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第2章ー1 ガリポリ作戦

 前の話から少し時間をさかのぼります。

 1915年4月初めです。

 1915年3月末には、日本海兵隊の欧州における訓練は完結していた。

 総司令官の林忠崇元帥の直接の厳しい査閲によっても2個海兵師団はすぐにでも最前線に投入可能と見られるようになった。

 問題はどこに投入されるかだった。


「どこに我々は投入されますかね」

 南フランスに設けられている海兵隊の駐屯地内で、土方勇志大佐は先輩の岸三郎大佐と話し合っていた。

「フランスのどこかではないかな」

 岸大佐は答えた。

「やはりそうなりますか」


 土方大佐も同様に考えていた。

 気が付けば、フランスの国土を横断するように塹壕線が出来ている。

 英仏連合軍対独軍双方がお互いに100万人以上を投入していることが、このような長大な塹壕線の形成を可能にしていた。


「しかし、あの塹壕線を突破するのはお互いに困難ですよ。

 日露戦争時の露軍の陣地がまるで子どもの陣地です。

 その子どもの陣地を突破することでさえ我々がどんなに苦労したことか。

 それを遥かに上回る野戦陣地に塹壕線はなっています。

 おまけに日に日に進化しています」

 土方大佐は訴えた。


 英仏両軍から航空偵察等によって得た戦場情報が海兵隊にも提供されている。

 士官以上のみ閲読可の情報だが、海兵隊士官は皆、その戦場情報を見るたびにどれだけの損害を戦闘前に覚悟せねばならないのか、重い覚悟を段々と迫られるようになっていた。


「ここに来て、英仏両軍の士官と交流する中で教えてもらったカードゲームでいえば、我々のチップは2枚しかない。

 こんな状態であの塹壕線を巡るカードゲームに参加したら、我々はあっという間に破産します」

「まあな。ある程度のチップが予め無いとカードゲームに参加できんよな。

 向こうもチップが3枚とかいうのならまだしも、向こうに何十枚以上もチップを持たれていてはどうにもならん」


 土方大佐と岸大佐はいつの間にかカードゲームにはまっていた。

 ちなみに2人共意外と得意で、素人と思って掛かってくる英仏両軍の士官を逆にカモにすることもあった。


「となると、我々はカードゲームの傍観者という立場に半分なりますから、戦場の火消しとして予備扱いされることになりますかね」

 土方大佐は言った

「そうなる可能性が高そうだな。または、どこかで決定的に独軍の塹壕線が崩れた場合に追加攻撃部隊として投入されるか」

 岸大佐は言った。


「そうなってほしいものです。

 ともかく独軍の塹壕線への第一攻撃部隊に我々を単独投入することだけは御免蒙ります」

「全くだな」

 土方大佐と岸大佐は肯きあった。

 そこへお互いの副官から大佐以上召集の連絡が入った。

 土方大佐は岸大佐と共に集合場所へ向かった。


 集合場所にはパリへ赴いていた林忠崇元帥が帰着していた。

 パリで英仏両軍の司令部を巡って海兵隊がどこに投入されるのか、話し合ってきたらしい。

 林元帥は全員が揃ったことを確認すると一番に言った。

「我々は、ガリポリに赴くことが正式に決まった」


「ガリポリ?」

 ここに集まっている海兵隊士官の多くにとって初耳の地名であり、お互いに顔を見合わせる羽目になった。

 土方大佐も初めて聞く地名だった。

 そういえば、トルコの辺りで、英軍が何か作戦を展開していたような気がするが、そこの地名がガリポリだったような気がする。


「海兵隊の本分たる上陸作戦をそこで行う。

 残念なことに上陸作戦の第一陣の栄光は既に英軍に奪われているが、戦局打開のための第二陣の増援部隊の主力の一員に我々は選ばれた。

 諸君の奮闘を期待する。

 海兵隊の欧州における初陣をそこで見事に飾ろうではないか」

 林元帥はにこやかに語った。

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