魔人
王都の何処かに、その場所はあった。
広い室内、中央には円卓が置かれており、周囲には5人の者達が座っていた。
そして一人が魔法を使い、円卓の中央に一人の男――ルイスの姿を映し出す。
すると、その姿を見た一人は怒った様に急に立ち上がった。
「こんな冒険者がノア達を倒したってのか! 何がどうなってやがる!?」
「既にノア様を始め、ディオとグリムは捕まり、ラウンは死んだ。事態は深刻だろう」
「とりあえず、このおっさんを始末する。それは決定事項でしょ?」
「我等、始高天の目的……その達成には間違いなく邪魔となるだろう」
誰もがルイスの顔を見て怒りや、物騒な言葉を口にする。
そして、その言葉の最後。
最初に立ち上がった者――巨漢のが机を叩き、叫んだ。
「よぉし!! なら俺様が始末してやるぜ! この《《魔人の力》》を使いたくて仕方ねぇんだ!」
「アンタが? アンタじゃ死ぬだけでしょ? ラウンだって死んだのに、脳筋のアンタよりもボクの方が良いさ」
「んだとガキが!!」
男は仲間の一人――少年に煽られると、怒りの怒号を放った。
そして、徐々に男の身体に異変が起こる。
男のシルエットが、異形の者へと変わり始めたのだ。
それを見て、少年も同じ様に異形の姿に変わった。
他の二人は、それを黙って見ているだけだった。
やがて、二人が飛び出そうとした瞬間、二人の間の魔法壁が出現する。
そして、それと同時に一人の男が入って来た。
「止めよ! 私が何故、お前達4人を呼んだか分かるか? 始高天の中で魔人の力を得ているからよ。そんな喧嘩の為ではない」
「――チッ! ワカッタヨ!」
「――残念だったね!」
男の言葉に渋々だが、双方と共に座った。
「既に創世の準備は少しずつだが完了している。目的としている各地のダンジョン、その4割だが魔法陣は設置し終えた。――次はいよいよエルフ族の里。世界樹を狙うぞ」
「おっと! それならボクが行くよ。薄汚いエルフ族――根絶やしにしてやる!」
少年はそう言うと、背中から翼を生やして宙へと浮かんだ。
そんな少年に、統括していた男は注意を促す。
「目的を間違えるな。狙い世界樹のダンジョンよ。エルフ族は二の三の次だぞ」
「分かってるよ。ついでにぶっ潰すだけさ!――さぁ行こうか!!」
そう言って少年は空へと舞い上がり、天井のガラスを破りながら空へと消えていった。
「やんちゃ坊主め……」
統括の男はそう言って呆れた様に言うと、小さく杖を振る。
すると、割れたガラスは時が戻る様に天へと上り、やがて割れる前に戻るのだった。
「さぁお前達も行け! 他のダンジョンに創世の魔法陣を刻むのだ!!」
その言葉に、他の者達も姿を消していった。
そして最後は統括の男も、まるで霧の様に姿を消した。




