいいのか。しばらくは無給だぞ」

「はい。他の皆さんも同じですし」


 カールトンによれば、息子たちはそれぞれ、王都で仕事を見つけてくれたので心配ないという。書庫の管理も、自分に代わって息子たちがしてくれているそうだ。


「い、いや、カールトンいくら何でも……」


「お兄様!」

「レオン様~!」


 俺がカールトンにかけようとした言葉は、例の二人によってかき消されてしまった。いくら何でもお前たち。厚かましすぎるんじゃないか?


「何を仰っているのです。こんなことを言ってくれるカールトンこそ、重用すべきです」

「そおっすよ。こんな奇特な申し出は、有り難く受け取るに限るっす!」


 確かにカールトンは、大変ありがたい存在なのだが。

 お前たち、少しは遠慮というものをだな……。



 とにもかくにも、記念すべき最初の領民を迎えて、ようやく我が領は動き出したのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] みんな、感動の再会ですね(*´꒳`*) ブンブン尻尾を振るモルトくん、尊いです♡
2022/06/01 12:14 退会済み
管理
[良い点] どんどんにぎやかになっていい感じですね。
[一言] モルト君しっかりお仕事してて偉い! 何気に有能な子ですよね。 主人公の傍にいるマスコットキャラに収まらず、きちんと自分の仕事をするタイプのキャラなんだなぁって彼の見かたが変わります。 や…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