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俺のスキルは<剣技:->(いち)!  作者: 日之浦 拓


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強さの秘密

「あの、平人さん? どうしたんすか?」


「うるせぇ! 少し黙ってろ!」


「ヒッ!? す、すみません!」


 多寡埼ダンジョン、第一四階層。苛立つ平人に怒鳴りつけられ、取り巻きの桐央が身を震わせて悲鳴を上げる。最近はずっと機嫌がよかった平人が突然こうなった理由は、当然さっき見た祐二が原因である。


「どういうことだ!? 何で皆友の野郎がいきなり強くなってんだよ!?」


 ほんの一〇日ほど前、平人のスキル<魔剣技>は、長い雌伏の時を経て遂にレベル三になった。それにより一気に強くなった平人は、今まで散々煮え湯を飲まされてきた祐二より、自分の方が明確に上になったことを自覚した。


 そしてその自覚は、決して間違っていなかった。剣一がパーティから抜けたことで落ち目になった祐二の戦いは精彩を欠くしょぼくれたもので、自分の魔剣技に比べたら取るに足らないものでしかなかったのだ。


 なので気持ちよくマウントをとり、ついでに恋人も寝取ってやれば二重の意味で気持ちよくなれるだろうと今日も祐二を馬鹿にしに来たというのに……そこにあったのは数日前とは明らかに違う動きをする祐二の姿だった。


「おかしいだろ!? どうしてたったの四、五日でいきなり強くなる!? 一体どんなイカサマしやがったんだ!?」


「皆友のスキルレベルがあがったとかじゃないんですか?」


「んなわけあるか! この馬鹿が!」


「ひえっ!? ご、ごめんなさい!」


「……チッ、もういい」


 頭を抱えて怯えるもう一人の取り巻きの連に、平人は軽く舌打ちをしてから視線を逸らし、頭の中でその言葉を否定する。


(そうだよ、スキルレベルがあがったにしちゃ弱すぎる(・・・・)。でもだからこそありえねー)


 スキルレベルの上昇は、それこそ今までの全力がガキの遊びだったのだと思わせるくらい段違いの力をもたらす。だがさっき見た祐二の実力は、そこまで上昇しているようには見えなかった。


 そして、だからこそおかしい。スキルレベルがあがったわけでもないのに突然大幅に強くなるなどという現象を、平人はこれまで聞いたことがない。


(いきなり強くなったって言うなら、絶対何か仕掛けがあるはずだ。そいつを見つけて……奪ったら? あの地味眼鏡があれだけ強くなるなら、俺に使えばもっと爆発的に……それこそスキルレベルが上がったときくらい強くなるんじゃねーか?)


「…………おい、お前ら。ここ最近、皆友が何処で何してたか調べろ」


 ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた平人が、取り巻き二人に声をかける。その命令に否を言えるはずもなく、取り巻き二人は早速動き出したわけだが……





「えっと……報告っす。平人さんに言われた範囲での皆友の動きっすけど、俺達と会った次の日はダンジョンに行かなかったみたいっすね。で、その次の日は行って、次の日は休み。そのあと二日連続でいって、そこで二日目に俺達がまた見つけた……って感じみたいっす」


「…………あ?」


「ひえっ!? な、何すか?」


「何すかじゃねーよ! 何だよそのクソの役にも立たねー報告はよぉ!」


 五月一三日。とある理由で無人になった雑居ビルの一室といういつものたまり場で桐央の報告を聞いた平人が、苛立ちに任せて近くの椅子を蹴っ飛ばす。


「ダンジョンに入ったら休みを挟むなんて、当たり前すぎんだろ! それを俺に報告してどうしようと思ったんだ? あ?」


「す、すみません! でも、俺達が調べられるのなんて、このくらいっすよ!」


「そうですよ平人さん。まさかダンジョンのなかで何してたかなんて調べようがないですし」


「チッ……」


 言い訳がましい二人の言葉に、平人は思い切り舌打ちをする。だが実際特に有名というわけでもない個人を、その手のスキルを持っているわけでもない素人が調べようとしたら、わかることなどこの程度が限界なのは当然なのだ。


 あるいは平人のように遠くから祐二達を見ていた者もいる可能性はあるが、毎日数え切れない程利用者のいる多寡埼ダンジョンのなかで、特定の時間帯、階層で活動している冒険者を特定して話を聞くなど、それこそ高額報酬を支払って本業に依頼しなければ不可能だろう。


