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石壁の窓 女たちの視線

城の高楼、女たちの部屋。

古びた石壁に囲まれたその窓から、彼女たちは下の城門を見下ろしていた。


城門前には、シリを乗せた朱色と金で飾られた馬車が静かに止まった。


「ついに来られたわ」

ゴロクの第一妾 ドーラが静かに話す。


「お美しい・・・と評判の方ですよね。ゼンシ様の妹・・・」

プリシアが豊かな胸の前で手をギュッと握る。


「34歳でしょ。おばさんじゃない。もう子は成せない」

挑発的な言い方でフィルが話す。


マナトが馬車の扉を開ける。


現れたのは、金色の髪に白い肌の女性。


遠目から見てもわかる。


目を伏せただけで空気が変わるほどの威圧感を放つ女だった。


「あれが・・・シリ様?」

ドーラが息を呑むように言った。


彼女は27歳。

ゴロクの妾たちの中でも古参のひとりだった。


もうそろそろ子を成せない年齢に差し掛かる。


今でも胸に張りがあり、仕草ひとつで男を振り向かせられる自信があった。

だが、その自信が音を立てて崩れそうだった。


「シリ様は胸がまるでないわ!!そんな女、ゴロク様はすぐ飽きるわよ」

フィルが毒づき、張りがある豊かな自分の胸を大きく逸らした。


「フィルやめなさい」

ドーラの声は反論を許さぬものだった。



シリの後に、娘たちが登場した。

一番最初に馬車から降りたユウの姿を見て、一同息をのむ。


彼女の美しさは、すでに母に肩を並べる勢いだった。


「お子さんも・・・美しい方だわ」

プリシアが小さなため息をつく。


「まだあんな年で・・・なんだかイケすかない」

後ろにいたフィルが、嫉妬を隠しきれずに唇を噛む。


「フィル・・・」

過ぎた言葉を話すフィルを、プリシアが諌めようとする。


領民出身のフィルは何を言われても気にしなかった。


「あの子・・・すごく気が強そう」

プリシアが呟いた。


「母親以上ね、あの目つき・・・見た?」

フィルも目を細める。


「他の子たちは・・・まだ子どもね。可愛らしいけど」

ドーラが静かに目を伏せる。


「・・・でも、これからはあの子たちも家族になるのよ」

その言葉に、三人はそれぞれに複雑な表情を浮かべた。


「さあ、行くわよ」

最後にドーラが声を発し、部屋を後にする。


「これから、シリ様と姫様たちに挨拶に行くわよ」


その声には、女たちの矜持と、試される未来への緊張が滲んでいた。


次回ーー

三姉妹は母シリと重臣たちに迎えられ、ノルド城の現実を突きつけられる。

婚礼は明日――逃げ場はない。


和やかな挨拶が終わったその時、

扉の向こうから女たちの足音が近づいてきた。

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