プロローグ
こちらは初投稿です。よろしくお願いいたします。
「どうしてなの?」
私の前に、お嬢様がいる。
いや、前にと言うか、上にいる。私は、現在、自分がお仕えするお嬢様に押し倒されている。
状況がさっぱり分からない。どうして私はお嬢様に押し倒されているのだろう。綺麗な薄い金髪から薔薇のような香りがする。緑色の瞳が、私をまっすぐに見つめてくる。その美しい手が、私の傷だらけの手を握る。可愛いらしい赤い唇がまた動いた。
「ねえ、ベッカ。私の話を聞いてる?」
聞いてない。こんな状況なのに、お嬢様はなんて綺麗な人なんだろう、と考えていた。
「……申し訳ありません。聞いてませんでした」
お嬢様は顔をしかめて、また口を開いた。
「だからね、どうしてあなたは大きな荷物をまとめているの?あなたのお部屋が空っぽになっているのはどうして?」
「……それは」
「もしかして、出ていこうと思ってるのかしら?」
思わず息を呑むと、お嬢様はますます私の手を強く握った。私は慌てて口を開く。
「……申し訳ありません、でも、」
「言い訳しないで。私から離れないって約束したじゃない。あれは嘘だったの?」
「ち、ちがうんです……でも……」
お嬢様が突然顔を近づけてきた。心臓が高鳴って、それ以上言葉を続けられなくなる。
「ねえ、ベッカ。あなたは、誰のもの?」
「……」
「答えなさい」
「お嬢様の、ものです」
「ええ、その通り。私のベッカ。そして、私もあなたのものよ。ベッカ」
お嬢様が笑う。その華のような可憐な微笑みに、思わず見とれた。だから、反応が遅れた。
「逃がさないわ。あなたを誰にも渡さない」
そして、お嬢様は私の頬を包み、そのまま唇を重ねてきた。
突然の行動に驚いて目を見開く。甘い香りにクラクラして抵抗できない。
どうしてこうなってしまったのか。
私はお嬢様の唇を受け止めながら、これまでの人生を振り返っていた。




