67.
「なんで、ブレイズキャットが魔法を使うんだよう⁉」
「だから言ったじゃないですか、変異種だって!」
「ひ、ヒィィ。助けてくれ~!」
このまま放っておく訳にもいかないか。
『一閃!』
僕は、ブレイズキャットの群れに突っ込み、モンスターたちを薙ぎ払った。
「ジギールさん、こっちです!」
「俺を、助けてくれるのか?」
「当たり前です! さあ、早く!」
「おまえ、凄い奴だったんだな!」
ジギールが目を見開き、僕の手を取った。
その瞳には圧倒的な強者を前にしたかのような憧憬の色が覗く。
「アレス、気をつけて。囲まれてる!」
後ろの方で、ティアが悲鳴のような声をあげた。
「す、すまねえ。俺が不甲斐ないばっかりに!」
「謝罪は後です!」
ジギールは、すっかりしおらしくなっていた。
警戒しながら周囲を見渡すと、周囲にはブレイズキャットが集まっていた。まるで獲物がかかるのを待っていたように――狡猾なモンスターだ。
だけどこれぐらいなら別に……、
「ちょっと数が多いね――ビッグバン!」
ドギューーン!
僕が魔法を発動すると、集まっていたブレイズキャットの集団を巻き込むように超巨大な爆発が発生する。
「――は?」
「今です、走って!」
「あ、ああ……」
一瞬、ジギールは呆けた顔をしていたが、すぐに我に返って走り出した。
必死に走り抜け、ティアたちが待つ安全な場所までたどり着き、
「ぜぇ、はぁ……。助かった」
ジギールは崩れ落ちるように座り込むのだった。
ブレイズキャットの群れは、僕たちに狙いを定めたようだった。一度追い詰めた獲物は、決して逃さないという強い意思が感じられた。
それだけでヒィ、っと腰を抜かすジギールを余所に、
「おつかれ、アレス。さてと――」
ティアは場違いに呑気な声で、こんなことを言う。
「次は私が行く番ね。アレス、いつものお願い!」
「了解! 『バーサク剣姫!』」
僕は、ティアに固有の支援効果を付与した。
防御を代償に攻撃力を大きく上昇させる効果で、最高火力はドラゴンの鱗すら貫く。もっとも威力が絶大な分、リスクも大きい。出来ることなら使ってほしくないけど、使いこなすことを他でもないティアが強く望んだのだ。
ティアは今もメキメキと剣の腕を上達させている――頼もしい限りだ。
「お、お嬢ちゃん。まさか本気で一人で挑むつもりなのか?」
「ちょっと体を動かしたい気分なのよ」
ティアはレイピアを手に取り、舞うようにモンスターに踊りかかった。縦横無尽に駆け巡り、みるみるうちにブレイズキャットは数を減らしていく。
「な……⁉ おまえたちは一体?」
ぺたりと座り込んだまま、ジギールはあ然とつぶやいていた。
「――あれなら、ティアは大丈夫そうかな」
「お兄ちゃん? どうしたの?」
僕の呟きに、リーシャが怪訝そうに僕を見た。
「いや、気になることがあってさ。バグ・モンスターなんてそう現れるものじゃない――となると怪しいのは……、『バグ・サーチ!』」
僕が発動したのは、周囲で『バグ』の気配を探知するコードだ。
バグ・モンスターは、そう頻繁に現れるものではない。このバグ・モンスターが人為的に生み出された可能性を、僕は疑っていた。
「まさか……、さすがに考えすぎじゃ?」
戸惑ったように首をかしげるリーシャだったが、
――――――――――
【コード】バグ・サーチ
半径500メートル以内にバグを発見しました
――――――――――
表示されたのは、そんな文言。
「――やっぱりッ!」
「それじゃあ?」
「この辺に、他にもバグがあるみたい! みんなはここで待ってて。いざというときは、ティアのアシストをお願い!」
バグ・サーチ、それはバグがある方向を矢印で指し示してくれるコードだ。僕はコードに導かれるように、バグがあるという方向に向かって走り出した。






