VS略奪冒険者ガイル&デビルバット
「行くぞ!!」
「はい!」
「むぅ……!」
ルイスの声にエリアとレイも答えながら武器を構え、目の前の脅威と対峙した。
そしてルイスは声を出すと共に飛び出し、目の前の冒険者達へと向かって行く。
「――+Level5!」
力量の瞳を開眼させ、目の前の敵に対して『+Level5』を発動する。
ルイスの目の前には複数人の冒険者達が武器を持ち、ルイスへと向かって来るがルイスは臆せず突き進む。
そして一気にレベルを変動させながら目の前の敵へ攻撃を仕掛けて行った。
「がふっ!!」
「なっ! この――がはっ!」
「こいつ――ギャッ!」
レベルを変動させながら流れる様に蹴り、斬り、吹き飛ばしていくルイスの前に『頂きの欲望』の冒険者達は次々と意識が沈んでいく。
しかしルイス――否、この場にいる者達の敵はそれだけじゃない。
『キィィィィィィ!!!』
「しまっ――ギャアァァァァァ!!」
ルイス達へ意識を向けた冒険者にデビルバット(レベル46)が襲い掛かった。
そして冒険者はデビルバットに空へと連れ去られ、そのまま捕食されてしまった。
それを見ていたルイスへ目の前の冒険者を斬り伏せた後、エリアとレイに向かって叫んだ。
「二人共! デビルバットに注意しろ! 予備動作もなく襲撃してくるぞ!」
「了解です!――ハァッ!! 光龍閃!!」
ルイスの言葉にエリアは冒険者達と戦いながら答え、剣を振るった。
まるで光の龍が通った様な残光が残る一閃に、それを受けた冒険者達は一瞬で意識を刈り取られた倒れた。
そして、その直後にデビルバットが急降下し、エリアへと迫っていた。
「っ!――フンッ!!」
しかしエリアはそれをすぐに察知し、彼女の第一スキル<光属性付与>によって光を纏った剣を正面にして迎え撃った。
そしてデビルバットとエリアが交差すると、彼女の背後に回ったデビルバットの肉体は両断され、そのまま絶命した。
ドクリスの森の時よりも強くなっている彼女にとって、既にレベル40クラスは敵ではなかった。
そのまま剣を振るって血を払い、剣を天へと掲げた。
「我が名はエリア・ライトロード! 誇りある王国騎士団の副団長なり! 命が惜しくない者のみ私に挑め!!」
「っ! 王国騎士の副団長……!?」
「まさか黄昏のエリアか……!」
エリアの声に冒険者達は怯み、デビルバット達も眩しさ等で動きが鈍くなった。
空中で羽ばたきながらその場から動かず、エリアを怖がるように空で後退りするデビルバット。
そんな状況を他所にレイはレイで杖を構えながら詠唱をしていた。
「輝きの罪、雷の束縛、汝の罪に絡まれ沈め!――ライトニング・チェーン!」
レイが杖を掲げると、その杖の先端から雷の鎖が一気に伸びた。
そして冒険者達や近くを飛んでいたデビルバットに絡まると、その電撃が彼等を襲った。
「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
『キィィィィィィ!!?』
雷の鎖にやられて真っ黒コゲになる冒険者達と、空から落ちてくるデビルバットの群れ。
それを見て冒険者達は思わず後退りする。
「な、なんだこのガキ! なんて魔法を撃ちやがる!?」
「ひ、怯むな! 接近戦に持ち込めば魔導士なんて一捻りだぜ!!」
そう言って剣を持って一人の冒険者がレイへと向かって行った。
それを見て、レイは無表情のまま杖を振りかぶり、冒険者が目の前で剣を振り上げると同時だった。
「レイちゃんストライク!!」
「ほげぇ!!!?」
まるで鋼鉄のこん棒でも振るったかの様に、レイの杖は冒険者の剣をへし折り、そのまま腹部へとめり込んだ。
そして、そのまま冒険者は白目と涙を流しながら吹き飛んでいき、他の冒険者を巻き込みながら壁に激突して倒れた。
「賢いレイは考えた。魔導士の弱点が接近戦なら接近戦に強くなれば良いと」
