表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊母ちゃんの料理教室  作者: くろくまくん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/14

チィとプリン

最悪な夜が明け、朝がやってきた。


ダイニングには、昨日のままの食器と、


微かにタバコと酒のニオイが残っていた。

 結局そのまま寝てしまっていた。ハンバーグ食べてお腹いっぱいになったのと、そのあとの乱闘騒ぎ(?)があったため、疲れてたんだろう。座椅子でそのままダウンしてしまっていて、起きたら携帯が光っていた。チィからのメールだ。


『タクちゃんすごいね!私もタクちゃんの作ったハンバーグ食べたいな。もう熱は全然ないし、ノドも大丈夫になったよ。タクちゃんのおかげだよ。3日後の金曜日から学校にも行くね』


 相変わらずの標準語のメールだった。なんでかは理由はわからない。昨日が洗い物片付けてなかったのと、炊飯器もそのままだった。マカロニサラダの残りと、スープと、ご飯だけ食べた。お弁当のハンバーグは焼いてる時間がない。今朝も…母親はいないようだ。パッとご飯を食べて、制服に着替えて、家を出る。


「行ってくるー」


 誰もいないけど、一応言葉をかけておいた。それにしても…昨日は少し怖かったな。だいぶ強がってたけど、今思い出すと震えそうになってくる。あれが父親?絶対そんなわけない。むしろ僕が知らないうちにどこかに消えた父親なんて、もう父親じゃないだろ。あ…母親の体…というか幽体というか。薄くなってた気がするのはなんでだろうな。


『チィおはよー。元気か?なんかいるもんあるかな?じゃあ行ってくるー』


 学校に入る前に、チィにメールを返信しておいた。学校の授業は退屈だし眠い。でも、仕方ないので行く。今日の晩ごはんは何にしようかなー。




◆◆◆◆◆◆◆◇◇




 無事に今日も学校が終わった。今日のお昼は学食でカレーを食べた。300円で安いんだけど、なんとも言えないとろみと、具がゴロゴロもしていなくて、溶けきってもいない、中途半端な具材のカレーなのだ。まずくはないんだけど、美味しくもない。学食のおばちゃんには悪いんだけどね。


 あ、チィから返事きてたのかな。学校では携帯はあまり触らないので忘れていた。


『プリンが食べたい。学校終わったら電話して』


 簡潔なメールが来ていた。仕方ないのでコンビニにプリンを買いにいきがてら、チィに電話をかける。かけたらすぐに出た。


『学校終わったん?』


「うん、今終わったとこやで。プリンて、なんか甘いもの食べたくなったん?」


『うん、そうやねん。ちょっと元気になってきたかも。あとヒマやねん』


 僕は暇つぶしかい。


「まぁ、ずっと寝てたら疲れるやろし、ヒマにもなるわなぁ。もうちょいでコンビニ着くけど、なんのプリンがいいん?」


『んーとね、私とろっとしたやつで、上にホイップが乗ってるやつが好きやねん』


 なんか注文が多いな。それになんか女子っぽいな、ホイップとか。まぁ僕も甘いのは好きなんだけど。聞きながらコンビニに入る。


「今ちょうどコンビニに入ったでー。とろっとして、ホイップな…あぁ、ちょうど【お口でとろけるホイップオンプリン】ていうのがあったで。これでいい?」


『わぁ〜、名前が美味しそう!うんうん、それがいい。あとヒマやからそのまま来てほしいんやけど…』


 どんだけヒマヒマ言うんだろう。チィのプリンと、あと僕用のホイップとカスタードのシュークリームを買った。あ、チィとチィのお母さんも食べるかもだから、シュークリームは3つにしておこう。


「んじゃ買ったらそのまま持っていくで。少し待ってな、レジをするからな」


『うん』


 支払いを済ませてから、コンビニを出る。母親が袋がどうとかうるさいから、学校のリュックに、シュークリームが潰れないようにそぉっと入れた。


「レジ終わったでー。そういえば昨日はちゃんと寝れたん?」


『うんうん。薬飲んだのもあるけど、ノド痛くなくなってきたからぐっすり寝れたで』


 いったん家に帰ろうと思ったけど、そのまま来てって言うから、仕方ないのでそのまま行く。自分の家も通るんだけどね。


「もうちょいで家着くからカギあけといてやー。まだ一応やけど感染対策しとかなあかんのやろ?」


『んー、マスクしてるし、もう熱ないから大丈夫やと思うんやけど…』


 電話してるうちにチィの家に着いた。カギは開けてくれていたから、そのまま入る。そして、カギは閉めておいた。


「プリン持ってきたで〜」


「ありがと〜」


 家の奥のチィの部屋から返事が聞こえた。二日前に比べて声もだいぶマシになっているみたいだ。チィの部屋のドアを軽くノックしてから、開ける。チィが部屋の奥のベッドで寝ていた。


