表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/100

彗星

「ルル」

「ここに……姉さんの仇の、あいつが!」


 サレルが剣を手にし、鋭い眼光で忌々しげにボコボコと泡立つマグマの方を睨みつける。

 外敵の出現を感知したのか、ゴゴゴと地面が揺れ動きながらマグマが噴出し始める。


「……凄い熱を帯びた魔力、火の力が迫って来る」


 リーサがマグマの方を見て言う。


「ルルルルル! リーサ、サレル、下がる!」


 ルーフェがサンダーマジックジュエルドラゴン形態に戻ってリーサとサレルの前に浮かび、羽を展開させて守るように広げる。

 俺は……まあ、大丈夫だって思ってくれているのだろう。


「ギャオオオオオオオオオオオオオオ!」


 マグマを噴出させて半透明の恐竜とも爬虫類とも言い難い、大きな骨格を纏った……火の化身のような敵が現れた。


 ブワッと熱風が俺達の元へと向かってくる。

 水龍の鱗が淡い光を放って俺たちを守り、その熱風を緩和させる。


 ……ヒリヒリと肌を焼くような痛みが走った。

 こりゃあ水龍の鱗が無かったら近づくだけで大火傷を負っているな。


「お出ましなさったって所だな」


 俺はサンダーソードの柄を握って言う。


「グルルルル……」


 ブレイスリザードは俺達に向けて殺気を放ち続けている。

 好戦的な魔物が持つ、典型的な視線だ。


「グル!」


 ハッと何やら鼻で笑うような鳴き声を上げているぞ。

 それから息を大きく吸い込んで炎を増しながら――。


「ギャオオオオオオオオ!」


 咆哮と共に吹き付けてきた。

 証言通りだな。


「おっと! みんな!」

「ルル! 大丈夫!」


 先制攻撃とばかりに放ってきた炎を俺は隼で回避し、リーサ達の方を見る。

 みんな見切れない程の攻撃では無かったので、それぞれ横に飛んで避けた様だ。

 リーサに関してはルーフェが担いで移動しているぞ。

 ランクの高い魔物は相応に知能があって、こっちに語りかけてくるかと思ったが……。


「ギャオオオオ!」

「ルルル……ギャオオオオオオオオオオオオオオ!」


 ルーフェがブレイスリザードの咆哮に合わせて咆哮で返す。

 咆哮を返されたブレイスリザードは声を上げながら一番近くに居た俺に向けてその巨体で突撃を始める。

 情報にあった、炎を纏いながらの突撃か。


 まずは手始めに――。


「隼からの……鎌鼬!」


 サッと見切って前進しながらすれ違いざまに鎌鼬を浴びせかける。

 放たれた風の刃がブレイスリザードの表面の沿って切りつける。

 

ズバァっと良い感じに切れた手ごたえがあったが、炎が吹き飛んだだけにも見える。

 なんていうか……骨が見えるからアンデッドみたいに見えるけど……エレメント系か?

 随分と熱い歓迎だな。


「グギャオオオオオオオオオオオオオオ!」


 お? 思わぬ痛みでも感じたのか僅かに怯んだように見える。

 が、俺の攻撃はそれだけじゃないぞ。

 鎌鼬の命中してから数秒後。

 空から雷がブレイスリザードに向かって降り注ぐ。


「――!!」


 思わぬ攻撃だったのかブレイスリザードは声にならない声を上げながら雷を振り払うべく暴れ出し、大きく炎を噴出させる。


「下がれ!」

「ルル!」


 ルーフェがリーサとサレルを守るように大きく飛びずさる。


「ギャオオオオ!」


 灼熱を大きく膨らませ、ブレイスリザードは周囲を焦土へと返さんとオーラを放つ。

 マグマが波打って火口全体に津波のように襲いかかる。


 よし!

