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創意工夫


「今度は俺の番だな! 今日の授業、楽しみだったんだ。どれだけの力が出せるか……やってやる」


 おや?

 的を破壊した生徒が自身満々って様子で結界内に入って泥人形の姿を変えさせた。


 ……その造形は、なんて言うんだろうな。

 爬虫類や恐竜を連想した姿に小さな蝙蝠の様な羽を生やし、それでありながらどっしりとした体型、斧を所持した姿。


 うん……ドラゴンウォーリアーにしか見えない泥人形になった。

 これは完全にルーフェを敵視していると見て良いかもしれない。

 それとも彼の知る最も強い魔物って表現で良いのか?


 リーサが無表情だけど眉を寄せているように見える。

 もちろん、クラスメイト達も一部眉を寄せたり、雪辱を晴らせ的なイケイケの雰囲気で応援する者もいる。


「いくぜ! はあああああああああああああ!」


 的を破壊した生徒が気合を込める声を上げた後、魔法の詠唱……はしていないけれど、時間を掛けて手に火の玉を作り出し、それを大きくして放った。


「プロミネンスバースト!」


 炎の球はドラゴンウォーリアーを象った泥人形に向かって飛んでいき……直後、結界のお陰で消音が出来ていたのに校庭内に爆音が響き渡り、結界にヒビが入り、砕けて土煙が上がる。

 大丈夫か? と思ったけれど結界が即座に再生成された。

 土煙も最低限しか漏れていない。


「ほっほっほ……」


 想定内なのかシュタイナー氏も驚きの表情などは見えない。


「測定範囲を超えてしまっているのー」

「ま、これくらい当然だな」


 自信満々と言った様子で的を破壊した生徒は土埃まみれの中で言い放ち、再生成された結界から出て答えた。

 パチパチとクラスメイトや一部の職員が拍手をしている。


 随分と派手だったなぁ。

 いや、魔法は俺からしたらどれも派手だけどさ。


 とにかく、機材で測定出来ないってのもあるみたいだ。

 限界を超えると結界が破壊されてすぐに再生成される。

 その余剰で溢れた魔法は更に大きな魔法陣で防御して学園の外に漏れないようにしているっぽい。

 かなり厳重な設備だ。


 これだけの魔法が使えるならデスペインの行軍とか対抗できそうに思えてしまう。

 まあ、話によるとデスペインは魔法防御が高くて効果が薄いそうだけど……。


 ともかく、そんなこんなで生徒達の中には結界を破壊して測定不能にするのがチラホラと出ている。

 やはりスタッフクラスに多い傾向があるな。

 問題児とはいえ、才能は確かみたいだ。


「イエー!」

「ヤーハー!」

「教わった通りにやったら出来たー!」

「ありがとー!」


 的を破壊した生徒とハイタッチと交わして楽しげにしている。

 それで……リーサの番になった。


 リーサは結界の中に入り、泥人形を形作る。

 グネグネと形が変動していく。

 なんとなくタコっぽく見えたが、更に形が代わり、最終的に……デスアルジャーノンハーメルンの僕をしていたネズミによく似た泥人形になった。

 やっぱり気にしているんだなぁ。


 とにかく、リーサは泥人形の形を決めた後、魔法を唱え始める。

 パキパキと泥人形の近くで空気が凍るような音が聞こえてくるが、これと言って変化らしき物や数字が測定されていない。


「む……」


 シュタイナー氏がその行動を見て、少しばかり目が険しくなる。


「フローズンサークル……」


 リーサがそう呟いた後、更に魔法を紡ぎ始める。

 的を破壊した生徒は何やってんだ? って目でリーサを見つめている。


「そうか……まさに創意工夫だ。やるじゃないか」


 今度は的を破壊した生徒を笑ったブッククラスの生徒が食い入るように身を乗り出して言った。

 リーサは何をするつもりだ?


