ホーンバイソン
昼頃になり、昼食を取る事にした。
イストラの街で買ってきたパンを手際よく切って、持ってきたハムや野菜、瓶詰の具材でサンドイッチにする。
リーサと村に行くまでの道のりでの野性味溢れる食事を思えばかなりの進歩だ。
シュタイナー氏達と一緒の時もキャラバンの食事とかそれなりに豪勢だったけどさ。
こう……やっぱり自分達で調理して食べると言うのは面倒だと思う反面、楽しみもある。
「ルル」
ちなみにルーフェは相変わらずリーサに絡むように全身を使って巻き付け……違うか、伏せて背もたれ代わりになっている。
どうやら俺やリーサにそうやって背中を預けさせるのが好きなようだ。
「ルーフェは何食べる? この辺りで手頃な魔物とか出てくると良いんだがな……」
荷車にはまだ獲物等の類は載せていない。思いのほか平和で魔物に遭わずに済んでいる。
そしてルーフェは現在、持ち込んだ獲物の肉とかを持っていないからどこかで調達した方が良い。
「ルーフェまだお腹すいてないから大丈夫」
「本当に大丈夫か?」
少なくとも朝食は食べていなかった。
お腹は空いていないって言っていたから間違いない。
だが、今は昼だしリーサを背に乗せ荷車まで引いていた。
相応に疲れるはずだ。
「ルル……なんか元気! 全然お腹空かない! 不思議!」
……これはもしや昨日食わせた魔石が影響しているのではないだろうか。
食べると元気になるって言っていたけれど、本当に元気になっているのか。
突然ガス欠したりしたら不安だぞ。
念のためにステータスとか確認しておくべきか?
「ルーフェ、ちょっとそのままでいろよ?」
「ルル?」
俺はルーフェの背に乗り電気マッサージを開始する。
「ルル……ル! ルルウ……」
声が出ないようにルーフェが必死に口に手を当てて堪え始める。
ルーフェネット Lv62 メス 種族 改造ドラゴンウォーリアー ■■■◇★
習得技能 力向上7 魔力向上2 知識向上4 生命力向上9 早さ向上5 視力向上5
ドラゴンパワー4 アックスマスタリー4 サバイバル技能5 品質鑑定5 家事技能5 料理技能2 掃除洗濯技能2 味覚 竜の鱗
火耐性4 水耐性3 野生の力5 回避技能3 ファイアマスタリー4 ブレスマスタリー3 ライドドラゴン3
生体改造 呪詛の残滓× 呪詛治療× 人語理解4 再生力増加3 四竜の想い 原初の力
アンバーソードボア
スキルポイント 3
前回の比べると違いはほとんど無い……が技能が一つ増えている。
アンバーソードボアってまんま食べさせた魔石だよな?
昨日魔石を食べさせた後に何か技っぽい物を閃いていたけれどこれが追加されたからって事で良さそうだ。
種族欄にも星が付いているし……何なんだ?
何か状態異常になっていないか確認をすると……敢えて言うなら体力の部分にプラスが付いている。
もしやこれは栄養過多状態って事か?
種族欄を再確認。
●ー●┐ ★
○ー○ー●┘
二重丸の所が星に変わっている。
項目を確認すると切り替えができるっぽいな。嵌っているのはアンバーソードボアの魔石のようだ。
キラっと項目が光っている。
自由に切り替え出来る項目欄みたいだから別の魔石を選択する事が出来る。
シルエットは……なんか前回見た時よりボヤーっとしてしまっている。
ただ……進展しているような気がしなくもない。
魔石を食べさせる事でルーフェに何かしらの変化が起こるのなら良い事か?
この選択できる要素が気になるんだよなぁ。
何か特定の魔石を食わせる事で別の変異を起こすんじゃないかと俺の勘が囁いている。
突然変異って言うしさ。ここまで露骨ならあり得る。
そもそもこれって認識を広めるとしたらサンダーソードにもある魔石を嵌めるスロットみたいなものだろ?
