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手応え

「ルルー……チドリ~」

「ん? どうした?」


 戦闘を終えた所でルーフェが不満そうな声を出している。

 いつも楽しそうなルーフェにしては珍しい。

 見るとリーサも若干似た感じで眉を寄せて不満そうな顔に見えなくもない。


「……」


 リーサも無表情で何も言わないけど、なんか不満そう。


「チドリがすぐにホーンバイソンを倒してルーフェもリーサも着いてきてるだけになってるー」


 ああ、移動した後に遭遇したホーンバイソン三匹に俺がサンダーソードで雷を落としただけで戦闘が終了してしまったもんな。

 数が多かったし、敵意を持って突撃してきたから咄嗟に攻撃してしまった。

 後はしっかりと処理すれば依頼は達成できる。


 ただ……確かにリーサ達は不満な状態なのは間違いないかもしれない。

 せっかくの依頼だと言うのに俺が倒すべき魔物を全部倒してしまっている。

 ピクニックに来た訳ではなく冒険者としての仕事をして来ている訳で、これではリーサやルーフェが不満に思うのも仕方が無い。

 そして、全部俺が片づけてしまうと結果的にリーサの成長に良くない……か。


「ごめんね。じゃあ次はリーサ達に戦ってもらおうかな」

「ルルン! リーサ! がんばろろう! ルーフェも手伝う!」

「わかった」


 ちょっとばかり機嫌が良くなったリーサが頷く。

 ちなみにルーフェがホーンバイソンと戦った場合は……割と手慣れた動きで眉間を斧で叩いて仕留めていた。

 ドラゴンウォーリアーだからこそ出来る力技なんだろう。

 リーサと連携する場合のお手並み拝見だ。


 なんて思っていると……俺に仲間をやられて激昂した増援のホーンバイソンが……グローブを着けたカンガルーとワラビーを連れて襲い掛かってきた。

 種族がバラバラだけど、どういうグループなんだろうか?

