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どん色の女騎士と、輝色の女魔術師  作者: いのれん
最終部「暁天編」
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第三章最終話 新たな旅立ち 

 全てが解決し、ラプラタ様も風精の国に戻り穏やかな日々が続いていた。

 時々くる祭事も慣れてきて、そつなくこなせるようになってきたと思っている。

 しかし、ランク一って意外と退屈……。

 超級任務なんてそんな何度もあるわけもなく、レベルの低い任務はあたし以外が受けているから、仕方ないといわれればそうなんだけども。


 ふと、一緒の部屋にいるエミリアの方へ目を向ける。

 最初、パートナーになるって決まった時は正直驚いたけれど、まさか一緒に住む事になるなんてあの頃夢にも思っていなかったなあ。

 何でも出来て、すっごい綺麗で、だから何だか近づいちゃ駄目な印象があった。

 他の誰よりも遠い存在だと思っていたのに、今は他の誰よりも近い存在になってしまった。


「エミリア、何を考えているの?」

 今のあたしなら解る。

 こうやって自分の髪をいじっている時は、何か考えて事をしている時だ。

 心配事でもあるのかな?


「うーん、ちょっとね」

「駄目だよう。隠さないで教えてー」

 エミリアは笑顔でこちらを向き、言葉を濁そうとした。

 それはあたしを考えて、無用な心配をさせないようにする為の配慮だってことも解っている。

 だけども、あたしはもうあなたを十分に守れる力もあるんだよ?

 だからもっとあたしを頼って欲しい。


「前世の私が天界からこの地上へ墜ちる時、もう一人の天使も一緒に墜ちたの。その天使は今どうしているのかなってね」

「ほおほお、エミリアみたいに記憶無くなっちゃったのかな?」

「多分、記憶は残したまま地上へ墜ちたはず。私の記憶喪失は人化が原因ではなく、そのもう一人の天使に封印させられてしまったからだからね」

「どうしてそんな事をするの?」

「優しさ。なのかな? ふふ」

 今のあたしならエミリアが言っている意味がなんとなくだけれど解る。

 きっとそのもう一人の天使も、エミリアが大好きだったのかもしれない。

 そして地上へ降りて人へと転生する時、一人の普通のヒトとして平穏な生活を送って欲しかったんだろうね。

 あたしがもう一人の天使の立場だったら、やっぱり同じ事したかもなあ。

 あ、でも離れ離れになっちゃう。

 うーん、それは嫌だねえ。

 あれ。でもどうして天使の世界に留まらなかったんだろう?


「ねえ、何でその天界から地上へ行こうって思ったの?」

「えっとね、天界で天使達の内乱がおきて、何とか鎮圧はしたんだけれど生き残った天使は三人だけになっちゃったの」

 その三人のうちの二人が、エミリアとそのエミリアの事が大好きな天使なんだね。

 だけ(・・)って事はもっとたくさんいたのかな。

 天使のほとんどが滅んでしまうなんて……。うーん。


「後、天界そのものが消えようとしていて、このまま残っていても全滅してしまうだけだった。だから三人の天使は、それぞれ役割を決めて個々に行動したの」

 エミリアは髪の毛をいじりながら、自身の前世についてあたしに話をしてくれる。

 ずっと知らなかった、語られる事が無かった最後の事実に、あたしは複雑な思いを抱いていた。


「一人は崩壊する天界を食い止めるために残り、もう一人は天界を再生する術を見つける為に地上へ赴き、三人目である私は天使達の脅威となるであろう存在を無害にする為、同じ様に地上へ墜ちたの」

「天使達の脅威って、大いなる厄災やリリスの事?」

「そうだね。破滅の女神が生きていたのは意外だったけどね」

 でもエミリアの使命を終わったんだよね?

 リリスの悪夢は覚めたんだよね?

 何だか自分の事のように感じるよ。心から本当に良かったって思える。

 でも、そうなっちゃうと。


「……じゃあそのもう一人の天使、探しに行くのかな?」

「うーん。今はのんびりしていたいから、すぐに出発って事はないけれども、……そのうちね。ふふ」

 エミリアはあたしの気持ちに気がついたのか、いつもの笑顔のまま、あたしへそっと穏やかに答える。

 いつかはエミリア、ここから居なくなっちゃうのかあ。


 ペアを組んで当初は、すぐにあたしがぼろを出して騎士団クビになってしまうと思ってた。まあ、出したんだけども。

 だからすぐにエミリアとは別れるものだと考えていた。

 でもどうしてだろう。

 いざ別れるって考えると、なんだろうこの気持ち。

 ううん、駄目だよう。

 わがままばっかり言っちゃ駄目なんだ。我慢しなきゃ!

 うーうー。


 あたしは、今まで感じた事が無い胸のもやもやを騙しつつ熱くなった顔を隠す為、広いベッドに顔をうずめてそのまま眠りについた。



 そして月日は流れ……。


「ねえシュウ。風精の国に残らなくて本当に良かったの?」

「うん」

 今あたしとエミリアは、風精の国の都を出た所にいる。

 お互いの胸に金色の記章は無い。


「折角ランク一になったのにもったいないよ。残っていてもいいんだよ?」

「うーん。確かに残ろうか考えたんだけども」

 以前言っていた、もう一人の天使を探しに行く事になった。

 その旅に、あたしも一緒するって決めたのだ。

 確かにランク一になって、贅沢な生活とかお給金が信じられないほど増えたり、イチゴパフェがいつでも食べれるようになったり、皆からは好意を持たれるようになったり……。

 とにかくいい事ずくしだったんだけども。


「あたし決めたんだ。エミリアの側にずっといるって」

 そうだよ、あたしはエミリアの騎士なんだ。

 愛しのパートナーの側に居てこそのあたしだもの。

 地位とか名誉とか、お金とかそんなんじゃ代えられないあたしの一番大事な人だからね。

 だからエミリアと離れたくない。ずっとずっと一緒に居たい。


「シュウ……」

「あとあとっ。そのエミリアが天使だった頃、一緒に居た女の子に会って見たい!」

 エミリアの事が大好きなもう一人の天使。

 名前は確か、セレーネって言ってたっけかな。

 エミリアの事が大好きなものとして、その女の子が気になる。

 どんな子だろう。可愛い子かな?


「あの子はかあいいよ。シュウもきっと気に入ると思う」

「うんうん」

 楽しみだなあ。

 呼び方はセレちゃんでいいのかなー?

 わくわく……。


「じゃあいこっか」

「はいっ!」

 新たな旅と、セレちゃんがどんな子なのかわくわくしながら、あたしはエミリアの笑顔に導かれ、彼女の手をそっと握り歩みだそうとした時。


「シュウ、ありがとうね」

 エミリアはあたしの目をみながら、いつもの優しくて穏やかな笑顔でお礼をしてくれた。


「エミリアこそ、いつもあたしの側に居てくれてありがとう」

 あたしも同じ様に笑顔で返事をする。

 今度は照れずに、しっかりと大好きな人の顔を見て言えた。

 これからも、ずっとそばにいたいな。


                               第三章 完結

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