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《選ぶ運命》

目覚めてみれば懐かしい天井を見ることが出来た、王宮の冷たい大理石とは違う少しだけ荒い凸凹が見える天井は神殿特融のものだと何時か教えてもらった。

そして既視感があるこの展開は、私がこの世界にきて初めて連れて来てもらった時と同じものだろう。

嫌な予感は無駄に当たる。


起き上がり部屋を見渡す、そしてシーツを上げて足を見ると包帯でぐるぐる巻きになっていた。


「夢じゃないのか・・・・」


さて、いろんな事が狂って来てしまう・・・そんな予感がビシビシと伝わってくるのだ、計画書の書き直しなんて絶対したくないのにこれは大問題なってくるはずだ。


ここが神殿ならなおさら・・・。


さて私の嫌な予感が当たったか否か、どっちでしょう。




「リュ・リ・カ・さまーーーーーーー♡」


語尾になぜハートマークをつける。

見た目だけならどこぞのアイドルグループにも入れそうな男が私は、ものすっごく苦手だったりする。

美しいワインレッドに一滴だけ茶色の絵の具を混ぜたようなきれいな髪は彼の背中半ばまでを覆う。その瞳は済んだ琥珀色だ。目鼻立ちは北欧系でその肌にはうらやましい事にシミ一つない、ただ一つその左目の下にある傷が勿体ないことこの上ないほどの美青年だ。鼻水と涙にまみれていなければ。


「お目覚めになられたということで、このシビアあまりの感激に心がいっぱいです!!」


「そう・・・それはよかった」


全幅の尊敬、信頼、いや信仰が正しいのだろう。


「ああ、もう一度あなた様にご尊顔できた、お言葉を拝命でき・・た・・今生に憂いなし」


「いや、憂いばっかりだよ」


神にとってとても扱い易いのはなにか? 


それは、熱狂的な信者である。


だけど普通のごく一般的思考を持つ人間(・・)にとってこのような人種がものすごく扱いづらい事を知っている。


なぜなら一度経験済みだからだ。

この今にも自分の中で変態の烙印を押しそうになっている相手はこの国の神官300名以上の中で2番目に偉い人だとこの国の国民はわかっているのだろうか。

彼の名は、シビア・レ・ファルル 神官長亡き後、神殿の全てを取り仕切っていたのだが・・・・彼はとても優秀な人材なのだと分かってはいる、わかってはいるが・・・


「あの無礼な騎士どもに酷い仕打ちをお受けになったと、恩を仇で返すとは!!」


「いや受けてない、受けてないから!!」


今にも『英雄』を殺しに行こうとしないで欲しい、これ以上計画がズレる訳にはいかないのだ。

私が気を失い倒れてしまってからもう7日も過ぎているのだ、この神殿に今いること事態問題であるのにもうこれ以上は修正することも難しくなってくる。

計画では、あの日革命時に殺されている筈だった自分がまだ生きて神殿に戻ってきているのはある意味考えられるうちの最悪の状況ではない、だが不味い事にそれを民には知られる訳にはいかないのだ。


「慈悲を授けるのですか?」


「慈悲って・・・・いいから今の状況を全て報告しなさい。シビア」


「はい、我が女神」


そう言ってやっと歪んだ綺麗な顔がピシっと凛々しくなる。

彼から告げられた現状報告は思ったより問題なく全て順調に進んでいるらしい、そして最後に告げられた内容に驚いたのは、敵対中だという騎士達『革命軍』の人間が私に謁見を願い出ているという珍妙な内容だったからだ。


「謁見か・・・」


「罠です!リュリカ様を亡き者にしようと画策してるのでしょう」


「それの何がいけないの?」


「え・・・」


「もともとそういう計画だったんだから構わないじゃない。その謁見受けましょう」


笑みが浮かべられるのはきっと終わりが見えているから。


「そんな、リュリカ様!」


「私の計画書を手に入れる代償は?」


「・・・・・・あなたの願いを一つだけ聞く事です」


「はい、いい子ね。流石私の信者」


「はい、」


シビアという名前の通りに問題ある性質があるがそれでも信者であるこの男がものすごく間抜けで、かなり好ましい。馬鹿な子ほどってやつだ。たとえ犬みたいにまっすぐに慕われることがこんなにも辛くても優秀でまっすぐな心情がどうかまがらないように私は願うのだ。



「さてと、準備しましょうか?あなたの報告で少し起動修正が必要な部署もあるみたいだし。やっぱり経理は神殿から人材を選抜しておかないと・・・横領なんて馬鹿な事させないわよ」


私が意識不明というのは少し違う作用を起こしてくれたらしい。裏切りものには制裁を、だ。


「ですがこれ以上神官や巫女の人員を減らすのは、神事に支障を来しますよ?」


「あら、あなたは私が死んだ後に誰を崇めるの?」


そう言ってその綺麗な紫の髪に触れる。毛先までまっすぐなその髪が一筋だけ顔に掛かっていたから直すついでだ。


「////////」


紫の髪を持つ子供は幼い頃に神殿に預けられるせいでここに居る人間は、すごく純情な子たちが多い。ちょっと触れるだけでも彼らは真っ赤になるのだ。


「私は生涯あなた様以外を崇めません!!」


そう叫ぶ男に私はただ笑ってやる。それしかもうしてやれないから。






















計画がもう修正の出来ない程にズレて来ている事を私はまだ知らなかった。





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