オイル漬け
「チドリさん、おかえりなさい」
「ルルーン! チドリおかえり!」
家に帰ると庭でリーサがルーフェと一緒に出迎えてくれた。
何をしていたのかな?
見た感じルーフェとじゃれあっていたって感じかな?
まだ家の菜園とかは植えたばかりだしね。
「ただいま」
「ルルーン、チドリ、畑の水やりはやった。この後何する? ご飯? お風呂? それともー」
「……」
何だろうか。
この押し掛け女房的な感じとしか言いようがないセリフや行動は。
怒るべきなのか、それともどうしたらいいのか。
「お出かけ?」
私、とか言わないだけマシだと思って流していこう。
さすがにルーフェを嫁とは思えない。
「さっき出かけたばかりだからなー」
「ルル? 荷物、置きに来たと思って」
「ああ、これね」
俺の持っている手荷物で判断したのか。
「別にこれから出かける予定はないよ。これはそうだな……ちょっと室内でやる事かな。ルーフェは窓から見ててほしい」
「ルルーン。わかった」
「じゃあ行こうか、リーサ」
「うん……だけど、何をするの?」
「大分痛んできているナイトグロウを保存しようと思ってさ。リーサも持ってきて」
俺は手荷物を持って家の中に入り、机の上に置いて中身を出す。
レナさんから教わった話だとハーバリウムはこの世界じゃ薬草のオイル漬けって扱いみたいだ。
薬草の種類によっては薬効が溶け出して、すり潰したりするとは別の使い道が出来るのだとか。
洒落た瓶とオイル漬け用のマジックオイル。
それと砕いた魔石を少し……これは俺が前に狩ったりした魔物の物を使おう。
イノシシとか分けて貰ったデスペインの魔石とか。
ゴリゴリと下準備をして……。
と言う所で視線を感じてその方角を見る。
「ルルーン」
ルーフェが興味津々って様子でこっちを見ていた。
「チドリ、何をするの?」
「ハーバリウム作り」
「はーばりうむ?」
「レナさん達の話ではオイル漬けだね。まあ見てて」
「うん!」
「……はい」
なんて感じに下準備をしているとリーサがナイトグロウを自室から持ってきて机に置く。
「ありがとう」
「……」
リーサもなんだかルーフェみたいに興味があるって様子で机の方を見ている。
「それじゃ始めようか」
俺は蓋が出来る瓶の中に砕いた魔石を軽めに入れてからナイトグロウを詰め込む。
この際、ナイトグロウに余分なゴミ等が着いていないか入念に確認。
抗菌の意味も込めて……サンダーソードを添えて電気を放つ。
パチパチとサンダーソードから電気が発生し、ナイトグロウと砕いた魔石に迸る。
ふわっと魔力的な何かが通って馴染んだ気がする。
それからマジックオイルと言う買ってきた油っぽい薬品を瓶の中に入れて……コツは七分目くらいで一旦オイルを入れるのを抑えて砕いた魔石の量等を調整するのが良いらしい。
更に俺独自のオイル漬けだけではなくインテリアとしての側面を混ぜる為にナイトグロウの位置を微調整する。
ちょっと花が曲がっていたりすると見栄えがね。
すると、ふわっとナイトグロウがマジックオイルと砕いた魔石に反応して淡い光を再度放ち始めた。
さて……大分調整が出てきたかな?
仕上げに砕いた魔石を更に投下して……見栄えが悪くならないようにしてマジックオイルを更に注いで蓋をする。
……なんだろう。
ハーバリウムを作ったつもりなのに、梅酒とかを作っているような気がしてきた。
確かこんな感じだったんじゃなかったっけ?
日本人仲間が帰郷精神から再現しようとした代物の製作工程を見て思い出してしまった。
「後は漬けて置いて魔石が溶ければ良いらしいけどね」
ナイトグロウのオイル漬けが完成。
しばらく漬けたら、何かの薬とかに使えるらしいけど……俺の目的はあくまでナイトグロウの保存だ。
というか……淡く光っていて松明や蛍光灯程じゃないけど光源になりそうな感じ。
瓶をリボンで結んで……うん。結構良い感じにできたんじゃないかな?