そう言ってレイは指でVサインをして満足そうにドヤ顔をすると、そんな彼女を見て冒険者達は恐怖で腰を抜かした。
「ひえぇぇ!! 化け物じゃねぇか!?」
「リーダー! コイツ等強すぎだ!?」
「どうすりゃ良いんだ!! 上には魔物! 下には馬鹿強い連中が――」
「怯むな!!! 数で押せ! そうすりゃ余力も尽きるだろ!! 下がる奴は俺が殺す!!!」
臆するメンバー達にガイルの檄が飛んだ。
それを聞いて冒険者達は行けば地獄、下がれば地獄の状況となるが最後はガイルを選んだのだろう。
残ったメンバーで集まり、エリアとレイを囲み始めた。
「二人共!?」
それを見てルイスは思わず立ち止まったが、それをガイルは見逃さなかった。
「テメェの相手は俺だ! ダンジョンマスター!! 奥義・剛風曲刀戯!!」
ガイルは二本の巨大ナイフに風を纏わせると、ブーメランの様にしてルイスへと投げつけてきた。
高速回転しながら風を切ってルイスへと向かうナイフに、ルイスはガントレットブレードを構え、刃をグラビウスへと変えた。
「グラビウス――重壁!」
ルイスがガントレットブレードを目の前に向けると、ルイスの目の前に彼を守る様に重力の壁が出現した。
その重力の壁に近付いたナイフは回転がゆっくりとなる中、重壁の前でUターンすると、そのままガイルへと再び高速に動いて向かって行く。
そして、そのナイフが彼へと近づき、彼を斬るかと思われたが――
「甘いわ!!」
彼は難なく高速回転するナイフをキャッチした。
そして再び構え直し、刀身へ風を纏わせながらルイスを睨みつけたが、すぐに笑みを浮かべた。
「随分と面白い得物を持ってるじゃねぇかダンジョンマスター! 魔剣の類だな、そりゃ……!」
「良く気付くね……目利きは良い様だ」
「目利き? いや、違うな……《《同類》》だからさ!」
ガイルはそう叫ぶと、自身の腰から一本の刀身が横に広いブレードを取り出した。
そのブレードは風を既に纏っており、鳥の爪の様な装飾や、翼の様な模様が刀身に刻まれていた。
「まさか……魔剣か?」
それを見た瞬間、ルイスもすぐに気付いた。
力量の瞳で見た限り、ガイルの魔力とは違う魔力が刀身から溢れていた。
そしてルイスの驚いた様子にガイルは、その魔剣を振りながら答えた。
「その通り! <風の魔剣ガルダ>だ! 俺様の持つ宝で最高の得物よぉ!」
「魔剣ガルダ……!――《《ガイア》》!」
ルイスは魔剣ガルダを見て、すぐにもう一方のガントレットブレードを魔剣ガイアへと変化させた。
重力の魔剣・グラビウスと大地・大樹の魔剣・ガイア。
その二本の魔剣を持ってルイスはガイルへと対峙した。
また、そんなルイスを見てガイルは驚きの顔をするが、すぐに再び笑みを浮かべるのだった。
「おいおい……一体、何本魔剣を持ってんだ? しっかし、こりゃ当たりだな! お前を殺せば、その魔剣が俺様の物になるんだからなぁ!」
「やってみろ……+Level5」
ルイスはガイルを睨みながら『+Level5』を発動させると、ルイスのレベルはガイルの<44>レベルから+5した<49>へと上がる。
それに伴い、ルイスの肉体から魔力が漏れだすと、それを見たガイルの目が大きく開いた。
「テメェ……! 俺様よりもレベルが上なのか!」
「……レベルなんて関係ないさ。大事なのは経験だ」
額から汗が流れるガイルだったが、ルイスは至って冷静な声でそう言った。
聞いているだけで落ち着く声量のルイス。その声を聞いたガイルは汗を腕で拭って笑みを作った。
「ハッ!――同感だぜぇ」
そう言って右手で魔剣ガルダを、左手にナイフを持って身構えるガイル。
ルイスもそれに合わせて腰を低くして身構えた。
そして何を切っ掛けにしたかは分からず、不意に二人は飛び出すと両者の魔剣はぶつかった。




