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皆がそれぞれ出掛けていき、僕は立ったままお墓を見つめていた坂井先輩の手を握った。
壮馬 「っ...」
湊 「帰りましょう。」
壮馬 「あ、あぁ。」
僕は坂井先輩の手を引きながら歩き出した。
湊 「何を考えてましたか?」
壮馬 「...僕は何をして生きていけば良いのかなって。」
湊 「そうですね。」
壮馬 「...皆、やりたいことを見つけているけど僕だけ何も見つからなくて...」
湊 「...いつか見つかりますよ。いつかきっと見つかります。だから一緒に生きていきましょう。」
壮馬 「...ふふ。湊も大きくなったな。」
湊 「橘先輩たちの年も超えましたからね。あの人たちを超えられるように僕も頑張ります。」
壮馬 「...そうだね。いつか見つかる日まで生きてみるか。」
湊 「はい。」
〜計画実行二日前〜教官 林side〜
夜、橘たちの仕事の報告書の確認をしていると浅沼が部屋に来た。
浅沼 「失礼します。」
林 「浅沼。どうかしたのか?」
浅沼 「橘の様子、どうですか?」
林 「あぁ...あの日から笑わなくなって、極力誰とも話さないようにしているようだな。」
浅沼 「はい。良いんですか?ほっといて。」
林 「...私から言うことではないだろう。こういうときのために早坂たちや坂井たちが居るんだ。」
浅沼 「まぁ、そうかもしれないですけど。子ども自身でどうにかしきれないものは親がどうにかしてあげるものですよ。」
林 「...もう子どもじゃないだろ。」
浅沼 「いつになっても親にとっては子どもは子どもです。」
林 「...お前は昔から教育論に熱いよな。」
浅沼 「俺も一応、親代わりのつもりでしたから。」
林 「...そうか。」
報告書を片付けながら話していると橘が部屋に来た。
凛 「あっ、お取り込み中でしたか。」
橘が行こうとすると浅沼が橘を止めた。
浅沼 「俺が外に出てるよ。どうぞどうぞ。」
そう言って、浅沼は橘の背中を押して私の部屋に入れ、自分は廊下に出て戸を閉めた。
凛 「...」
林 「橘。消灯の報告か?」
凛 「あっ、はい。全室、消灯を確認しました。」
林 「そうか。分かった。」
凛 「...それと、一つご報告しておきます。」
林 「...何だ?」
凛 「...ここを出る計画を明後日の夜明け前に実行します。」
林 「っ...私に報告してどうするんだ。」
凛 「...第一級人員の中でも教官や浅沼さんを信じて良いのか不安になっている者もいます。私もその長としては皆の意見を尊重します。けれど、私にとって教官と浅沼さんは茜坂に来て初めに信じた人でした。お世話になったお二人に何も言わず裏切るような行為はできません。」
林 「...」
凛 「...それに、仕事場でも部室でも自室でも簡単に計画を進めることができました。それは、仕事場の統括権を私に委ねるようにと教官が上に話を通し、それを守り抜いてくださったからです。私がこうすることも見越して居たのでしょう?」
林 「...行き先はあるのか?」
凛 「...浅沼さんに教えていただいていた外の世界の地図から数ヶ所、身を置ける場所は見つけています。それに、ここよりかはどこも良いと思います。」
林 「...」
私は机の引き出しの奥に大切にしまっていた封筒の束を取り出して橘に渡した。
林 「...これを。」
凛 「...これは?」
私が椅子に座ると橘は封筒の宛先を見た。
凛 「...橘?」
林 「橘のご祖母様だ。今でも定期的に連絡を取っている。何かあれば何人でも受け入れると仰っている。あの場所であれば茜坂の連中からも見つかりにくい。」
凛 「...どうして、あなたが祖母と?」
林 「...お前の両親に送る予定だった大金も全て送っている。お前たちを受け入れる準備はできているそうだ。」
凛 「...」
林 「...計画を聞かせてくれるか?」
橘はしばらく、封筒の中の手紙のやり取りの内容を見てから、私の顔を見て、そして計画について話してくれた。
林 「...それは、お前たちが死ぬ前提の計画ではないか。橘にしては雑過ぎる。」
凛 「...これで良いんです。これが私たちなりの償いなんです。」
林 「っ...」
凛 「...できれば誰かを傷つけるのではなく誰かを守るために生きたかった。最期くらい誰かを守りたいんです。そうでもしないと私は自分を許せない...」
林 「...この前のことで自分を責めているのか?」
凛 「...この前のことだけではありません。幼い頃からずっと自分を責めてきた。それで自分を許すつもりはないし許されるとも思ってません。でも、皆でそうしたいと決めました。」
林 「...姑息な手は使わず、真っ向勝負で茜坂を止めると言うことか。」
凛 「...はい。」
林 「...瀬良が居ない時を狙うのもお前たちなりの覚悟か?」
凛 「はい。無駄にまっすぐなあの人なら私たちのことも助けようとするでしょうから。」
林 「...そうか。」
凛 「...」
林 「...凛。」
凛 「っ...はい。」
林 「...時を見て話したいと思っていたことがある。お前の両親のことだ。」
凛 「...結構です。何度も聞かされましたから。」
林 「...凛が知っているのは上が作ったただの作り話、真っ赤な嘘だ。」
凛 「...え...?」