「あ、でも……」


「何だ?」


 と、そこで何かを思い出したように連が口を開く。平人がギロリと睨み付けると、連は軽く怯みながらも話を続けた。


「いえ、大したことじゃないんですけど、俺達と会った次の日、皆友のやつ友達の家に遊びに行ったみたいですね」


「友達ぃ? 休みの日に友達の家に遊びに行くのが何だってんだよ」


「その友達ってのが、蔓木らしいんです」


「……蔓木?」


 何一つ意外性のない連の報告に更に苛立ちを募らせる平人だったが、そこで初めてその表情が動く。だがそれに気づくことなく、桐央が連に話しかける。


「蔓木って、皆友が連れ回してたパシリだろ? スキルレベルが一から上がらないってクソザコの。それがどうしたんだよ?」


「いや、だっておかしくないか? 足手まといだからってパーティ追い出したやつの家に遊びになんて、普通いかないだろ?」


「そりゃまあ、確かに……平人さん、どうっすかね?」


「ふむ……」


 二人の話を聞いて、平人が考え込む。ここに来て初めて、考えるに値する情報が出たからだ。


(足手まといの家に、わざわざ遊びにいった? 何でだ? 蔓木が金持ちっていうなら別だけど、そんなことなかったよな? 何だろう、何か引っかかる……)


「それにそもそも、どうして皆友と蔓木はパーティを組んでたんだ? いくら幼馴染みとはいえ、皆友がレベル二の頃ならともかく、流石に三までなったらその時点で見切りをつけるだろ」


「さあなぁ。あ、ひょっとして天満ちゃんが贔屓してたとか? 表では皆友の付き合ってるけど裏では蔓木と浮気してて、それがバレてブチ切れた皆友が追い出したとか?」


「それなら尚更遊びにはいかないだろ……本当に桐央は馬鹿だな」


「何だよ、うっせーなぁ! でもそんな理由でもなきゃ、レベル一の奴を連れて三〇階層なんていかねーだろ!? 皆友がスゲー強いっていうなら別だけど、この前見た感じじゃそれほどでもなかったし」


(っ!?)


 流れてくる雑談に、平人がハッと息を飲む。


(そうだ、おかしい。だって三〇階層だぞ!? いくら天満の<回復魔法:二>があるからって、皆友の<槍技:三>で、三〇階層なんていけるわけねー。なのにあいつら、どうやってそんなとこで安定して狩りしてたんだ? 足手まといまでいて…………)


 平人の頭に浮かんでいたモヤモヤが、緩く集まり形を作っていく。そうして浮かび上がるのは、一見すると荒唐無稽、だが一本筋の通ったように感じられる結論。


(足手まといの蔓木がいなくなってすぐ、皆友はまるで最初からやり直すみたいに第一階層からダンジョンを再攻略し始めた。で、今は一五層……俺が見た限り、強くなる前の皆友の実力が精々そのくらいの階層相当だった。


 蔓木が抜けたせいで弱くなった? 蔓木を連れてると強くなる? あの足手まといが、実は足手まといじゃなかったってことか……!?)


「おいお前ら、今度は蔓木のことを調べてこい」


「へ!? またっすか!?」


「平人さんの命令ならやりますけど、正直今回と同じようなことしか調べられないと思うんですが……」


「安心しろ、今回は俺も動いてやる。必要ならいくらか金を握らせても……それに兄貴のコネも使うか」


昭人(あきと)さんのっすか!? それならまあ……でも、いいんすか?」


「いいさ。ここで当たりが出りゃ、兄貴だって文句言わねーだろ」


 問う桐央に、平人はニヤリと笑って答える。


 取り巻き二人に任せたところで大した情報は得られないのは既にわかっている。だが兄のコネを使えば、本来なら手に入らないような情報も得られる。


 それに昭人もまた平人と同じく、くだらない倫理観に縛られたクズとは違う。成果さえ出せば大抵のことは許容するし、きっちり評価して報酬も出し惜しまない。


 ならばこそ、ここは大きく賭けるべし。平人は自分の勘に従ってそう判断すると、早速その腰をあげた。


(へっへっへ、見てろよ皆友。お前の秘密も女も、全部俺が手に入れてグッチャグチャにしてやる)


 別に深い因縁があるとかではなく、単に自分の上に同世代の冴えない奴がいるのが気に入らないだけ。そんな浅い理由で生まれた恨みを胸に、平人は暗い笑みを浮かべるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 あっ…(察し どうしてこういうバカって自ら虎の尾をスキップして踏みに行こうとするんですかねぇ…まぁ踏むのは虎どころか竜のものになるでしょうがww そこそこの境遇で我慢…
[一言] なろう系でよく出てくる読者をスッキリさせる役割の悪役キャラ、実際にこんなやついるんかな? スキルのある世界ならいるんかな。。
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