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火龍の篭手


「それと……エアクリフォも渡しているとなると、これもやろう」


 パァっとザノハールは俺達の目の前に宝石の嵌ったグローブ……いや、小手を出した。


「これは火龍の小手。装備すれば腕力と魔力が増幅し、少量の魔力で火の魔法が行使できる」


 おお、水龍の腕輪の兄弟みたいな性能を持った代物だ。

 俺はリーサとサレルに目を向ける。

 サレルはリーサの方を見ている。

 じゃあリーサが受け取るって事で良いか。

 一番使いこなせそうだし。


「私……既に水龍の腕輪持ってる。チドリさんかサレル……ルーフェは?」

「ルーフェが持つより他の子が持ってほしい」


 ルーフェは自身よりも仲間が使うことを望んでいるようだ。


「ほとんど見ていただけの俺に受け取る資格は無い」


 サレルもそう言いきった。

 電気マッサージで見た技能的に君なら使いこなせそうだけどね。

 そういやザノハールにサレルは恨みの感情とかは見せないなぁ。

 根本的な原因だとも言えなくもない相手のはずなのに……。

 ちょっと気になるから聞いてみるか。


「ザノハール」

「なんだ?」

「お前を封じた奴はいったい何者なんだ?」

「邪悪な力を持った魔の者だとしか言えん。そして我は魔の者に抗っている内に封じられたのだ」

「それは知っている……随分前に村の方でそんな話を聞いた。そこからブレイスリザードが姿を見せたからな」


 ああ、背後に何らかの邪悪な連中が居るのはわかっていたのね。

 だから直接の恨みはないのか。


「話が逸れたけど、リーサ。とりあえずリーサが持っていてもらっていいかい?」


 俺が提案するとリーサはコクリと頷いて火龍の小手を受け取る。


「資質のある者が使えば、どんな金属でさえも燃やし溶かし、太陽すらも作り出せるだろう」


 その例えは怖いなぁ。

 実際、リーサは大きな雨雲を呼べるしねぇ。


「後はそうだな……この火山で採れる珍しい金属をやろう」


 ザバァっとマグマから魔法で膜を作って燃えないようにしている袋を俺たちに差し出す。

 中にはなんかキラキラと光る金属の延べ棒が詰まっている。


「うわ……希少な鉱石を延べ棒にしたものが大量に……これだけで一財産築けるぞ」


 サレルが価値をわかっている様で中身を見て驚いている。


「うむ。ルーフェネットを引き取ってもらう礼はこれで十分だな」

「ルル?」

「本音が漏れてる」

「む……礼はこれで十分だな。では旅立ってくれ」

「追い出そうとしてないか?」

「そのつもりはないのだが……」


 ザノハールの視線がルーフェから離れないもんなぁ。

 まあ、とりあえず仕事は終わったから良いか。


 ちなみにブレイスリザードの亡骸は魔石を取った途端に骨が砕けて粘液は溶けてしまった。

 マッドストリームイヴィルオクトパスと同じように体が素材に使えないみたいで激しく残念である。

 まあ、呪われた装備になりそうだし、良いのかもしれないけどさ。


「じゃあルーフェ、そろそろ帰ろうか?」

「ルル? もう?」

「うん」


 じゃないとザノハールが安心してこの地の統治が出来なさそうだしね。


「行こう」


 リーサもルーフェに出発を促している。

 ザノハールの為に気が効く良い子だね。ある意味、お兄ちゃんになるのかな? ルーフェが世話をしている子供って事で。


「ルル、わかった」

「サレルはどうする?」

「俺は村には帰らない。リーサ、ついていくよ」

「そっか……」


 と言う訳でルーフェは飛行用の大きなドラゴン姿に変身して俺達を背に乗せる。

 一泊二日で行って帰って来るって言うのもなんだかな、と思わなくもない。

 前の異世界だったらもっと時間が掛っていたはずだ。


「我以外にもエアクリフォを助けたと聞く」


 出発前にザノハールが俺に声を掛ける。


「え? あ、そうですね」

「他の守護獣も同様に封じられてしまっている可能性が高い。貴殿達ならば封印を解けるかもしれん。出来ればやってくれる事を願う」


 エアクリフォとザノハールを封印し、そこに居座る魔物は近隣の村に生贄を求めていた。

 無数の冒険者を犠牲にしてきたこの魔物が他にもいるかもしれない。


 サンダーソード、お前はどうしたい?

