火龍
「ルーフェもがんばったー!」
サンダーマジックジュエルドラゴン姿になったルーフェが俺の背に乗り、自己主張している。
まあな。それは間違いない。
「そうだな。ルーフェのお陰だな」
「ルルーン!」
この勝利は俺だけの功績ではない。
むしろサンダーソードとリーサ、ルーフェとサレルが居たからこそ成し得たのだ。
俺だけが挑んでいたら、炭になって転がっていた冒険者と同じ末路を歩んでいたに違いない。
なんて勝利を分かち合っていると、火口の一部からキラキラと光りが出てきて……水龍エアクリフォの時と同じく火口からニュッと龍が顔を出した。
赤い龍だ。
やはり火属性なんだろうか?
「よくぞ魔物を倒し、我を解き放ってくれた。礼を言うぞ」
なんかエアクリフォと似たような感じで赤い龍がお礼を言ってきた。
「まずは自己紹介をすべきか……知っているかもしれんが、我の名前は火龍・ザノハール」
と、火龍・ザノハールが自己紹介をした所でサレルがなんか敬礼っぽい感じのポーズを取る。
そしてな視線を俺に向けてきた。
ああ、自己紹介しろって事?
「文月千鳥、千鳥が名前だ」
「ふむ……チドリか……我の力を吸い取っていた魔物の亡骸を見る限り……汝が倒したようだな」
「いえ、みんなで倒したんですよ」
ここで俺だけの手柄にするなんていうのは言語道断。
パーティーというのは全員で評価されるものだ。
魔物を倒す事だけが仕事ではないからな。
戦いに限らず、役割というモノがあるんだ。
「何より、このサンダーソードの力です!」
「……」
何だ?
なんか妙な空気が流れているような気がするぞ?
「そうか……確かに神聖な加護を感じる。凄い業物なのだろうな」
「でしょう! 見てくださいよ!」
さすがは火龍。
エアクリフォと同じく、エロッチの神聖な力を感じ取る事が出来るのだろう。
ちょっと自慢したい。
「チドリさん……」
おや?
リーサが困っている様に見える。
「話をすると残念な奴だよな……さっきまでの姿が嘘にしか見えないぞ」
サレルまで何やら呆れたような顔をしている?
なんだ? 何か悪かったのか?
だが見て欲しい。
サンダーソードのこの輝かしい光沢を!
「ルル?」
ルーフェはなんか俺の背に乗ってクンクンと匂いを嗅ぎ続けているし。
「サレル=フィリンだ」
「リーサ=エルイレア」
エアクリフォの時にもやったな。
このやり取り。
「む……お前は……」
ザノハールがリーサの方に顔を向け、なんか匂いを嗅ぐと言うか……見つめる。
「?」
リーサも首を傾げて居るようだ。
「もしかして、これ?」
水龍の腕輪をリーサが指差すと、ザノハールは頭を横に振る。
「これがどうしたの?」
「うむ……なんとも奇妙な縁だと思ってな」
まあ、水龍の腕輪のお陰で大事が無く済んだのは間違いないもんな。
効率的に戦えたと言っても過言ではない。
エアクリフォには頭が上がらないよ。
「あいつの物好きが結果的にこうなるとはな……因果なものだ」
と、なんかザノハールが呟いている。
エアクリフォとは知り合いなのかな?
犬猿の仲だったりすると怒らせてしまいそうだから、先に聞いた方が良いのかな?
その前に自己紹介をした方が良いか。
「で、こいつが」
と、ルーフェを紹介しようとした所で、鼻を鳴らしていたルーフェが顔を明るくさせて両手を上げて言う。
「ルル! ザノス! 久しぶり! 大きくなった!」
「む……」
ザノハールが声を掛けてきたルーフェに眉を寄せ、顔を少し近づけて見つめてくる。
「何故、我の幼体時の名を……?」
「ルルーン!」
ルーフェは俺の背中から飛び立ち、前に立ってドラゴンウォーリアー姿に変身する。
しばし眉を寄せる様な顔をしたザノハールがハッと我に返るように驚愕の表情になった。
「ゲ! お前はルーフェネット!」
……なんですかその態度は。
威厳のある口調が崩れているぞ。
激しく会いたくなかった感のある言い方だった。
「知り合い?」
リーサがルーフェに尋ねるとルーフェはこっちに振り向いて頷く。
「うん! 弟分! ルーフェの弟の中で一番のやんちゃだったザノス!」
「くっ……まさかルーフェネット、お前が生きているなんて! 遥か昔に死んだと思っていたのに!」
「ルル! 人間に改造されて石になって長い時間動けなかった。こっちもザノスが生きているなんて思わなかった。再会して嬉しい!」
「ああそうか……」
弟と再会出来てよかったな。
けど、何だろう。
苦手な相手だって雰囲気で、先ほどまでの威厳が吹っ飛んでますよ?
