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【番外編】ユゼフの休日−2

「休み? 市場に顔を出しているとかじゃなくて?」


ユリウスは、ギーギーと軋む椅子に勝手に座って聞き返した。宮廷騎士ユリウス・マエンバーでなく、ただのユーレだからこそ出来る所作だ。


「市場はマレックが代わりに行ってる」

「珍しいな」

「だろ?」


港が稼働している間はユゼフもそこにいるとユリウスは思い込んでいた。不在でも別の場所にいるだけで、結局は港の仕事をしているんだと。

そのユゼフが自ら休みを取っている?


「おかげでこっちはてんてこまいだよ」


アントニはため息をついた。ユゼフの代わりに、慣れない書類仕事をこなしているらしい。


「突然だったのか?」


アントニは肩をすくめた。


「今日の朝早く、近所の子供に小遣いを渡して知らせてきたんだ。よっぽど急用なんだなって俺たちも話してた」


間が悪いが、急用なら仕方ない。ユリウスは諦めて立ち上がった。


「また来るよ」

「ユーレも久しぶりだったのにな。忙しかったのか?」

「ちょっとな」


ユリウスは言葉を濁した。


「おっさんによろしく言っといてくれ」


そう言って去ろうとしたユリウスは、アントニが何か話したげな様子でこちらを見ていることに気がついた。


「どうしたんだ?」


水を向けられたアントニは、ハッとした顔で口を開いた。


「いや、なんていうか」

「はっきり言えよ」

「……最近のギルド長、おかしいなと思ってさ」

「どういうことだ?」

「おかしいってこともないのかもしれないけどな」


ユリウスは座り心地の悪い椅子にもう一度腰を下ろした。辛抱強く次の言葉を待つ。


「なんていうか、ギルド長……最近誰よりも早く家に帰ろうとするんだ」

「えっ?!」


アントニの言わんとすることはユリウスにも伝わった。


「いつも最後まで事務所に残っているあのおっさんが?」

「だろ? そう思うだろ?」


ほっとしたようにアントニは続けた。


「朝もギリギリまで来ないし、それだけじゃないんだ。前は休んでくださいって言っても港に来ていたのに、最近は定期的に休むようになったんだ。いや、休むのはいいんだけど、なんだかびっくりして」

「うん、それは驚く」

「そんなことが続いてからの今日の突然の休みだろ? なんか、こう、らしくないんだよな」


ユリウスは深く頷いた。普段のユゼフがしそうにないことが続いているのだ。


「何か理由がありそうだな」

「だろ?」


まさか、またなにかよからぬことに首を突っ込んでいるんじゃないだろうな?

アントニは言えないが、ユリウスはそんな懸念を抱いて腕を組んだ。


「帰りにちょっとおっさんの家に寄ってみるよ」

「そうか? なんか悪いな」

「どうせ通り道だ」



そんなわけでユリウスは、そのままユゼフの家に立ち寄った。宿屋や飲み屋が並ぶ騒がしい一角に、ユゼフの住む借家はある。

しかし。


「おい! おっさん! いないのか?」


扉は閉められ、中から返事はなかった。


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王妃になる予定でしたが、偽聖女の汚名を着せられたので逃亡したら、皇太子に溺愛されました。そちらもどうぞお幸せに。4
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