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幽霊母ちゃんの料理教室  作者: くろくまくん


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2/14

タクミとチィ

亡くなった母親の葬儀が終わった直後に、母親が幽霊になって現れた。


そして、タクミに料理を教えてくれると言う。


料理未経験のタクミは上手に作れるのか。

 結局、母親が復活(?)した次の日の朝は、お弁当づくりは無理だった。そりゃそうだろー。昨日の味噌汁だけでもたいしたもんだろー。


 なので、朝は冷凍ごはんの残りと、昨日の味噌汁の残りをいただいた。だし巻き卵とか目玉焼きが食べたいところだけど…


『もう学校の時間ちゃうの?帰ってきたら作り方教えたるし、今日は我慢しとき。学校はちゃんと行けそうなん?』


「わかった〜。あ、帰りに食材とか買うものあるかな?調味料とか。学校は普通にちゃんと行ってるで」


 僕が通っている高校は、うちの団地から徒歩5分とめちゃ近いのだ。なので、結構寝坊してもなんとか間に合うことが多い。よくギリギリまで寝てて怒られたっけ…。僕が制服に着替えている間に、母親が買い物リストを考えていた。こういう時、モノに触れないのは不便だな、まぁ話せるだけでも嬉しいんだけど。


『あ、どっちにしても買い物は学校から帰ってからでいいやろ。遅れてまうし、はよ行ってき!はよはよ!』


 母親は邪魔者のように、僕を早く学校に行かせたがる。まぁ、遅刻しないようにっていう、気づかいなんだろうけど。なんか幽霊の母親に見送られて学校に行くのも複雑な心境である。


「じゃあ行ってくるー」


 今日は学食で食べるか、学校の購買でパンか何かを買うことにした。パンに関しては僕も母親も手作りじゃないと!というこだわりはない。むしろパン屋さんのほうが美味しいから。


 僕が通っている高校はごく普通の公立高校だ。普通と言うと言い過ぎかな。どちらかというとレベルは低めと言われる方の高校だ。でも近いし、学費のことを考えると、無理に遠い難関校に挑んだり、私立に行くよりも、いいと思った。


 高校は今が秋なのであと1年と少し。元々そのつもりだったけど、今は完全に就職の道しかない。というか進学する気もない。


「タクちゃんおはよー!ちゃんと学校きてるやん」


「あぁ、おはよー」


 挨拶してきたのは、小学校から一緒の幼馴染みのチィだ。本名は後藤ゴトウ 千紘チヒロ。僕はチィと呼んでいる。


「あ、あのさ…タクちゃん。元気…?」


 なんかチィがもじもじしてるのをあまり見ることがないから気持ち悪い。


「ん?別に普通やで。なんで?」


「あー、そう。お母さん大変やったね…。ごめんな、私なんもできんくて」


「え、あぁ大丈夫、意外と元気そうやし」


 あ、違う。


「あ!僕が元気ってことなー。ははー」


「ん?うん…元気やったらよかったよ。あっ、そろそろ行かな遅刻するでー」


 あはは。母親が幽霊でいることなんかもちろん言えない。てか、おはらいとかされるんじゃないか。あぶないあぶない。チィが気づかなくてよかった。


 チィは違うクラスなので、教室の廊下で別れる。2年のクラスは全部で5つ、ひとクラス20人くらいだから、学年で約100人の生徒がいることになる。なぜか授業を受けていると睡魔が襲ってくるんだけど、みんなは経験があるだろうか。授業が終わるとパチッと目が覚めるんだけど、学校の先生はみんな催眠術が得意なのかな。うん、きっとそうだ。


 そんなこんなで、午前の授業が終わってお昼休み。チィが僕のクラスにきた。


「タクちゃん一緒にお昼食べようや」


「うんうん、ええよ。あ、今日学食に行くわ。それでもいい?」


「あ、うんうんそうやんね。私おべんと持って行ってそこで食べる。あとで飲み物も買うし」


 2年の教室が2階で、学食があるとこは違う建物なので、階段を降りてそこまで向かう。


「かけうどんと、梅おにぎりくださーい」


 学食のカウンターで注文をする。決して美味しくはない。でも安いので文句は言えない。かけうどん150円と、おにぎり70円は安い。この物価高の中、よくやってくれている。学食だから国の補助とかあるんだろうけども。


