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湊 「そうなんですね...」
壮馬 「...元気にしてるのかな...」
湊 「...気になりますね。」
壮馬 「うん。でも、家も村も覚えていないし確かめようもないんだけどね。」
湊 「...帰りたいですか?」
壮馬 「それは...どうだろ。ここで過ごした時間の方が長いし家に戻っても自分が生きている意味が分からなくなるかも。」
湊 「...そうですか...」
壮馬 「...それに先輩方を置いて家に戻るとか考えたことなかった。」
湊 「...先輩方、帰るところないんですか?橘先輩のことは聞いたことがありますが...」
壮馬 「...茜坂は身寄りがない人の方が多いよ。そういうのを見て子どもを選んでるって噂もあるくらい。どの家庭も少しくらい問題や悩みを抱えていると思うけど、順風満帆で何にも苦労せず家族と仲良く暮らしていた人は聞いたことないな。」
湊 「そうなんですね...」
壮馬 「...」
凛 「っ...ん...っはぁ...っ...」
壮馬 「橘先輩?」
橘先輩を見るとうなされていて顔を歪めていた。
壮馬 「っ、橘先輩。橘先輩。」
坂井先輩が橘先輩の体を揺らすと橘先輩は目を覚まし、目を開いた瞬間に涙が流れた。
壮馬 「大丈夫ですか?」
橘先輩は起き上がって胸を押さえながら呼吸を整えようとしていた。
でも、なかなか落ち着かず、橘先輩は過呼吸を起こしそうになった。
壮馬 「...大丈夫。夢ですよ。大丈夫です。」
坂井先輩が橘先輩の背中を摩ると少しずつ橘先輩は落ち着いて来た。
凛 「はぁはぁ...すまん...」
壮馬 「...いえ。私も何度も経験しています。」
凛 「...坂井は責任を感じることない。責任は全部私たちが、っ...」
橘先輩は急に口を押さえて空いていた食器の中に吐き出した。
壮馬 「無理しないでください。あなた方だけで責任を負う必要はありません。」
凛 「...すまん...頼りなくて...」
壮馬 「...何言ってるんですか。今誰かを頼るべきは橘先輩です。」
凛 「...」
坂井先輩が橘先輩の背中を摩っていると橘先輩は坂井先輩の方に体を預けて眠りにつき、坂井先輩が寝かせると部屋に早坂先輩たちが入って来た。
柚月 「っ、凛。」
水瀬先輩たちは食器を片付け、橘先輩の傍に座った。
莉央 「何があった?」
壮馬 「...また夢を見たようです。」
藍 「...こんなときくらい休めれば良いんだが...」
壮馬 「...抱えきれないくらいの責任を抱えようとしています。このままでは、いつか潰れてしまいます。」
柚月 「...そうだね。早く手を打ちたい。」
蘭 「...」
莉央 「...俺はいつでも良い。」
柚月 「...僕も。もう、失うものは何もないよ。」
藍 「...簡単に言うなよ。全員にその覚悟をさせるのがどれだけ大変か。」
蘭 「...そんな時間を待っていたら時間制限が来るよ。」
柚月 「っ...縁起でもないこと言わないで。」
蘭 「...でも、そうだろ?ここまで進行していて、瀬良さんも今度薬を探しに行くんだぞ。これまで、茜坂の事情を知った医者が出て行くことは許されなかったのに瀬良さんは一月の準備期間だけで出ることを許された。それだけ時間がないってことなんだよ...」
柚月 「...」
蘭 「...凛のためにも、作戦を実行するなら早い方が良い。そうじゃなきゃ、きっと、凛は後悔する。」
藍 「...蘭、お前ってそんなに情に厚いやつだったっけ?」
莉央 「...」
蘭 「...凛のおかげで俺らは生き延びて来られたんだよ。凛のために生きるのが俺らの役目だろ。」
藍 「...どうした?何かあったのか?」
蘭 「...俺は凛が居なければ、この茜坂がなければきっと生きてないんだよ。凛のおかげで生きていられてるんだよ。」
藍 「...何だよ、それ。お前の意思は関係ないじゃないか。蘭自身はどうしたいんだ。」
蘭 「...そんなの俺に選ぶ権利はない。決定に従う。」
藍 「...それこそ、お前が後悔するんじゃないのか?何があったか知らないが、そこまでの極論は凛自身も望んでないと思う。」
蘭 「...」
莉央 「...藍は?どうしたいんだよ。」
藍 「...正直、何が正解なのか分からない。」
莉央 「...でも、こんだけ凛も苦しんでて俺らも夢でまで苦しんでる。」
藍 「...分かってる。だけど、この苦しみが外の世界に出て消えるか分からない。外の世界がどうなっているのか、俺らはどこに行けば良いのか、これからどう生きていけば良いのか、何も答えが出ない。そんな状況で外の世界に出て苦しみは消えるのか?」
莉央 「...藍。俺らはこの計画上、外の世界では...」
藍 「分かってる。それはちゃんと理解してるし賛成してる。でも、他の奴らはどうするんだ。俺らの勝手な行動で他の奴らが苦しむ結果になったらどうする?」
莉央 「...外の世界のことは浅沼さんから情報は得てるじゃないか。少しは情報がある。」
藍 「...お前、信用しすぎだよ。あの人だって所詮は茜坂という組織の一人だ。その情報が正しいのかも分からないし、俺らを嵌めようとしている可能性も否定できない。」
莉央 「っ、浅沼さんを疑ってんのかよ!」
早坂先輩が赤木先輩に殴り掛かり、二人は床に倒れた。
柚月 「...落ち着いてよ。僕らまで冷静で居られなくなったら終わりだよ。」