 パチッとサンダーソードから電気が走った。

 おそらく、俺に戦えと求めている。


 まだリーサやサレルのような可愛そうな身の上の者達がこの世界に居るんだ。

 俺はサンダーソードに、エロッチに、そしてリーサに誇れる存在にならねばならない。


「サンダーソードに頼りっぱなしですが、俺に出来る事ならやりますよ」

「そうか……どうか頼む」

「ええ」


 そう言ってから俺はルーフェに出発の合図を送る。

 ルーフェは羽を広げて飛び上がった。


「今度、また遊びに来る~ザノスと夜通しでお話する。じゃ、またねー」

「何!?」


 ルーフェがそういうとザノハールが聞きたくない言葉を聞いたような顔をしていた。

 が、その直後ルーフェが高速で移動したので、ザノハールはあっという間に見えなくなってしまった。

 そうして風を切って高速で移動している所で振り返ると、サレルがぼーっとした表情で空を見ている。


「なんか夢みたいな状況だな」

「……うん。そうだね」


 リーサが同意している。


「何かの冗談みたいだよね」

「ああ……あのブレイスリザードが、こんな簡単にさ……」

「うん」

「……出来る事なら、醒めないでほしいな」

「私も、そう思ってるよ」


 と、何やらリーサとサレルは二人にしか分からないやり取りをしていたのだった。





 そんなこんなでイストラの街に帰って来た。

 夕方、日が沈み掛けている。

 いやぁ、ルーフェのお陰で移動時間がおかしい事になったなぁ。


「お? もう帰って来たのか……」


 とりあえず報告にと総合ギルドに行くと教官が俺達を出迎えてくれる。

 ちなみにイストラの街の門番の人は俺達が帰って来るなり、シュタイナー氏に連絡を出したらしい。

 きっとしばらくするとやって来るだろう。


「で、どうだったんだ?」

「もちろん倒して来ましたよ」


 サッとブレイスリザードの魔石を見せる。

 赤く輝く綺麗な魔石だ。

 鑑定してもらえば報酬が貰えるだろう。

 魔石本体は俺が使う予定だけどね。

 マッドストリームイヴィルオクトパスの魔石のように性能がきっと高いはずだ。


「なに、いつも通り仕事を達成しましたって顔で言ってんだ……」

「今回はリーサやルーフェ、サレルのお陰で勝てたんですよ。俺一人じゃ無理でしたね」

「どうだかな……」


 このやり取りも大分馴れてきた気がする。


「まあ良い。とりあえず報告の後に、そうだな。祝勝会でもして奢ってくれよ」

「そうですね。報酬を考えるにやっても良いでしょうね」


 フッと教官が渋い笑みを浮かべる。


「やるのはこの前飲んだ店で良いか? お前の所の奴も居るからな、今夜は貸し切りにしたら良いだろう。何より、トーレル講師やお前等の知人が話を聞きたくて聞きたくてしょうがないって集まって来るだろうからな」

「ええ、それじゃあ、ささっと報告をしましょう。ただ、リーサ達をそんな場所に連れていくのは……」

「お酒?」

「ルル?」


 ルーフェが小さな姿になっているからか子供が増えた感じになってしまうなぁ。


「今日くらい良いだろ。勝利には相応の報酬ってのが必要なんだよ」


 まあ、確かにそうだ。

 前の異世界で邪神が倒されたとわかった時、世界規模で祝いが行われた。

 その時には大人も子供も関係なく世界で人類の勝利を喜んだものだ。


「わかりました。リーサ、ルーフェ、サレルもみんなで勝利を祝おう」

「うん」

「ルル~」

「俺も混ぜるのに何か違和感があるが……わかった」


 そんな訳でブレイスリザードの討伐を証明し、その報酬でその日の晩は夜通しで宴が盛り広げられたのだった。


 総合ギルドの人達も俺が依頼達成した事に関して、多少驚きこそしても納得され、疑う様子がもうなくなっていた。

 デスペイン騒動の時はまだ半信半疑な者達が居たのにいつの間にか……って感じになっているような?

 これもサンダーソードのお陰であるのは間違いない。


 とにかく、そんな賑やかな宴を俺達は楽しんだ。


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