ふわふわのいたずら ポンポン
まよい森の奥の奥、木々がひしめき合う場所に、ポンポンは住んでいました。
その体はふわふわと宙に浮き、丸い球のような形をしていて、触れるとふわっとほどけそうです。
小鳥やリスたちは、ポンポンのことを最初は驚きました。
「わっ、なんだこれ!?」
けれど、ポンポンが「ぽんぽんぽーん!」と跳ねると、森じゅうにくすくす笑いが広がり、みんなの警戒心はすぐに消えました。
ポンポンはとても自由で、じっとしていることが苦手です。
葉っぱの上にちょこんと座るよりも、木の間を跳ね回ったり、風に乗って宙を舞ったりするほうが大好きでした。
でも、自由すぎるその性格は、時には小さないたずらになってしまうこともありました。
ある日のこと。
ポンポンは森の小川の近くで、水を飲みに来た小鳥を見つけました。
「ちょっといたずらしてみよう」
ポンポンは、ふわりと舞い上がり、小鳥の目の前で小さな泡をつくりました。
小鳥はびっくりして羽をばたばた。ポンポンは楽しそうに「ぽんぽんぽーん!」と笑いました。
小鳥もやがて笑い出し、森の中に楽しい声が響き渡りました。
その日の午後、ポンポンは葉っぱのかくれんぼをして遊んでいました。
風に揺れる葉っぱの中に隠れ、ぴょんと跳ねては友だちの小リスや小うさぎを驚かせます。
でも、ポンポンは心の奥で、少しさみしさも感じていました。
森の中の誰かに見てもらいたい、触れ合いたい。
そんな気持ちがあったのです。
夜になり、森が暗くなると、ポンポンは森の入り口までそっと出てみました。
人間の足音を聞くたびに、胸がドキドキします。
でも、森に来る人間はほとんどいません。
ふわりと跳ねるポンポンの体は、月明かりの中でほとんど見えず、通りすぎた人は気づかないのです。
ある晩、森の近くでピクニックをしていた小さな女の子が、ふわふわと漂う光を見つけました。
「わあ、かわいい!」
ポンポンは思わずびっくりして跳ね上がり、少し隠れましたが、女の子は怖がらずに笑っています。
その笑顔を見たとき、ポンポンは心がふわっと軽くなるのを感じました。
「……ぼく、見てもらえたんだ……」
ポンポンは少し照れくさそうに跳ね、女の子の前に姿を見せました。
女の子は小さな手を差し伸べて、ポンポンをそっと撫でました。
「ぽんぽん……ぽんちゃん、だよね?」
ポンポンはその名前にぴょんと跳ね返し、嬉しさで体がふわふわ揺れます。
それから、女の子は毎日のように森に来て、ポンポンと遊びました。
葉っぱのかくれんぼをしたり、小川の水で遊んだり、夜の森で光の玉を追いかけたり。
ポンポンは、初めて自分の存在を誰かに喜んでもらえることを知ったのです。
森のほかのおばけたちも、ポンポンの変化に気づきました。
「ポンポン、楽しそうだね!」
ヒューの風がそっと森を吹き抜けると、葉っぱが笑うように揺れます。
パリィの葉っぱも、ポンポンの周りでふわふわ踊りながら、小鳥たちに挨拶しました。
そして、ポンポンは知りました。
自由に跳ねるだけじゃなく、誰かと心を通わせることで、森の中でさらに輝けるということを。
まよい森の奥深くには、まだまだ不思議なおばけたちがたくさんいます。
でも、ポンポンはもう、ひとりぼっちではありません。
森の仲間と、新しい友だちと、一緒に過ごす日々は、ふわふわとした光で満たされていました。
夜になると、月明かりの中、森じゅうに「ぽんぽんぽーん!」という小さな笑い声が響きます。
それは、まよい森の秘密の楽しさを知る者だけが聞ける、ふわふわのおばけのいたずらの音。