 チィは小さな可愛らしいピンクのお弁当をランチバッグに入れて持ってきていた。あまり気にしたことなかったけど、意外と女の子っぽいのが好きなんだな。


 うどんをすすりながらチィのお弁当箱を見てたら、チィが気がついた。


「ど、どしたん急にジロジロ見てー」


「んーん、なんもないで。ちゃんとお弁当作ってもらってるんやなーて」


「あっ、これな。このお弁当は私が作ってるんやで。だってママは朝早いし、夜勤もあったりするから」


 チィの母親は介護士らしい。そして、僕と同じ母子家庭だった。


「へぇ〜、チィもなかなかやるやんか」


 チィの表情を見てると面白い。笑ったり怒ったり、すねたり、とか感情の変化がまぁまぁ顔に出るのだ。今の表情はなんだろ、なんかドヤ顔のような、照れてるような、その中間くらいだな。


「そやろ〜、私も家事とかもまぁまぁできるんやで。あ、タクちゃんが嫌やなかったらなんやけどな…」


 ん、なんかまたモジモジが始まったぞ。最近トイレ近いのか。そのうちにうどんとおにぎりを食べ終わった。


「おばちゃんごちそうさーん。チィ、飲みもん買いにいこ」


「あ、う、うん〜」


 チィに飲み物をおごってあげた。僕はホットコーヒーを飲む。中学くらいからコーヒーはホットのブラックを飲むようになった。ホットコーヒーを飲むとなんだかほっとするのだ。シャレじゃないよ。チィはアイスレモンティーを飲んでいた。昔から好きだなそれ。


 午後の授業は、午前よりも更に眠かった。今日は時短で一コマだけだからまだマシだったけど、ご飯食べたあとはやっぱり眠い。


 そして、授業が終わった。帰る準備をしてたら、チィがまたきた。


「タクちゃん一緒に帰ろ〜」


「うん、ええよ~」


 一緒に、っていっても僕の家につく5分だけの間なんだけどね。


 歩きながら今日の授業の眠かったことなどを話す。


「あ、今日ってタクちゃんこのあと時間あるん?」


「え。いや〜、買い物とか色々しないとあかんこといっぱいあるんよね…どしたん?」


「あ〜、そっか。ううん、じゃあ今度でええよ。別に大事な用とちゃうから」


「そうなんや、まぁそしたらまた月曜な」


 今日は金曜日だから明日とあさっては学校は休みだ。


「うんっ、タクちゃんなんか困ったことあったらいつでも言うてな。ばいばい」


 チィと別れる。家に帰って…あ、そうだ買い物か。


『あんた、チィちゃんに冷たいんとちゃうの?』


「うわぁっ!なんなんいきなり〜」


 母親である。


『女の子には、もうちょい優しくしなあかんよ。せっかくあんたのこと…まぁえっか。あ、買い物リスト言うから、メモしーよ』


 もう普通に会話してるけど…死んだんだよな?買い物リストを書く。


◯たまご

◯ごま油

◯パン粉

◯白だし

◯ニラ

◯玉ねぎ

◯きゅうり

◯豚肉

◯ミンチ(合い挽き)

◯もやし

◯キャベツ

◯マカロニ

◯スパゲティ

◯マヨネーズ

◯しめじかえのき、やすい方

◯ウインナー


 まぁまぁあるな…


「母ちゃん、こんないっぱい買うん?」


『冷蔵庫もうほとんどすっからかんやろ。それに毎日買い物いくわけちゃうんやから、これで何食か分が作れるんやで。まぁおいおいわかるわ』


「まぁえっか。じゃあ買い物いこー」


『あんたマイカゴちゃんと持っていくんやで、そこにあるやろ』


「え〜!このカゴ持って歩くの恥ずかしいやんか〜、袋もらったらいいやん」


 母親は不服そうな顔をしている。


『ええか?そういう自分だけやったら大丈夫やろ、っていう積み重ねが環境破壊になっとんやで。袋にお金がかかるからとかケチってとかじゃないねん。その積み重ねのせいで、今生き物もよーさん死んどるし、地球もボロボロなってるんやで。つべこべ言わんとはよカゴ持って!』


 まぁまぁうるさい。まぁ…昔からそういうのはしっかりしてたな。近くのスーパーだから別にいいか。


 マイカゴっていうのは、スーパーに置いてるようなプラスチックのカゴで、それを家用で買っておくと、買い物するときに、レジで直接そこに入れてくれるのだ。スーパーによったら、携帯みたいな端末で、商品取るたびにバーコードを読んで、そのままマイカゴに入れたら、支払いもスムーズだし、詰め替えの作業もいらないので、とても便利だ。


 スーパーについて、買い物をする。確かにマイカゴ持ってたら楽だった。たまごは安いからといって、サイズバラバラのやつを買うより、少し高くてもL寸のを買えだとか、ミンチも、脂の入り具合を見ろだとか、細かい指示を受けた。どっちでもいいだろー、そんなん。


 ようやく買い物が終わった。



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ほのぼの、ほっこり 仲良し回でした。 ゜+(人・∀・*)+。♪ ほっこり♪
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