サンダーソードは魔石毎に姿を変える力を持っている訳で……似たような代物が魔物にあっても何の不思議もない。
……とりあえずパンチングって付く魔物の魔石を入手したら四角を埋めてルーフェに食べさせてみよう。
当たりを引いたら白い丸の部分がどうなるか確認したい。
ちなみに白い丸の一つはパンチンング、もう一つはブレイド……って所しかわからない。
ヒントと思えば良いのだろうけれど、この広い世の中でルーフェの変異に貢献できる魔物を探すのは相応に大変だ。
収集した情報だと本来の生息地の近隣に集まる魔物だって話だけどさ。
と、内心愚痴るのはこのくらいにして、実験結果によっては行動を変えねばいけない。
もしも当たりを見つけてサンダーソードで四角を埋めてから食べさせると星として追加された場合だ。
この場合、嵌めるスロットの質なんかも影響があるって事になる。
例えば最低6ポイントが変異に必要で、一つ嵌める毎に1ポイント追加される。
6ポイントを満たすとソルジャードラゴン。
それ以上のポイントを集めた場合、何か亜種への変異の道が開けるって可能性だ。
この場合は既に埋まっている所を塗り替えたりした方がよくなってしまう。
亜種への変異が一つだけとは限らない。
より高いポイントを満たすことでさらなる変異が開いてしまうって事もあり得る。
まあ、その場合はシルエットを確認って事になるし、そもそも項目が埋まった瞬間に変異が始まったりしたら厳選するのは困難を要する。
もしくは決められた物を埋めるだけで項目の星の部分はレア度とかの可能性か。
タダの丸と星とでレア度が違っていて、パンチングって所の魔物が希少だったり格上だったりした場合、星や別の記号になる感じ。
最後は……あくまで選択できる二重丸だった所限定の項目とか。
どちらにしても一つを埋められるかもしれない時に確認しよう。
パチッと電気マッサージを終える。
「ルルー……スッキリー」
「別に凝りとかあった訳じゃないんだけどね」
「ルーフェ大丈夫なの?」
リーサが小首を傾げて尋ねる。
「うん。昨日食べさせた魔石のお陰なのか元気が有り余って食欲が無いだけみたいだよ」
「ルルーン! なんかお腹いっぱい! 元気いっぱい!」
とはいえ定期的に確認をしておかないといけないのも事実かな。
「疲れが出たら言うんだよ?」
「ルルー!」
まあ、ルーフェの体は大きいから、その体格を維持するには相応の食料が必要になる訳で、それを安く済ませられるなら喜んだ方が良いのかな?
サンダーソードを良いように利用しているからか、複雑な気分だ。
「料理、もっと覚える。この前スープ教わった!」
「お昼は軽く済ませる予定だからー……じゃあ夜に食材を詰め寄ってお願いしようかな」
「ルルー!」
なんて感じに俺達はのんきに食事をして進んで行ったのだった。
目的地に到着した俺達は早速、ホーンバイソンを狩る為に探す事にした。
結構見晴らしの良い草原なので目当ての魔物はすぐに見つかった。
「ブモォオオオオオオオ!」
……なんかルーフェが前に倒していたホーンバイソンだと思わしき魔物よりも二回りくらい大きな牛型の魔物が俺達を見るなり突撃してくる。
角がなんか銀っぽい光沢を宿したホーンバイソンって感じ。
たぶん、目標の魔物とは別種……亜種だと思った方が良いな。
「ルル!」
「……」
ルーフェとリーサが臨戦態勢に入る。
俺はリーサ達が前に出ないように腕を広げてからサンダーソードを抜刀して構える。
「は!」
なんとなく強そうな雰囲気。
豪快に攻撃されて怪我でもしたら大変だ。
とりあえず牽制に、力を込めてサンダーソードを振り被って落雷を落とす。
「ブモォ!?」
命中精度の上がったサンダーソードの落雷がホーンバイソンの亜種と言うか上位種っぽい奴に降り注いだ。
「ブ――」
ブスブスとホーンバイソンの上位種は煙を出し、白眼を向いて音を立てて崩れ落ちる。
イノシシの亜種を倒した時と似た感じだけど、こっちの方がゆっくりだな。
「倒したかな?」
様子を見る為に近づいて死んでいるか確認。
……うん、死んでるな。
トドメに首の太い血管を切る。
食用目的での狩猟なのだから血抜きは重要だ。
同時に死んだふりをしていたとしても、これを受けたら一溜まりもない。
間違いなく絶命している。
これで戦えるとしたらアンデッドの類だ。




