表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

第7話「剣に選ばれる儀式で中二ポーズを要求された件」

神殿の最深部で♰滅びの剣♰を発見し神殿を出発してから、もう三十分が経過していた。黒い刀身を煌めかせる剣は確かに美しく、確かに太郎の中学時代の理想を完璧に体現していたが、一つだけ重大な問題があった。


「あの...救世主様?」


エリーゼが心配そうに声をかける。太郎は腰ある剣を腕組みをしたまま、険しい表情で立ち尽くしていた。


「なんか変なんだ...」「持てないわけではないけど、これを使って攻撃できない感じで...」


太郎は既に何度も剣に手を伸ばしていた。しかし、手が柄に触れた瞬間、まるで見えない壁があるかのように弾かれてしまう。物理的な力が働いているわけではない。ただ、剣が太郎を拒んでいるのだ。


「救世主様、もしかすると何かの条件があるのかもしれません」


アルフレッドが♰終焉の黙示録♰の第一巻を開きながら言った。彼はずっと聖典を手放さず、まるで攻略本を見ながらゲームをプレイしているかのような状態だった。


「条件?」


「はい。♰滅びの剣♰を真の所有者になるには、♰選定の儀式♰を行う必要があると書かれています」


太郎の背筋に嫌な予感が走った。中学時代の自分が考えそうな「儀式」など、ろくなものではないに決まっている。


「その...♰選定の儀式♰って、具体的には何をすればいいんだ?」


恐る恐る尋ねる太郎に、アルフレッドは聖典の該当ページを指差した。


「ここに詳しく書かれておりますが...『真の救世主は心の準備を整え、♰契約のポーズ♰を取ることで剣に己の覚悟を示さねばならない』とあります」


「♰契約のポーズ♰?」


太郎の声が裏返った。中学時代の記憶が蘇る。確か、主人公が伝説の武器を手にする場面で、かっこいいポーズを考えていたような気がする。しかし、当時は一人で妄想していただけだった。まさか他人の前で、それも真面目な顔をした仲間たちの前でやることになるとは。


「救世主様、どのようなポーズなのでしょうか?」


エリーゼが純粋な瞳で太郎を見つめる。その無垢な視線が、太郎の羞恥心をさらに刺激した。


「え、えーっと...」


太郎は記憶を必死に辿った。確か右手を上に、左手を下に...いや、違う。片膝をついて...でも、それも違ったような。


「あの、聖典にはもう少し詳しい説明は書いてないのか?」


「ございます」アルフレッドが頷いた。「『右手を天空に向けて高く掲げ、左手は大地を指差す。足は肩幅より広く開き、顔は斜め上を向いて決意を込めた表情を作る』とあります」


太郎の顔が真っ青になった。それは間違いなく、中学二年生の太郎が考えた「超かっこいいポーズ」そのものだった。当時は鏡の前で何度も練習し、一人で悦に入っていたポーズだ。


「さらに」アルフレッドが続ける。「『このとき、救世主は心の奥底から湧き上がる♰覚醒の光♰を剣に向けて放射せねばならない』とも書かれています」


「♰覚醒の光♰って何だよ...」


太郎は頭を抱えた。中学時代の自分の発想力を呪いたくなる。どうしてこんな恥ずかしい設定を考えたのだろう。


「救世主様?」


エリーゼが心配そうに近づいてくる。


「大丈夫です、救世主様」彼女は優しく微笑んだ。「きっと神聖で美しい儀式なのでしょう。私たちは救世主様を信じております」


その純粋な信頼の眼差しが、太郎の心を余計に苦しめた。こんな恥ずかしいポーズを「神聖で美しい儀式」だと思っているなんて。


「あの...もしかして、違う方法はないのか?」


「申し訳ありませんが」アルフレッドが首を振る。「聖典によれば、この方法以外に♰滅びの剣♰を手にする術はないとあります。『偽りの救世主は剣に触れることすらできず、真の救世主のみが♰選定の儀式♰を完遂できる』と」


