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ニコニコ漫画様にて、チート・デバッガーのコミカライズが始まりました!


作画は、かん奈先生です。

とても面白いので、是非是非お読みいただけると嬉しいです!!

 ティバレーの街を出発した僕たちは、今日も世界の果てを目指して旅を続けていた。

 師匠がついぞ見ることは敵わなかった世界の果て。誰も見たことがない景色に、僕はずっと憧れていた。世界の果てが見たい――次期領主の僕が公言できるはずもない馬鹿けた夢だ。胸に秘めたまま眠っていた夢だが、実家を追放されたのをきっかけに追いかけることを決めたのだ。

 今、目指しているのはフェジテ砦。魔族領と人間領の境目にある砦であり、世界の果てを見るためには避けては通れない場所だった。


 「ねえアレス……。フェジテ砦まで、どれぐらいかかるの?」

「人類が住める最東端なんて言われてるしね。ここからでも一ヶ月はかかるよ」

 

 最初はうきうきしていたティアも、馬車での移動が続きうんざりした様子だった。

 ティアは実家を追放された僕を追いかけてきた婚約者であり、共に世界の果てを目指す大切な仲間である。【氷の剣姫】と呼ばれる凄腕の冒険者であり、大災厄の際には時間稼ぎと言いながらドラゴンを一人で倒すという離れ業をやってのけている。


「ティア、大丈夫?」

「うう……。昔から馬車だけは駄目で……」


 そんな凄腕の冒険者であるはずのティアは、今は馬車に揺られながらくてーっと辛そうに座り込んでいた。どことなく顔色が悪い。馬車旅が続き、すっかり酔ってしまったようだ。

 そんな彼女を心配そうに見ていると、


「ティアお姉ちゃん! こういうときは横になった方が楽なんだよ!」


 小さな少女が、ぴょこっと顔を覗かせた。

 彼女の名はリーシャ。前世で僕と同じチート・デバッガーのスキルを持ち、世界を破滅に導くバグとの戦いに身を投じた少女である。今世では僕の妹として生まれ、デバッガーとして僕を導く役割を持っていた。

 かつて世界の命運を握っていた少女は、今は馬車の中で無邪気に目をきらめかせている。


「横になれるならなりたいけど、そんなスペースないし……」

「そうだ。ティア様、ティア様、せっかくなので――」


 良いことを思いついた、とばかりにメイド姿の少女がティアに何やら耳打ちした。彼女の名はリナリー、元は僕の実家であるアーヴィン家に勤めていたメイドであり、実家に見切りを付けて僕を追いかけてきた少女だ。


「ティア様、膝枕です、膝枕。チャンスですよ!(ごにょごにょ)」

「なっ⁉ そ、そんなはしたないこと!」

「なら私がお兄ちゃんの膝の上に移動する~!」

「な⁉ ちょっと!(ずるい⁉)」


 何やら葛藤していた様子のティアだったが、ちらちらっとこちらを見ながら、


「アレス、その……。少しだけ膝を貸してもらっても――」

「良いよ。良くなるまで少し休んでると良いよ」


 体調の悪そうなティアを見ているのは辛い。それぐらいならお安いご用だ。


「そ、それじゃあ――」


 なぜか真っ赤になったティアが、こてりと頭を預けてきた。


「ど、どう?」

「な、なんだか緊張して酔いも一気に冷めたわ」

「え?」

「な、何でもない!(私ったら何を……!)」


 ティアはぷいっと顔を逸らす。


「ねえ、アレス? いっそ、そのインチキスキルで瞬間移動とか出来るようにならないの?」

「インチキスキルって……。どう思う、リーシャ?」

「う~ん、デバッグコンソールの方なら出来るかもしれないけど……」

「できるのね!」


 パッと顔を明るくするティアだったが、


「瞬間移動のコードはものすごく複雑らしいの。師匠も危険過ぎて試しては無いって。人体がバラバラになったり、地面に埋まって二度と帰って来られないかも」

 リーシャの返答は、そんな聞くだけで不安になるもの。

「駄目じゃない」


 希望を打ち砕かれ、ティアは死んだ目になった。

 リーシャの師匠は、アルバスという凄腕の能力者だ。僕より遥かにスキルには詳しいはずで、そんな彼が断念したものに挑むのは無謀だろう。


「ティア様、無理なさらずゆっくり休んで下さいませ」

「ありがと、リナリー。うう……、みんな平気そうで羨ましいわ」


 うう、と唸り声を上げるティア。

 ――前途多難であった。

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