 俺も隼で距離を取って避けよう。

 そう思った所でサンダーソードから鼓動を感じた。


 それは避けなくても良いと言うかのような指示……ふと、俺が今、サンダーソードに装着している魔石を思い出す。

 マッドストリームイヴィルオクトパスの魔石だ。


 その魔石に内包された水龍の力と、俺自身が着用している水龍の鱗とが共鳴している。

 フワッと俺の肌を守るように水の膜が出現し、ブレイスリザードの広範囲攻撃を軽減しているようだ。


「これなら!」


 俺は波打つマグマを切りつけて突き進む。

 ブレイスリザードは大技を放って隙だらけのその身をさらしている。

 どうやら俺を仕留めたと錯覚している様だ。


 ここは……アレだな。

 まだ配下の魔物が駆けつけてくる前に一撃、大きいのを決めておきたい。


 が、水雷龍刃は至近距離で放たないと決定打にはならない。

 少しばかり距離があるのが惜しい。

 アームドサンダーも同様だ。

 紫電剣は詠唱が必要で、気付かれる。

 破竜を放つにしても必要な手順からして近接……やはりちょっとな。

 まだ大技を放って気づいていないこの隙に効果的な技……あるな。


 この技を放って不意を突いた後に次の技を放てばいい。

 俺は鞘に一旦サンダーソードを収めてから、水龍の鱗を刀身の間に噛ませる。

 それから……一旦深呼吸をし、少しばかり隼で距離を詰めつつ抜刀する。


 原理としては流星に極めて近い。

 けれど、流星を放つのではなく捩りを織り交ぜ、一回転して振りおろす。


 ラルガー流剣技・第四の型『彗星』


 サンダーソードの刀身に纏わりついていた真空の刃が竜巻となって火花を内包しながらターゲットに向かって飛んでいく。

 一点特化の流星と言えばそうとしか言いようがない。


 ただ、その放たれた挙動から流れ星ではなく彗星の様だと言われた事で名付けられたと聞く。

 広範囲攻撃の流星と異なり、彗星は先ほど説明した通り、一点特化。

 その一撃は大砲に匹敵するとまで言われた遠距離の大技に分類される。


 無数の土煙の中を突き破り、俺の放った彗星はブレイスリザードの腹に命中する。

 炎の膜を突き破り、しっかりと手ごたえを確信した。


 と、同時に極太の雷が追撃を仕掛けた。

 放ったラルガー流の技によっても落ちる雷の種類に変化があるんだ。

 威力重視の技故に追撃の雷も強力だ。


「ギャオオ!?」


 思わぬ一撃にブレイスリザードが仰け反る。


「まだ行くぞ! アームドサンダー!」


 雷のタコ足を出現させ俺はブレイスリザードに飛びかかってタコ足で殴り飛ばす。

 しかし、思ったよりも攻撃が入るな。

 攻撃の威力は目測でしか測っていないが、ブレイスリザードが強力なのは間違いない。

 だが、水龍の鱗とマッドストリームイヴィルオクトパスの魔石の相性が良いのか、防御と攻撃が上手く噛み合った印象を覚える。


「ルル! チドリ!」


 ルーフェの声に僅かに視線を向ける。

 するとリーサやサレル、ルーフェの周囲にいつの間にか火の鳥やラーヴァスライムなどの配下が集まっている。

 見ると黒い炎が渦を巻いて、ファイアエレメンタルみたいな魔物まで出現していた。


「増援の処理は任せろ!」


 サレルが剣を振り被り手頃にいる魔物達を次々と高速で切り伏せていく。


「ルル! ルーフェも負けない!」


 サレルの背とリーサを守るようにルーフェもドラゴンウォーリアー姿になって雷のブレスを放ちながら応戦している。

 リーサはと言うと……魔法の詠唱をしていた。


 腕に嵌めた腕輪が輝き、呼応するように周囲に冷気と水の玉が浮かび上がっている。

 杖の先端に付けた魔石もリーサの魔力に反応しているのか青い光を放っている。


「クール・エッジ!」


 甲高い効果音と共にサレルとルーフェが相手をしていた魔物達に向かって氷の刃が降り注いだ。

 串刺しになって凍り付く魔物達。


「お、おお! リーサ! 助かった!」


 リーサの魔法の強さにサレルが驚きを隠せない表情で褒める。


「ルーフェ、行くよ! アイシクルブレイク!」

「ルルー!」


 リーサが放った氷の足止めをする魔法でサーフィンをするようにルーフェは持ってきた斧で滑りつつ魔物に接近して、そのまま横に力の限り薙ぎ払う。


「ウォーターショット!」


 立て続けにリーサは水龍の腕輪に手を添えて高速で水の弾をルーフェのいる方角へと放った。


「ルルン!」


 ルーフェが打ち合わせたかのように水の弾を弾いて魔物に当ててから追撃に叩き伏せた。

 おお……なかなかの連携だ。

 うん、こっちも負けてはいられないな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