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それぞれの覚悟  作者: 仙夏


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ある日、凛が倒れたと聞き、仕事場に駆けつけると凛は高熱を出してぐったりしていた。

林 「凛...凛!」

浅沼 「っ、林さん、早く医務室に!」

林 「あ、ああ。」

凛を抱き上げて医務室に連れていくと当時雇っていた医者が凛を診てくれた。

医者 「...」

林 「ど、どうだ?」

医者 「...疲れが溜まっていたんですね。風邪を拗らせたみたいです。」

林 「っ、そうか...」

医者 「...この子は持病がありますから慎重に診ます。」

林 「...ああ、頼んだ。」

医務室を出ると浅沼が待っていて私を見た。

浅沼 「どうでした?」

林 「...風邪だそうだ。」

浅沼 「そうですか...あんなに高熱になるまで...無理させちゃいましたね...」

林 「...」

凛が回復し、数日が経って仕事に復帰したとき、私は凛を呼び出した。

凛 「林さん。」

林 「来たか。そこに座れ。」

私は、縁側に凛を座らせ、隣に座った。

林 「...何で呼ばれたか分かるか?」

凛 「...体調を崩して迷惑を掛けたからです。」

林 「...まぁ、そうだな。この場所での中核は凛だ。凛が居るから仕事が成り立っている。いつかは、そういう立場にならなくちゃいけない。自分が崩れてはいけないと自覚は持つべきだ。」

凛 「...はい。」

林 「...だが、迷惑ではない。」

凛 「えっ...?」

林 「...自分が体調を崩していること、少しは自覚していたんだろ?」

凛 「...はい...」

林 「そうであれば、すぐに誰かに相談しなさい。倒れるまで我慢して、早坂たちも心配していたぞ。」

凛 「...すみません。」

林 「迷惑になると考えるな。自分の体のことを理解して最善の選択をすれば良い。分かったか。」

凛 「...はい。」

林 「じゃあ、この話は終わりだ。」

凛 「...はい。」

凛が立ち上がると私は凛の髪を見た。

凛 「...どうしましたか?」

林 「いや...髪、伸びたな。」

凛 「ええ。だいぶ、伸びました。」

林 「...少し待っていろ。」

私は部屋に戻って、橘のご祖母から送ってもらっていた櫛を出した。

林 「これを。」

凛 「櫛ですか?」

林 「ああ。前にあげたものは随分古くなっただろう。」

凛 「あれも気に入っているんですが...でも、きれいな桜模様ですね。」

林 「ああ、これは高価な品だぞ。」

凛 「よろしいんですか?そんな高価なものをいただいて。」

林 「...ああ、大切にしなさい。」

凛 「...では...」

凛はそう言って私の隣に座った。

凛 「...昔のように髪を梳かしてくれますか?」

林 「...」

私は一つに束ねられていた凛の髪を解いて櫛で梳かした。

林 「...綺麗に伸びたな。」

凛 「はい。前にお二人にいただいた櫛で毎日梳かしてますから。」

凛は足をばたつかせながら嬉しそうに話した。

林 「...」

凛 「そういえば、あの日ですね。蘭が来たのは。」

林 「...そうだな。櫛を買いに町に出かけて蘭を見掛けた。」

凛 「じゃあ、私が女の子だったおかげですね。蘭がここに来たのは。」

林 「えっ?」

凛 「私が男の子だったら櫛は買わないでしょう?」

林 「ふっ。蘭がここに来るのは必然だったか。」

凛 「私が引き寄せたのかもしれません。」

林 「...そうだな。大切にしてやってくれ。」

凛 「もちろんです。」

林 「...凛。」

凛 「何ですか?」

林 「...坂井たちが入って、凛も先輩と呼ばれるようになっただろ?少し、責任が重い立場になった。」

凛 「はい。」

林 「...これから、私も凛たちを育てる役割から、凛たちを指導、管轄する役割に代わる。近いうちに、こうやって簡単に凛たちと関わることは難しくなる。」

凛 「...そ、そうなんですか...」

林 「...凛が生きていくためには私たちの関係に一線を引かなければいけない。凛たちの指導係となれば凛と仲良くしていると疑われる可能性がある。だから...これからは、早坂たちを頼りなさい。それで、どうしても一人で抱えきれない問題ができれば私や浅沼を頼りなさい。そのときは、罰を受け入れてでも凛を守る。」

凛 「...分かりました。」

林 「...」

私が凛の髪を綺麗に一つに結うと凛は自分の髪を触った。

凛 「...髪、切ってくれますか?」

林 「えっ...?」

顔は見えなかったが、凛は泣きながらそう言った。

凛 「...」

林 「...凛。少しずつで良い。すぐに自分を変えようとしなくて良いんだ。」

凛 「...」

林 「...一旦、解くぞ。」

私は凛の髪を解いて三つ編みに結い直した。

凛 「っ...」

林 「...少しずつで良いから。」

凛 「...はい。」


そして、数ヶ月後、私も上官となりなかなか様子を見れないうちに橘たちはその仕事の意味を理解してきていた。

浅沼も剣術の能力が秀でていたため、上役を命じられ数日に一度しか顔を出せなくなっていた。

それでも、夜は凛たちの寝顔を確認して私の部屋に報告に来ていた。

浅沼 「凛たち、仕事の意味に気づいてるかもしれません。」

林 「...ああ。」

浅沼 「...そういや、上官になったのに林さんで良いんですか?凛たちもずっとそう呼んでますけど。」

林 「...いや、そろそろ呼び方も変えないといけないかもしれん。上が示しがつかないと言っていた。」

浅沼 「まぁ、そうですよね。寂しくなるなぁ。」

林 「...私はできなくなるが、浅沼は凛たちと変わらず接してやってくれ。」

浅沼 「...はい。分かりました。」

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