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「どうしますか? もう少し進みますか?」

「ああ。記憶違いかもしれないしな」


 そうして更なるダンジョンの奥部に突き進む僕たち。


 しばらく進むと、これまで見たことがない巨大なモンスターが現れた。

 巨大なこん棒を持つ一つ目の敵だ。



 とりあえず僕は、いつものように『ユニットデータ閲覧』を放つ。


――――――――――

【コード】ユニットデータ閲覧

名称:ダンジョン・サイクロプス(LV56)

HP:963/963

MP:142/142

属性:耐性→物

▲基本情報▼

――――――――――


 な、何これ……?


 僕は目を疑った。

 バグ・モンスターではないが、これまでの敵とはステータスが格違いだ。

 これまでのように盾役の冒険者が、サイクロプスの前に立ちふさがる。



『プロパゲーション!』


 まるで流れ作業のように。

 所詮はFランクダンジョンだという油断があったのかもしれない。



「やばい相手です! 気を付けてください!」

「へ? いきなり何だ!?」


 サイクロプスは巨大なこん棒を振りかぶって、冒険者に向かって振り下ろした。

 盾役の冒険者はいつものように受け止めようとしたが、押さえきれずに壁に叩きつけられる。



「『アイテム所持数の増減――エクスポーション!』 ロレーヌさん、これを使ってあげて下さい!」

「は、エクスポーション!? そんなもの、いったいどこから!?」


「疑問は後です。僕はあいつをどうにかします!」

「単独であれに挑むつもりか!? 自殺行為だ、アレス!!」


 このままではパーティ全体に大きな被害が出る。

 ロレーヌさんが悲鳴のような声を上げたが、僕は無我夢中だった。



 サイクロプスは冒険者にとどめを刺そうと、こん棒を振り上げた。

 急な事態に誰も動けない。

 僕はアイテムをロレーヌさんに押しつけ、咄嗟(とっさ)にサイクロプスに向かって走り出した。



 頼るのは『極・神剣使い』のスキルだ。

 ダンジョン内の敵を相手に振るうことで、スキルレベルは6に到達していた。



『虚空・裂斬!』


 飛び上がって剣を振るう。

 その一撃は、こん棒を持つサイクロプスの腕をスパっと切り落とした。



 ギャアアアアアア!


 ダンジョン内にサイクロプスの絶叫が響き渡る。



――――――――――

名称:ダンジョン・サイクロプス(LV56)

HP:921/963

――――――――――


 じょぼじょぼっと音を立てて、サイクロプスの腕が生えてくる。

 大して効いていない――やっぱり物理耐性が厄介だ。

 出来る限り威力が高い属性攻撃をぶつけたい――かといって、このダンジョンの中で、ビッグバンやブラックホールを撃つのは、壁が崩れ落ちる可能性がある。




「あ、アレス。私の攻撃なら効くと思う?」

「試すにはあまりに危険だよ。ティアは下がってて?」


 不満そうな顔をしつつも、ティアは僕の後ろに下がった。

 相手はレベルが56もある化け物だ。

 下手すると1撃が致命傷になりかねない。



 僕は打開策を練る。

 何も僕が使えるのは「極・神剣使い」だけではない。

 攻撃が効かないなら、戦い方を柔軟に変えるべきだ。


――――――――――

【コード】スキル付け替え

※選択可能なスキルは以下の通りです。

 → 極・神剣使い(SKLV6)

 → 極・精霊使い(SKLV1)※装備中

 → 極・装備技師(SKLV2)

 → ???(絶対権限(プライオリティ)13以上で解放)

――――――――――


――――――――――

【極・精霊使い】

SKLV1:中位精霊までを自由に召喚可能

――――――――――


 精霊使い――それは契約した精霊を使役して戦わせるスキルである。


 僕は『極・精霊使い』を選択し、自らに装着した。

 15歳で授かる将来を左右するスキルすら、今の僕ならワンポチで付け替えられるのだ。


 ギロリ。

 横槍を入れられたサイクロプスが、怒りに満ちた目で僕を睨みつけた。

 ぶっつけ本番だが、やるしかない。



「顕現せよ――『イフリート!』」


 僕が選択したのは中位の炎属性の精霊。

 極・スキルともなれば、最初から契約している精霊も、また強力だった。



 僕の声に答えて現れたのは、全身炎に包まれた炎の魔人。

 咆哮を上げてひとにらみするだけで、サイクロプスは怯えたように後ずさった。

 それから怯えたことを恥じるように、イフリートに向かって挑みかかったが――



 ガシッ!


 イフリートは振り下ろされたこん棒を鷲掴みにした。

 そのままサイクロプスに向かって、巨大な拳を叩きつける。



 バッコーン!


 それだけでサイクロプスは壁に向かって吹き飛ばされる。

 そうしてそのまま、光の粒子となって消え去った。


 あまりに圧倒的だった。




「ねえ、アレス。また訳の分からないことを……。何なのよ、それ?」


 あまりに一方的な戦いを前に、ティアが呆然と僕を見ていた。

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