表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/120

第2章ー3

「そもそも、独墺土を1つの本城と出城と見立てて見ろ」

 林忠崇元帥が会議に参加している海兵隊士官に話を振った。

 土方勇志大佐は林元帥の話を受けて、頭の中で独墺を本城に、土を出城として見立てて見た。

 確かに何となくだが確かにそのように自分には思えてくる。


「さて、この城を完全に攻め落とそうとするなら、どうするのが一番いいとお前たちは考える。

 更に考えてみろ。

 英仏軍の主力が攻めているのが本城の大手門だ。

 露軍は本城の搦め手門を攻めている。

 セルビア軍は本城の隙間から何とかならないかとうごめいている。

 出城は今のところはほぼ平穏だが、英仏軍は海路を使って軍隊を輸送して本格的な攻城戦を行える。

 お前たちはどうする?」

 林元帥は更に海兵隊士官に語りかけた。

 土方大佐は更に考えた。

 どうするのが城を完全に攻め落とすのに最善だろうか?

 会議の参加者は皆、考え込んだ。


 暫く皆が沈黙して考えた後、柴五郎少将が口火を切った。

「この際、本城の大手門を何としても打ち破り、本城を強引に攻め落とす。

 そうすれば出城は自然と降伏する。

 如何でしょうか」


「いや、それでは損害が大きすぎる。

 守備の一番堅い本城の大手門ではなく、本城の搦め手門を打ち破りましょう。それが一番です」

 欧州派遣軍の参謀長の黒井悌次郎少将が口を挟んだ。


「守備の弱い出城をまず攻め落としましょう。

 そうすれば本城の守備兵が動揺します。

 その上で本城に総攻撃をかけるというのはいかがでしょうか」

 岸三郎大佐が発言した。


 土方大佐も発言した。

「本城の隙間から攻めては駄目なのでしょうか。

 意外と崩れそうにも思えるのですが」


 他にもそれぞれの攻城案を組み合わせてみる等、議論が百出した。

 林元帥はその議論をしばらく見据えて、議論が落ち着くのを待った。

 お互いの案の長所、短所を参加者が比較検討するが、結論は中々出ない。

 だが、段々と議論は落ち着きだした。

 大手門強攻派とそれ以外を攻める派である。


 大手門強攻派の最大の論拠は、英仏両軍が共同して強力な攻撃を掛けられる点だった。

 大決戦を独に強要して勝利を収めて、一挙に独を崩壊させる。

 独が崩壊すれば、墺土は自然と速やかに崩壊する。

 確かに傾聴に値する意見だった。


 それ以外を攻める派は、大手門強攻派を非難した。

 独軍が強力な守備を固めているところを攻めては勝算が薄い。

 それよりも守備の弱いところを攻めて、独墺土を徐々に崩壊させるべきだ。

 これも一理あった。

 だがどこを攻めるかで、それ以外を攻める派はまとまらない。

 大手門強攻派はそれを非難した。


 両派の主張が一段落した後、林元帥が発言した。

「英国の軍や政府上層部も同様に悩んでいる。

 どこを攻めるべきかと。

 そうした中で、チャーチル海相がガリポリを攻めるべきだと主張したわけだ。


 そもそも去年の8月の段階で、ギリシャ政府からガリポリ半島を攻めてはどうかという提案があった。

 ギリシャは中立だが、親英仏露派が多いからな。

 だが、その時はパリが独軍の攻勢の前に陥落するかもという危機的状況だったから、英国はそれどころではなかった。


 そして、昨年の12月にロシアがコーカサス戦線でのトルコ軍の攻勢に苦しんだ末に、トルコへ英仏が攻撃を掛けることを依頼してきた。

 その際にロシアは黒海の入口を他国に迎えられるのを好まないのでガリポリは避けてほしい、ガリポリを英仏が攻撃した場合は支援しないと言った。


 だが、そのことで却って英国の軍や政府上層部の注目がガリポリに集まり、チャーチル海相の意見が採用された。

 英軍を主力にして仏軍や我々もガリポリに向かうことになったのだ」

 参加者の多くが得心したような表情を浮かべた。

 長くなったので、次話にも少し続きます。

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