表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/94

50

 リーシャも詳しくは知らない大災厄の詳細。

 どんな現象なのか想像もつかない。



「大災厄って何なんだろうね? あいつの口ぶりからすると、意図的に起こせるものなのかな?」

「バグを利用して起こせる現象なのかしら。どちらにせよ、ろくなものではないでしょうね」


 僕の疑問に、ティアもそう呟く。

 リーシャが言うには、世界を生み出した女神様が、避けなければならないと口にする何か――それが大災厄だ。


「まずは、あいつを見つけないと話にならないか。でも、どうやって……?」

「ううん。アルバスはお兄ちゃんに挑んでくるよ」


「どうしてそう思うの?」

「アルバスは、お兄ちゃんに宣戦布告した。なら、お兄ちゃんと、正面からぶつかることを選ぶと思うんだ。大災厄は絶対にお兄ちゃんの前で起こると思うよ」


 だから止めるチャンスは、絶対にあるはずだと。

 リーシャは確信に満ちた様子で呟いた。

 僕ならどうにかしてくれるはずだという、信頼に満ちた眼差しも。

 


「僕たちは、どうするべきかな。大災厄なんて、備えようもないよね?」

「そうね……。そんな大規模な事態に、私たちだけで挑むのも無理がある。いくらアレスでも、限界があるもの。だから――何が起きても良いように、戦力を集めるべきよね」


 ティアは考え込むように腕を組み、そう呟いた。

 何が起きても対応できなように、まずは戦力を整えるべき。

 ティアの言葉は、正論ではあるが……



「そう言われても、僕たちが声をかけられる人なんて……」


 所詮、僕はただの冒険者だ。

 次期領主として期待されていた時ならともかく、今の僕に出来ることはたかが知れている。



「困ったね……。こんな不確かな話、とても信じてもらえるとは思えないよ」

「今さら何言ってるのよ、アレス。あなたは自分が思ってるよりも、ずっと信頼されてる。……そうね、明日は、朝一で冒険者ギルドに向かいましょう?」


 自信のない僕とは対照的に、ティアは晴れやかな笑みを浮かべた。




◆◇◆◇◆


 翌日、冒険者ギルドに向かった僕たちは、受付嬢にクエスト報告していた。



「おつかれさまです、アレスさん。Sランクダンジョンの探索依頼の調子はどうですか?」

「安心してください。今では、すっかり元通りです」


「はあ!? たったの1日で解決してしまったんですか!?」


 予想もしていなかったと、受付嬢は目を丸くする。

 しかし、僕たちが浮かない顔をしているのを見て、表情を改めた。



「その――信じがたい話かもしれませんが……」


 そう言い、僕は切り出した。

 ダンジョンの最奥部で、FランクダンジョンをSランクダンジョンに変貌させた人間が居たことを。

 元のFランクダンジョンに戻ったのは、そいつが能力を解除したからで、次は「大災厄」という未知の危機が訪れるということを。



「あいつが口にした大災厄というのは何か分かりません。それでも、僕たちだけで手に負えるものだとは思えないんです」

「ダンジョンの最奥部でそんなことが……」


 受付嬢は考え込むように言うと、


「私には手が余りますね――少々お待ちください。ギルドマスターを呼んできます」

「信じてくれるんですか?」


「当たり前じゃないですか!」


 食い気味に返してくる受付嬢。



「私たちのギルドが、どれだけアレスさんたちにお世話になったことか。アレスさんたちの凄さは、嫌というほど知っています。アレスさんたちの手に負えないなら、世界中の冒険者が一丸になって立ち向かうべき事態です」


 そんなあまりにも大げさな評価と共に。

 僕たちは、ギルドマスターの執務室に通された。



「実は――(ごにょごにょ)」

「あのアレスさん達ですら、手に負えない可能性があるのか」


 ギルドマスターの判断は早かった。


「分かった。すぐに全国の支部に呼びかけて、各都市の冒険者ギルドから、精鋭を派遣してもらうことにしよう」


 即座に伝令役を呼び出す。

 各地の冒険者ギルドに連絡を取るよう、テキパキと指示を出す。

 1人でも多くの腕に覚えのある冒険者を、派遣してもらうためだ。



「すぐに緊急クエストを発令しよう。腕にある者は出来るだけ参加! 何が起きても対応できるよう、幅広い戦力を集める必要があるな」

「近くの冒険者も、集まってくるでしょう。指揮を取れる者も、必要になりますね」


 ギルドマスターと受付嬢は、テキパキと話を進めていく。



 信じがたい話だと思っていたのに。

 どうやって説得しようかと悩んでいたのが嘘のように、どんどん話が進んでいく。


「ありがとうございます。まさか信じていただけるとは――」


「アレスさんの、これまでの功績を考えれば当たり前です!」

「そうだとも。大災厄などという前代未聞の危機――あらかじめ知らせてくれたことに感謝する」


 深々と頭を下げるギルドマスター。


「だから言ったじゃない、アレス。あなたは、自分が思ってるより信頼されてるって」

「さすが、お兄ちゃん!」


 呆然とする僕に、ティアが当たり前のような顔でウインクし、リーシャはぴょんと僕の背中に飛びついた。

 リナリーはそんな様子を見て、どこか誇らしそうな顔をしている。



 そうして、ギルドマスターの執務室を出た僕たちを迎えたのは、


「アレスさん! 私たちにも何か出来ることはあるか?」

「あなたたちに、何度も救われた命です。今度こそ、恩返しをさせて下さい!」

「アレスさんたちと共に戦えるなんて光栄です!」


 こちらに熱心な視線を飛ばす冒険者たちだった。

 ロレーヌさんたちを筆頭に、僕たちを取り囲まんばかりの勢いだ。



「はいはい、散った散った! 今から緊急クエストを発令します。受ける方は、こちらにお願いしますね!」


 そんな光景を予期していたかのように、パンパンと受付嬢が手を叩いた。

 何ひとつとして、たしかな情報もなく。

 報酬すら提示されていないのに、我先にと冒険者たちはクエストを受注しようとしていた。



「あ、君たちはあの時の――!」


「はい、アレスの旦那! 覚えていて下さったなんて、光栄です!」

「アレスさんのおかげで、凄腕の傭兵と呼ばれて(おご)っていた自分に気が付いたんだ。修行し直して戻ってきた力――是非とも、役立ててくだせえ!」


 それはカオススパイダーと戦う前に、僕とティアに絡んできた凄腕傭兵の2人組だった。

 あの時の態度とはうって変わって、僕のことをキラキラした目で見ている。


「ど、どうしちゃったのよ。あんたたち……」


 ティアは、ちょっぴり引き気味だった。



 突如、発令された緊急クエスト。

 普通なら敬遠されそうなクエストも、アレスの名前を聞きつけた多くの冒険者が、率先して受注したという。

 そうしてティバレーの街に居る冒険者はもちろん、近くの都市からもベテランの冒険者が集まってきて、大災厄と呼ばれる「何か」に立ち向かう体制が整っていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼ コミカライズ版チート・デバッガー、ニコニコ漫画で連載中です! ▼

コミックのバナー

▼ 書籍も発売中! ▼

表紙
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