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第2章ー2

「何でガリポリに行くことになったのです?」

 柴五郎第1海兵師団長が林忠崇元帥に尋ねた。

「てっきりフランスのどこかで戦うことになると思っていたのですが」


「柴少将の疑問も最もだ。

 だが、海兵隊の本分は敵国への上陸侵攻作戦だ。

 英国がトルコ領のガリポリへの上陸作戦を行うという情報を得てな。

 我々も参加したいと申し入れをしたところ、英国から歓迎する旨の依頼が正式にあった」

 林元帥は答えた。


「そもそもガリポリはどこなのですか?」

 土方勇志大佐は恥を忍んで、林元帥に尋ねた。


 林元帥が周囲を見回すとこの場にいる海兵士官の多くが土方大佐と同様の表情を浮かべている。

 確かに日本の多くの海兵隊士官にとってガリポリは未知の地名だろう。

 この際、地図を使って説明するか、ついでに作戦の背景も説明しておこうか、林元帥は素早く考えを巡らせた。


「よし、トルコの大きな地図を持ってきてくれ」

 林元帥は副官に命じた。

「地図でガリポリの場所を示しながら、今回の作戦背景について概略を皆にこの際、説明しよう。

 それまで少し休息しよう」

 林元帥はこの場の士官の面々に話した。


 副官がトルコの大きな地図を探すのに手間取ったことから、結果的に小1時間ほど間が開くことになった。

 トルコの大きな地図というのが必要となるとは思われず、適当な隙間に地図の管理をしている担当士官が置いていたために探すのに手間取ったらしい。


 林元帥は多少不機嫌な表情を示したが、会議の参加者は担当士官に同情した。

 急にトルコの地図が必要になるとは普通は考えもしないだろう。

 会議室の一番大きなテーブルに早速、地図が広げられたが、すぐにはガリポリの地名が見つからない。

 探しあぐねた末に、林元帥が指示した場所はトルコの首都イスタンブールのすぐ傍の半島だった。

 その場所の絶妙さに、参加者は次々と呻き声をあげて論争を始めた。


「確かにこの半島を抑えれば、トルコの首都に匕首を突き付けるようなものです。

 うまく行けば、トルコの首都の陥落さえ望める」

「しかし、こんな場所、トルコが厳重に防備を固めているのが明らかではないのか。

 本当に上陸作戦を成功させて、半島を制圧することが可能なのか」

「成功した場合の配当が大きいことを考えると、賭けに出る価値はあると思うがな。

 うまくいけばだが、トルコを崩壊させて、黒海を通じてのロシアとの連絡も可能になる」

「うまく行けばと言うが、そんな楽観論で作戦を立てては駄目だろう。

 海軍兵学校でそう教わったろう」


 土方大佐は論争に加わらずに地図をまずは眺めた。

 確かに美味そうな果実だ。

 しかし、毒がありそうだ。


 ふと気が付くと、林元帥は沈黙して微妙な表情を浮かべながら、皆を眺めている。

 参加者の大方の意見が出そろい、論争が静まりかけてきたところで、林元帥はあらためて声を挙げた。

「そもそも、この半島に何故、英軍が向かっているのか、それを知りたくはないか。

 厳密に言えば、既に仏軍も一緒に向かっているがな」

「確かにそうですね。確かに戦略的な価値は大きそうですが、何故に英仏軍が既に向かっているのかの背景を知りたいものです。

 その上で考えましょう」

 参加者は口々に同意した。


「去年のクリスマスまでにこの戦争は終わり、この世界から戦争は無くなる、去年、戦争が始まった際にそう言われていたのは覚えているか」

 林元帥は周りを見回して言った。

 参加者は皆、苦笑した。

 この戦争が終わる目途が全く立たない現状からすれば凄い皮肉だ。


「だが、戦争は終わらせねばならない。

 そのためにどうするか、英国のチャーチルという海相が立案した作戦がそもそもの発端だ」

 林元帥はそこで言葉を切った。

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