「懐かしー。また会えてあの頃の事が思い出されるル~」
「勝手に姉貴ぶって余計な世話していただけだ」
「ルル、またそんな事言って~さびしがり屋だったのはいつのこと~?」
なんか火龍が悔しげにしているように見える。
「く……くそ。なんで我だけ……リフォトとは既に会っているのか!?」
「ルル? まだ会ってない」
そういやルーフェには四竜の想いって技能があったっけ。
もしかして水龍エアクリフォともルーフェは知り合いなんだろうか?
「是非会いに行ってやると良いぞ。あいつなら喜ぶだろう」
「ルルーン」
「積もる話があるんだったらしばらく席を外しますが?」
そう言うとなんかザノハールがガシッと俺達を足止めするかのようにマグマから俺達の進路を塞ぐように尻尾を出して妨害してきた。
「待て、行くな! 行かないでくれ!」
……ルーフェに苦手意識を持っているのは間違いない様だ。
そこまで問題ある奴だろうか?
親しくなると問題があるとか?
うーん……。
「ルル、鱗磨きやってあげようと思ったのに……」
「……頼む」
親に大人になっても子供扱いされているみたいな感じで嫌なのかもしれない。
「ルーフェ、ちょっと話と言うか、形式的なやり取りをしなきゃいけないから下がっていてくれないか?」
「ん? わかったー」
ルーフェは幼竜形態になってリーサの方に飛んでいく。
「助かる」
「嫌いではなさそうだな」
「……悪い者ではないのでな」
まあ確かに。
基本的にルーフェは善の側だよな。
「何が苦手なんだ?」
「……保護者面。狩り一つで大げさに褒めてくる所とか、今の立場であの態度は面子が保てん」
「確かに、なんか神々しさは霧散してしまったのはわかる」
こう、偉い立場の封印されていた守護龍が、途端に威厳が無い所を見せられた的な感じ。
まあ誰だって子供の頃はあるんだし、偉い竜だって苦手な相手位いるよな。
「おほん……よくぞ我の封印を解き放ってくれた。感謝するぞ人間達よ」
ここは優しい目で話に合わせて上げるのが良いかな。
「……」
サレルの悶々とした様な表情が激しく気になる。
大事な姉の仇が封じていた守護龍のこんな情けない姿を見せられたら湧き出す気持ちもあるだろう。
「この荒れた大地と火山は我が解き放たれたからには火山の熱を下げ、大地の汚れを浄化し、生命の住みやすい環境にする事を約束しよう。それが我の役目だからな」
「言うまでもなく、生贄は要求しないんだよな?」
「ああ、我の力を吸っていた愚かな魔物と一緒にされては困る。今後、そのような事は無い事を誓おう。近隣の町村にも注意をする」
この辺りはエアクリフォと同じの様だ。
それからザノハールはブレイスリザードの亡骸から魔石を手を使わず魔法で取り出して俺の前に差し出した。
「もちろん、この魔物を討伐したお前には我の魔力が多大に染みついた魔石を贈呈する。内包された力は相当の――」
「あ、他に使い道があるのでお気に差ならず。懸賞金も掛っているので魔石本体よりも魔物の討伐報酬が金になります」
「そ、そうなのか?」
ちょっと失礼だったかな?
いや、ルーフェの所為で親しみがね。
「後はそうだな……我を解き放ってくれた礼として、これくらいしか出せんが受け取ってくれ」
そう言ってザノハールも鱗を何枚も俺達にくれた。
赤い綺麗な鱗だ。
火龍の鱗って奴だろう。




