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 バースの手配した馬車に揺られ移動すること数日。

僕たちは、シャルロッテが予言したひだまりの村に到着した。


***


 ひだまりの村は、辺境に位置する小さな村だ。穏やかな空気が流れるのどかな村だが、周囲は外敵の侵入を防ぐための木の柵で覆われていた。


「この天使像――予言で見たものに間違いありません!」


 ひだまりの村の入り口には、まるで村を守るように二体の天使像が誇らしげに佇んでいた。全長二メートルほど石像であり、見ようによっては村を慈しむようにも見える。


「すごい立派な石像ね。ちょっと異様な気もするけど……」


 ティアは困惑したように石像を見上げていた。


「天使信仰が根付いた村――この村では、みんな天使を崇めてるんだよね?」


「はい。そう聞いています」


 馬車の中で、シャルロッテから事前に聞いていた情報だ。

 天使信仰――それは、世界を生み出したとされる女神ではなく、神が遣わした天使を信仰する考え方のことだ。

 女神とは、僕たち人間にスキルを与える存在である。無くてはならない存在として教会は女神を祭り上げていたし、多くの国民にとって女神は重要な信仰対象であった。そんな女神ではなく、天使を崇める辺境の者を、教会は”異教徒”と呼び蔑んでいる。

 僕たちが訪れたひだまりの村は、教会から異教徒と認定された者が暮らす村なのだ。


「まずは中に入って話を聞きましょう」

「そうだね。ここで何かが起こることは間違いない――気を引き締めて行こう」


 ティアの言葉にうなずき、僕は改めてそう気合を入れる。

村の入り口にある天使像の間をくぐり抜けようとしたとき――


『Flag Event: Key NPC Princess,Arrive ... Success(キーとなる──到着を───認証───) 』


 突如として、異質な声が脳内に響き渡った。


「ッガ⁉」

「お兄ちゃん⁉」

「リーシャも聞こえた?」



 勢いよく振り返ったリーシャが、思わずといった様子で声を上げた。

 耳につく無機質な声だ。強いて言うならチート・デバッガーが発動するときに聞こえる声に近しい声。しかし人間味のない不気味な声。


『Access: Event Start. Village of sinners. (──罪人の村――イベン──トを──開始──)』


「アレスもリーシャも、どうしたの?」



 隣を歩いていたティアは、不思議そうな顔で僕とリーシャを見やる。

 どうやらこの声は、ティアには聞こえていないらしい。


「リーシャ、何が起きたか分かる?」


「分からない。分からないけど──嫌な感じ。警戒だけはしておいた方が良いと思う」


 リーシャは、ぶるっと体を震わせた。

 ……どうしてリーシャには、この声が聞こえたのだろう?


「お兄ちゃん?」


 不安そうに僕の腕にしがみつくリーシャ。

 何か、とてつもなくまずいことを引き起こしてしまう予感。明文化はできないけれど、喉の奥に小骨が引っかかったような違和感があった。


「行こう。何が起きても対応できるように警戒はしておこう」


 だとしても僕たちは、この村の調査に来たのだ。

 放っておけば、この村は滅びるのだ――進むしかない。

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