つまり、このポーズをやらなければ剣は手に入らない。そして剣がなければ、この先の冒険を続けることもできない。太郎は完全に追い詰められていた。


「救世主様、お時間がかかっても構いません」エリーゼが励ますように言った。「心の準備が整うまで、私たちはお待ちいたします」


「そうですな」アルフレッドも頷く。「♰選定の儀式♰は神聖なものです。急いで行うものではありません」


二人の気遣いが、かえって太郎を追い詰めた。やらないという選択肢は、もはや存在しないのだ。


「わかった...やる」


太郎は覚悟を決めた。どうせやるなら、さっさと済ませてしまおう。これ以上考えても恥ずかしさが増すだけだ。


「本当ですか?」エリーゼが嬉しそうに手を合わせた。


「ああ。でも、あまりじろじろ見るなよ」


「承知いたしました」アルフレッドが神妙に頷く。「私たちは敬虔な気持ちで見守らせていただきます」


それが一番恥ずかしいのだが、太郎にはもう選択の余地はなかった。


「じゃあ...やるぞ」


剣が黒い光を放ちながら、まるで太郎を待っているかのように輝いている。


「まず、足を肩幅より広く...」


太郎は恥ずかしさに顔を赤らめながら、足を開いた。エリーゼとアルフレッドが固唾を呑んで見守っている。


「次に、右手を天空に...」


太郎はゆっくりと右手を上に伸ばした。指先を天井に向けて、できるだけ高く掲げる。


「左手は大地を指差して...」


左手を下に向ける。このポーズを取った瞬間、太郎の記憶が鮮明に蘇った。中学時代の自分が鏡の前で何度も練習していた、あの恥ずかしい記憶が。


「顔は斜め上を向いて...」


太郎は天井を見上げた。決意を込めた表情を作ろうとするが、恥ずかしさで顔が引きつってしまう。


「救世主様...」


エリーゼが感動したような声を上げた。


「なんと荘厳なお姿...」


アルフレッドも感嘆の声を漏らす。


太郎は心の中で絶叫した。荘厳でも何でもない、ただの厨二病ポーズなのに!


しかし、不思議なことが起こった。太郎がポーズを完成させた瞬間、♰滅びの剣♰が青い光を放ち始めたのだ。


「おお...剣が反応している」


アルフレッドが興奮した様子で呟く。


「♰覚醒の光♰ですね」エリーゼが手を合わせた。「救世主様の心から光が放射されています」


太郎は混乱した。♰覚醒の光♰なんて意識していないのに、なぜ剣が光っているのだろう。


「救世主様、今です!」アルフレッドが叫んだ。「そのまま剣に手を伸ばしてください!」


太郎はポーズを維持したまま、恐る恐る♰滅びの剣♰に手を伸ばした。今度は見えない壁に阻まれることなく、手が柄に触れる。


瞬間、激しい光が太郎を包んだ。


「うわあああああ!」


太郎は反射的に目を閉じた。光が収まったとき、彼の手には確かに♰滅びの剣♰が握られていた。


「やった...」


太郎は信じられない思いで剣を見つめた。黒い刀身に刻まれた赤い文字が、薄っすらと光を放っている。重量は意外に軽く、手に馴染む感覚があった。


「素晴らしい!」エリーゼが拍手した。「救世主様は見事に♰選定の儀式♰を完遂されました!」


「まさに聖典通りの展開ですな」アルフレッドも満足そうに頷く。「♰契約のポーズ♰も完璧でした」


太郎は複雑な心境だった。確かに剣は手に入った。しかし、その代償として、人生最大級の恥ずかしい体験をしてしまった。


「あの...もう儀式は終わりだよな?」


「はい」アルフレッドが聖典を確認する。「♰滅びの剣♰を手にした救世主は、次の試練に向かうことができます」


「次の試練って?」


「それは次の章に書かれているようですね」


太郎はため息をついた。まだまだ恥ずかしい体験が続きそうだ。


「でも、救世主様」エリーゼが嬉しそうに言った。「さっきの♰選定の儀式♰、とても格好良かったです」


「え?」


「はい。とても神々しくて、本当に救世主様だと改めて確信いたしました」


太郎は驚いた。エリーゼは本心からそう言っているようだった。


「私も同感です」アルフレッドも頷く。「あのような神聖な儀式を間近で見ることができて光栄でした」


二人の純粋な称賛を聞いて、太郎の心に小さな変化が生まれた。確かに恥ずかしかった。しかし、結果的に仲間たちの役に立ったのも事実だ。


「まあ...うまくいって良かった」


太郎は照れ隠しに♰滅びの剣♰を鞘に収めた。


「それでは、そろそろ出発しましょう」アルフレッドが提案した。「道中で剣の性能を確認してみませんか?」


「そうだな」


三人は歩き始めた。太郎は剣の重みを腰に感じながら、少しだけ誇らしい気持ちになっていた。


確かに恥ずかしいことばかりだが、仲間たちが喜んでくれるなら、それもまた悪くないかもしれない。


「救世主様」エリーゼが歩きながら言った。「今度機会があったら、♰契約のポーズ♰をもう一度見せていただけませんか?」


「絶対に嫌だ!」


太郎の叫び声が空に響いた。やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。それだけは変わらなかった。


しかし、エリーゼとアルフレッドの笑い声を聞きながら、太郎は思った。こんな日常も、意外と悪くないかもしれない。


♰滅びの剣♰を手に入れた一行は、♰聖なる森♰向けて歩を進めるのだった。


感想・コメント、励みになります。お気軽にお寄せください!


※執筆にはAIも相談相手として活用しています✨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