 俺が視線を向けるのだけどルーフェが前に飛び出して構える。


「ルルン。なんか美味しそうな匂い。チドリ! リーサとルーフェが倒す所を見てて!」

「ああ。何かあったら助太刀はするけど、リーサとルーフェの戦いを見せて貰うよ」

「ルルー! リーサ! いくー」

「うん」


 ルーフェが機敏な動きで斧を持って走りだし、リーサがその後ろで魔法の詠唱に入った。


「アイスクル……ブレイク!」


 リーサが杖の先を地面になぞって魔法を放つ。

 すると氷の一筋が地面を伝って三匹の魔物の足を氷で閉じ込める。


「ブモ!?」

「キュ!?」


 ホーンバイソンとグローブを着けたカンガルーとワラビーが足を氷で止められて動けなくなる。

 もちろん氷にヒビが入ってすぐに拘束が解けてしまうだろう。

 が、その前にルーフェが接近。


「るるるー!」


 おお、速い。

 ティラノサウルスがダイナミックに走っているような躍動感が後ろから見ているだけでも伝わってくるぞ。

 そんな臨場感を出しているルーフェが大きく斧を振り被って飛びかかるようにホーンバイソンの眉間に斧を叩きつける。

 バキッと良い音がすると同時に地響きが走り、ホーンバイソンが仕留められた。


「ルル、一匹」


 ブンと斧を持ち直すルーフェだけどその間に自由になったグローブを着けたカンガルーとワラビーが隙を突くとばかりに二手に分かれてルーフェに同時攻撃を仕掛ける。

 クロスパンチって感じで加速して殴りかかろうとした、その時。


「ファイアブリッツ!」


 ボッと炎が音を立ててカンガルーの方に素早く飛んでいく。


「キュ!」


 炎に意識が向いたカンガルーが紙一重でリーサの放った魔法を避けた所で。


「ルル!」


 ルーフェが尻尾を振って、グローブを着けたカンガルーを薙ぎ払いワラビーを巻き込んで吹き飛ばす。


「ルルルルー!」


 ……斧の側面を使って器用にリーサの炎の魔法をバッティングしてカンガルーとワラビーに追撃したぞ。


「キュウウウウウ!?」


 吹き飛ばされた挙句、炎の魔法をぶつけられてカンガルーとワラビーはまともに戦うこともできずに火ダルマになって転げまわる。

 そんな大きな隙を見せた所で、ルーフェが接近……トドメの振り下ろしが命中して二匹は絶命した。


「ルルー! 勝利! リーサのお陰で簡単に倒せたー!」

「……?」


 一応勝ったけれどリーサが若干小首を傾げている。

 まあ……ルーフェも中々強いよね。

 俺が出ると戦うまでもないって感じだけど、ルーフェも似た感じに見えなくもない。


 ただ、リーサの戦い方は良くできているんじゃないかな?

 魔法で相手の動きを抑え、ルーフェが力の限り攻撃する。

 ルーフェの隙を突いてきた攻撃を援護の魔法で妨害して助けた訳だしさ。

 なんというのか、魔術学園で学んだ事が生きている気がする。


「快勝だったね」

「うん……んー……」

「なんか手応えがない気がしたのかい?」


 俺の質問にリーサは小さく頷く。


「俺としてはこの位が丁度良いと思うけどね。接戦で戦った方が勝ったって気持ちは強いかもしれないけど、それで怪我をしたら大変だし」

「でも……」

「こんなんじゃダメかい?」

「……」


 ちょっと困らせる質問になっちゃったな。

 正直に言えば気持ちはわかるから俺なりの助言をするか。


「実力を十分に発揮できる時なんて限られた状況なんだよ。案外、拍子抜けする事って多いもんさ」


 俺も前の世界で初めて仕事を達成した時の事を覚えている。

 最初だったから手伝いみたいな仕事だったんだけど、まだ何かする事があるんじゃないかって思ったもんだ。

 達成感って思いのほか味わう機会は少ない。

 何より達成感のある戦いって大抵は苦労とセットだから、それはそれでつらかったりもする。


「薬草採取の仕事だって似たようなものじゃないか。依頼された物を持って行ってお金を貰う。これも同じさ」


 魔物を倒したって違いがあるだけだ。

 報酬は魔物の体そのものだ。

 弱肉強食の掟だね。


「……」

「リーサが見た魔物がどれも強かったからそう感じてしまうんだよ。シュタイナー氏やレナさんと一緒に冒険した時は何も思わなかった?」

「あの時は……勝ったってだけでしかなかった。チドリさんのお手伝いをしていたし……」


 色々と落とし所を見つけるのが難しいね。


「ルル? リーサ、いや?」

「ううん。そうじゃない。ルーフェが強いのが分かったの」

「ルルーン!」

「もっと私も強くなりたい」

「十分強くなって来てると思うんだけどなぁ……」


 学園に入学してそんなに経っていないのに色々と魔法が使えるようになって来ているんだ。

 これ以上を望むのは他の生徒達にも失礼なんじゃないかな……。

 努力家の天才ってこういった悩みを持っているのかも知れない。

 これで色々と開き直ったら良いんだろうけど、開き直り過ぎて天狗になられるのも怖いよなぁ。


「狙ったのに当たらなかった……しかもルーフェに打たれた。もっと練習しなきゃ」


 あ、そこが気になるんだ。

 器用な事をするなぁとは思ったけど、学園でもやっていたみたいだし、出来るんだろう。

 ああやって魔法を斧でバッティングしたんだと思う。


「ルルーン!」

「良い連携だったと思うけどな」

「私が凄いんじゃない……ルーフェがやってくれただけ。トドメはルーフェだったし……当たっても倒しきれなかった」


 どうもリーサは短い戦闘だったけど学ぶ所が沢山あったようだ。

 俺としては魔法をルーフェに当てずにかなり正確にカンガルーに向けて撃っていた事が評価するんだけどな。

 アレ以上の精度で当てるのはなかなかに難しいと思うし。


「もっと練習しないと……」

「肩の力は抜いて一歩ずつ力を付けるんだよ」

「はい」


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