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《たった一つの条件》

中々上手く話しが進まない。

私にとっての2年、それをざっくり説明したシビアの言葉に返る言葉がまさか『人間じゃない』だとは思わなかった。

まぁ、流石に私もいろいろと裏ワザを使ったのは確かだけど。

例えばこの国と他国との文化を教えてもらい、それを自分の持つ異世界の『先人の知恵』を利用させてもたっりもしたのだ。

僅かばかりの知識を与えれば、それをこの世界風に工夫してくれる優秀な部下(神官たち)と一緒に様々な事をした。

王族や貴族の人間が好むような知識は、あまりにもわかりやすかった。

彼らの望みそうなものをエサに様々な特権を手にして、それをフル活用して・・いや、頑張ったなぁ・・・。

ある意味充実した2年だったとも思う。人間死ぬ気になればなんでもできるのだ。


「いい加減にして・・・もう時間がないのよ勇者様」


「だからっ」


「私がこの国に出した、たった一つの条件まで叶えないつもりなの?」


私がこの国を救うと決めたのは、2年ちょっと前の事だった。

既に私の背負う命は片手で足りないほどで、もう押しつぶされそうなのだ。それでもとこの場に居る。


「そんなのっ知るかっ!」


そう言って私の前に置かれた計画書を彼はビリビリと破り捨てた。


「君が人間だと言うならなおさら、君を殺すなんて出来るかっ!!」


そう清々しく言い切る姿は、確かに勇者様らしいのだが、私にとっては滑稽以外のなにものでもなかった。


「・・・・私の命と引き換えの条約もありますけど?」


何処だっけか条約の条件として私自身を望んできた国があった。私自身を利用したいという大胆な申し出を私は上手く利用したたのだ。

その場で構わないと言い、彼らの油断を誘い私は、彼らに死んだ後の死体の一部をその国に与えるという事で条件を呑ませた。


「なんだってそんな事をっ」


「なんとしてもだったから・・・それに私が何をしたか、忘れた訳じゃないでしょう?」


決して忘れてはいけない、私はこの2年の間、確かに『リュリカ神』であったのだから。


「・・・・それは、」


息を呑むラビスという男が私を見つめて固まった。


本当に大変だったと過去を思い出せばキリがない。

孤軍奮闘とまではいかなかったが、それでもあの城の中で私は必死だった。

悟られてはいけない、隙を見せてもいけない。

そして彼らを利用して私は少しでも多くの命を救う事を誓った。


たった一人の少女に。


「お前たちが何を言った所で無駄だ」


そうシビアが締めくくると私は、淡々と4日後に控えた私自身の処刑の段取りを説明した。


「いい?私の死を効果的に使いなさい・・・そして絞首刑よりも打ち首の方がより人々に印象を強くうえつけるけど、これからの国を治める者には慈悲と慈愛を持ってほしいという象徴をとシビアが言うからまぁ、絞首でもいい。ただねぇ・・・苦しいから、出来れば早めにとどめ刺してね」


大体の段取りは、それなりに決めてあったし、私だけでなく王や王妃と側室に王子や皇女とそれなりの人数になるこの祭典?をどうにか押し進めて行く必要があった。


「さてと・・・これでだいたい終わりかしら」


それなりに全ての話を終えれば、既に太陽が頭上高く上がっていた。

ここの太陽を見るのも後3回かと僅かに苦しくなる。

やっぱり私は、人間だ。


死ってどんなんだろう・・・・。

1回経験したとはいえ、まさかのこんな事になろうとは思わなかったし、あまりにも唐突だったし。


「なにか質問は?」


「・・・もう一度だけあなたとの時間をくれ」


「こらこら・・・・本来私は、地下牢へ幽閉されるはずなのよ?それをこの神殿に幽閉という体にしてるのは何故かわかる?」


私自身この国に出来るだけの発展を残したいものは、全て手記として残してはいるのだが、思い出しては書いてを続けているとあまりに脈絡ない手記ばかりになってしまってその整理に現在追われている。


「神官たちを守るためだろう」


つづけようとした答えは、思ったよりもスムーズに相手の口から出ていた。


「わかってるなら」


「それでも・・・頼む」


たくさんの命を背負ってきた。私はもう一杯一杯なのに・・・本当に身勝手な人だ。

でもなんだろうか、久しぶりにこんな人を見た気がした。

私を私としてみようとする人を・・。



きっとこんな風に誰かとしゃべれる事なんてないのだろう、そう思ったら・・いつの間にか首を縦に振っていた。


「・・・一度ね」


神様?死を恐れる神がいるわけないじゃないの。





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