 そう思って見ているとリーサの体から青いオーラのような物が立ち上り、魔法を形作る。

 詠唱時間は非常に短い。

 的を破壊した生徒よりも発動は合計しても早いだろう。


「スコールクラウド!」


 リーサの杖の上に小さな雨雲が形作られて泥人形の上に向かって素早く移動して飛び膨れ上がり滝のような雨を降らす。

 と、同時にリーサは片手を広げて握り直す。


「アイシクルレイン!」


 そう……リーサが叫んだ直後、雨は凍りつき泥人形に降り注ぐ。

 ザクザクと音を立てて泥人形を串刺しにしながらその氷の塊は膨れ上がって行き、爆散する。

 ただそれだけなのにバキンバキンと結界が三度も破壊され……って結界まで凍ってる!?

 キラキラとダイヤモンドダストが校庭で浮かび上がって消え、リーサは魔法を終えた。


「ふう……」


 スタスタと何事も無かったかのように元いた場所に戻ってリーサは座る。


「すごーい! リーサちゃん!」


 孤児院に居た子がリーサに近づいて褒める。

 リーサも友達を相手にがんばったって答えているみたいだ。


 うーん……中々に強力な魔法に見える。

 入学してそんなに長い時間学んでいる訳でもないのにリーサがどんどん成長して行っているのがわかるなぁ。


 俺がラルガー流を学んだ時は……隼を覚えるのだって随分と時間が掛ったのにな。

 さすがは天才、その成長を見せつけられた気分だ。


 でも大丈夫!

 俺にはサンダーソードがあるから!


 どちらにしてもリーサの最近のマイブームの魔法は氷系の魔法なのかな?

 よく使っている気がする。

 上位魔法は氷とかなのだろうか?

 後で聞いてみるのも良いかもしれない。


 とにかく生徒達は思い思い、自身が使える一番強力な魔法を放って行った。

 やがてブックとスタッフ、その両方の生徒が全員試し終わる。


「うむ……みんな、存分に魔法を使えたと思う。自身がどれだけの威力の魔法を使えるかわかったかの。測定以上の者達、今年は粒ぞろいでワシもこれからの日々を楽しく思うぞ。では授業の終わりに……」


 シュタイナー氏は結界の中に手を入れて泥人形を作り出し……炎の球を投げ飛ばす。

 ボンと音を立てて泥人形に炎の球は命中、火柱を上げた所で結界が一度弾けて音が響き、次に火柱が発生して再度結界が生成されて砕け、再度爆発して砕ける。

 そうしてからジワリジワリと地面を焼き焦がしている所で結界が更に壊れた。


 おお……軽々と四回。

 さすがは教師と言った所か。


「魔法は凶器じゃ。どれだけ強力な魔法を使えるとしても、それを味方に当てる様な事はあってはならん事をみんな重々承知の上で使って行くのじゃぞ」


 そう言ってシュタイナー氏は今回の授業を終わらせる。


「ではみんな、校舎に戻るのじゃ」


 唖然とする生徒達は導かれるまま、校舎へと戻って行く。

 これはあれだな……みんな好きに実験をさせて最後は講師が強力な力を見せつける事でこれからの授業をスムーズにするとか、そんな目的で行ったんだと思う。

 きっとこれからは教師の手本は滅多に見せないんだろう。


 あ、リーサがちょっと難しい顔をして歩いていく。

 けど……その手つきと言うかなんか、シュタイナー氏の真似をしているのがわかる。

 とにかく、こうしてシュタイナー氏の実技の授業は終わった。


「あの手本で、もう真似をしようとしておる……リーサ殿は将来有望過ぎるのう」


 リーサの後ろ姿を見つめてシュタイナー氏がそう俺に呟いた。


「まさかこの段階で工夫をして威力向上を行なうとはのう」

「もしかしてリーサがやっていた連続魔法ですか?」

「うむ……通過した物を凍らせる魔法に水の魔法を通して威力の向上させておった。期待以上じゃな。魔法の操作もしっかりしておったし、ただ威力の高いだけではないのを見せてくれたのう」


 炎みたいな目に見えて破壊に向いた攻撃ではなく、凍りつかせてから爆散させていたもんなぁ……。

 泥人形が粉々になっていたのはいろんな意味で恐ろしい。


「仮に避けられてもタダでは済まん。しかも段階を追って放つから無駄も少ないのじゃ」


 ああ、最初に放った氷の魔法で相手が動いたら凍らせて動きを鈍らせる。

 そうなったら別の手を使えば良いって感じか。

 ただ威力の高いだけの魔法を放つよりも厄介そうだ。


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