「ほれ、プリンやで」


 チィの顔がほころぶ。プリンとスプーンを渡す。


「わぁ〜!美味しそう。タクちゃんありがとう。ごめんな、パシらせてしもて」


「あぁ、全然ええよ。甘いもんも食べたくなるやろ。あ、シュークリームも買ってきたで。ひとつは僕が今食べるけどな」


 チィがさっそくプリンを開けて食べる。チィは笑うと目が線みたいになる。見てて面白い。


「ほんとにお口でとろけとるわ〜!ホイップも甘すぎんくておいしい」


「そりゃよかったわ。とろけんかったらメーカーに苦情言わなあかんとこやった」


 そのたびに苦情受けたらメーカーも大変だよね。僕はホイップとカスタードのダブルシュークリームを食べる。これは小さい時からあったやつで僕は好きだ。たまにクリームが多すぎてかじるたびにクリームが溢れるやつがあるんだけど、それは少し苦手で、程よくくらいのが良い。


 シュークリームを食べ終わった。そろそろ帰ろうかな。晩ごはんも作りたいし。


「チィ、そろそろ…」


「あかんっ、もう少し」


 え。チィが昔のチィみたいになっている。小さい頃一緒によく遊んでた頃も、こうやって駄々をこねていたな。


「んーと…もう少しだけ話しよ?」


 まぁ急ぐわけじゃないからいいか。


「うん、まぁ大丈夫やで」


「タクちゃん、この前の質問の返事聞いてないんやけど…」


 え、なんのことだろ。


「なんか質問しとったっけ?」


「えーと…私のことどう思ってるか、っていう質問やん」


 あー、思い出した。チィが途中で寝たやつな。僕は返事したんだけど。


「あー、あれな。好きやで」


「かる〜〜!タクちゃん言い方が軽い〜」


 言い方に軽いとか重いとかあるんだろうか。


「え、どういう言い方したらいいん?」


「そんなん私に聞くことちゃうやろ〜。あ…」


「ん?なに?」


「日曜日はごめんな。土曜日の夜からしんどなってて携帯も見れてなかってん」


 まぁ連絡ないと心配にはなるもんな。


「うんうん。まぁ熱出てて寝込んでたらしゃーないやろ。今度の週末に公園いこっか?もうぼちぼち寒くなってきてるけど」


 もう11月になるから、気温が上がってるとはいえ、風は寒い。


「あっ、じゃあ、外じゃなくて屋内で寒くなく過ごせるとこ行こ〜、水族館とか」


 実は水族館は好きだ。


「おっ、水族館ええやんか。ここっていうとこあるん?僕は最近の新しい綺麗な水族館よりも、昔からある素朴なとこが、人も多くなくて好きなんやけど」


「私もそこでいい。そのほうがゆっくりできそうやもんね。あっ、その時にサンドイッチ作っていくわ」


 僕が言っている水族館はだいたい電車で30分くらいでいける。


 玄関の方でカギを開ける音が聞こえた。チィのお母さんだな。


「チィただいま〜。あっ、タクちゃん来てくれてたんやね。日曜日はほんまにありがとうね、助かった」


「いえいえ、全然大丈夫です。チィもだいぶようなってきたみたいで。あ、これ」


 チィのお母さんにシュークリームを渡す。


「わぁっ、シュークリームやん。最近自分でも買わないから久しぶりに見たわ。あ、コーヒーいれるわね」


「あ、そろそろ帰ろうと思ってたとこやったんで大丈夫です。ほなまた〜」


 どんどん遅くなってしまいそうだったので、帰ることにした。


「タクちゃん、ありがとう。またね〜」


 チィの家をあとにした。11月にもなると日が暮れるのも早くなるな。そして、暗くなるとお腹が空く。これは関係ないか。


 早く帰って晩ごはんを作ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
眩しい。(/´△`\) おおぅ。 目が……。 プリン食べたいです。 ( ・∇・)プリン
茶碗蒸しを作っていたから、てっきりプリンも作るのかと思っていました。けど、コンビニだったよ! (≧Д≦) ホイップクリームは自分で作ると面倒臭いですし、ま、仕方無しですねw (´ε`) シュークリ…
ホイップとカスタードのダブルシュークリーム、これ好き、カスタードだけの奴より甘くないんですよね。コンビニよりスーパーの方が安いぞタク。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