「はい。完成」
出来上がったナイトグロウのオイル漬けを見てみる。
瓶から見えるナイトグロウが淡い光を放って……うん。
結構幻想的で綺麗に出来たんじゃなかろうか?
「どうだいリーサ」
「光っていて綺麗……」
「そうだね。灯りにも使えそうで良いね。魔力を少し補充し続ければランタンにも成りそうだ」
「ちょっとやってみる」
お? リーサがオイル漬けに向けて魔法を使ったみたいだ。
明るさが増した。
おお、凄いな。
ナイトグロウの花が光っていて、本当に綺麗だ。
こう……美術館とかで展示されていても何の不思議もない。
まあ、自画自賛はこれくらいにして……。
「うん、良いね。じゃあリーサ」
「ん?」
「あげる。大事にしてくれると嬉しいな」
「でも……」
「イヤかい?」
俺の質問にリーサは頭を横に振って否定する。
「せっかく貰ったものだから、これ以上悪くなる前に加工して大切に取っておきたいと思っていたんだ。だからリーサ、君が大切に保管してほしい」
「わかった」
「今度、みんなに見てもらうのも良いかもね」
「うん」
「ルルーン! キレー!」
無事リーサにナイトグロウのオイル漬け……ちょっとロマンが足りないのでナイトグロウのハーバリウムと言い変えようを見てルーフェが声を上げる。
「キレー! ルルーン!」
ルーフェが羨ましがっている……のかな?
単純にヨイショしているだけにも見えるけど……。
うーん。
リーサにだけ渡すのも何か悪い気がしてきた。
けれど手持ちのナイトグロウは全部使ってしまったしなぁ……。
あ、そうだ。
ルーフェにはこっちの方が良いかもしれない。
俺はサンダーソードに嵌めていた魔石……擬装用に残しておいたアンバーソードボアの魔石を交換して取り出す。
アンバーソードボアの魔石 ■■■
なんかサンダーソードに嵌めている内に四角の部分が全部埋まっちゃったんだ。
取り出した魔石は……こう、透明度が上がっている感じがする。
帰ってくる前に魔石の買い取り商人に査定して見てもらったのだけど、確認の機材に嵌めた瞬間、何の魔石か即座に買い取り商人が読み取って驚かれた。
アンバーソードボアの魔石の中でも高品質な変異直前個体の魔石だと言っていた。
燃料として使うと持ちが凄く良いとかなんとか。
ただ……それにしたって機材の調子が良すぎると首を傾げられてホルツ教官がため息を漏らさせてしまった。
この魔石で出た最後の技能は、ファイナルバーストってちょっと不吉そうな技名だった。
前に居た異世界でも似たような技がある。
武器に内包された魔法の力を解き放って武器を犠牲にするファイナルサクリファイスって技なんだが……それを連想したので使用はしない方向で行くつもりだ。
この世界にはないサンダーソードが失われたら、俺の希望まで失われてしまうからな。
他に、なんとなくだけど電気マッサージなんかでも使えそうな気がする。
ただ……まだ不要な魔石はあるし、どうも□が三つの奴はタコやイノシシの亜種の魔石よりもゲージの成長と言えば良いのか? の溜まりが早い。
なので次の実験はそう難しくはないだろう。
「ルーフェにはこれをあげよう」
「ルルーン! 魔石ー!」
俺は窓を開けてルーフェに魔石を見せてから口をあけるように指示する。
ルーフェの場合は綺麗なインテリアよりも魔石、花より団子が似合う。
餌を与える感じで四角が溜まった魔石をルーフェの口に放り込む。
「ルル――ルルル!」
パクッとルーフェは魔石を口に放り込むとポリポリと食べる。
「チドリ! これ凄く美味しい! 元気! ルーフェ力みなぎってきたー!! グルルーン!」
ムキッとルーフェが力瘤を作ってぴょんぴょん跳ねる。
「あ、なんか閃いた! ルルーン!」
それからルーフェは姿勢を低くしてルーフェは走った。
……赤いエフィクトみたいなオーラをルーフェが纏っていたように見える。
それからパンと手を振りおろすと動きが終わる。
「出来た! スピードスタンプ! たぶん、そんな攻撃! イノシシが使う!」




