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変異について

 リーサが魔術学園に通い始めてからしばらく経った。

 学園内の建物を俺は巡回していた。


「……」


 ここ数日の事を思い出す。

 学園入学後、リーサ達ブッククラスとスタッフクラスはいろんな授業の開始と各々の自己紹介などのレクリエーションを行った。

 そこまではリーサ自身から聞いたっけ。


 で、俺が気になる要素になっていた使い魔に関する授業があったらしくリーサが教えてくれた。

 魔法使いや冒険者は連絡などに小型の鳥の魔物とかを伝書鳩のように出したりする事があるそうだ。

 もちろんブックやスタッフのクラスではそれぞれ生徒が自ら使い魔を持ちこんでいたりする。


 ただ、まあ軽い概要だと、まだそういった専門的な授業は後で行うって事で今は要らないそうだ。

 むしろ学園が用意した既に調教済みの使い魔で練習をしてから本格的に自分の使い魔等を使役するか決めるとか。

 一応、魔法で形作った鳥を飛ばすとかの方法もあるのだとかで、どっちで運用するかは好みで別れるらしい。


 この辺りはなんとなくだけど前の異世界とあんまり違いがなく感じる。

 魔物の使役は無かったけれど、動物を使役して伝書鳩のような事はしていた。もちろん魔法に優れた人は魔法で鳥を作って手紙のやり取りもしていたし。

 どちらにしても新入生には早い話なんだとかで、別段用意する必要はない。

 ただ、リーサ以外の生徒で持っている人が多かったからか、なんとなくだけどリーサが羨ましそうな目で見てる気もしなくもない。

 って考えが脱線した。


 使い魔に関する事だ。

 どうもリーサも授業の時に目を通した資料でほんの少ししか見ていないようなんだけど、育てた魔物は特定の魔石を食べさせたり、特定の鉱物、植物、環境等で大きく姿が変わったりする現象があるそうだ。

 俺が小学生くらいの時にやっていた携帯ゲームのモンスターみたいな要素があるっぽい。

 魔物が姿を変える現象を変異って言葉で表わされている。

 進化でも良い気がするけど、変異で統一しよう。


 と言う訳で俺は巡回の合間にシュタイナー氏に許可された学園の図書室で魔物を使役した場合の変異に関する事項を確認した。

 それでわかったのは変異を起こすには、魔物毎に特定の魔石を数種類食べさせると起こるし、変異を起こす魔物を魔物自身が好んで捕食する。


 草食性の魔物であっても変わらず、この場合は植物性の魔物の魔石を食べるそうだ。

 魔物にとって魔石と言うのは力を吸収するのにとても効率の良い代物であるらしく、魔石単体ならば食性に関係はなく好む。

 当然、魔石を食べさせた分だけ強くなるらしい。

 どの魔石を食べさせたらどう変異するかの資料もあるようなのだけど、あくまで家畜にしている魔物までしか今のところ俺が調べた範囲では見つけていない。


 後は……どうも変異先も一つしかない訳ではなく、性別から何もかも同じ魔物を二匹同時に使役して同じ様に育てたが、各々別の魔物に変異した例も存在するのだとか。

 もっと専門的な資料を見ればわかるのかもしれないけれど、生憎とまだ読み書きに関しちゃ覚えきれず手探りの域を出ない。

 昨日なんてレナさんが俺に声を掛けてきたので、どうにか読んでもらって知った所だ。


 とにかく、纏めるとルーフェのあの項目は間違いなく変異に関する事で良さそうだ。

 問題点としたらドラゴンウォーリアーを使役した前例を見つける方法だろう。

 どう変異するかの資料がないと完全に把握するのは難しい。


 ただ、ドラゴンウォーリアーの上位種と言われているのはソルジャードラゴンだと思われる。

 この辺りは挿絵で見たので間違いない。

 シルエットを思い出すと重なるから霞んで見える魔物の名前から片っ端に探してルーフェの餌にしてみれば良いだろう。

 ああ、もちろん鍛錬とか相応の事をしないと出来ないらしいのでLvも関係している。


 ……問題があるとしたら、ルーフェ自身がどうなのかって所なんだけどさ。

 俺も好奇心から調べていただけだし、ルーフェが嫌がるなら変異を強制する気はない。

 なんとなく同居している訳だし、変異とか見てみたい気もするけどさ。


 ……変異先に別の物があるのなら確認くらいは出来るのではないかとも思う。

 こう……ルーフェが望む、小さくなる変異なんてモノもあるかもしれない。

 なんて自分に言い訳しながら廊下を歩いていると、突然爆音が響いた。


「なんだ!?」


 急いで俺は音のした方角……さっきリーサ達が校庭で今日始まる授業で集まっていた所の方へと顔を向け、窓から飛び出しながらサンダーソードを抜いて電気の力で浮力を生み出し、着地して駆け出す。


「なんだ今の音は? 何かあったのか!?」


 急いで現場に駆け込んで声を掛ける。

 するとそこにはエリートクラス二種の新入生達と……なぜかホルツ教官が居て、更になぜか学園の入り口近くでバスケットを片手にルーフェが居る光景だった。


「あ、チドリー! ルルーン!」


 ぶんぶんと俺に向かって手を振っているルーフェはともかく……問題はルーフェの足元と言うか、尻尾の先だ。

 そこには入学試験で的をぶち壊したスタッフの生徒が叩きつけられてしまいましたって感じで抑え込まれている。


「この速度で駆けつけてくるか……警備としては随分と優秀だな」


 教官が腕を組んで俺に声を掛けてくる。


「急いで来たので……」


 思えば咄嗟とはいえ、結構無茶な動きをして駆けつけた気がする。

 リーサの件もあるしなぁ。

 一応校舎内の巡回をしていたので出遅れたと感じてしまう。


「一体何があってこんな事態に? と言うかルーフェ! 尻尾! 生徒潰してる!」

「ルル?」


 ルーフェが俺の注意を聞いてやや困ったように眉を寄せたように見える。

 尻尾を上げるか上げないかで悩んでいる様だ。


「ああ、そいつの事で怒らなくて良い。俺が命令してこの状態にしてある」


 そうなのか。

 しかし、一体何があったんだ?


「はあ……」


 どうやらホルツ教官が事情を知っているらしい。

 この反応から、おそらくルーフェは怒られる様な事はしていないだろう。


「どちらにしても久しぶりだな」

「ええ、教官はなぜここに?」

「色々とあってな。ギルドの方からイストラのリヴェル魔術学園の近接戦闘の顧問として派遣されちまったんだ。未来の魔法使いたるもの戦士の事を知るべし……とか言っていたな。で、今日はその講義をする為、生徒を校庭に集めたんだが……」


 ああ、そうなんですか。随分と奇妙な縁ですね。

 と不思議に思ってしまう巡り合わせだ。


「お前の所の奴も入学したみたいだな」


 そう言ってホルツ教官が輪の中に居るリーサに目を向ける。


「おー! 最近話題の街に来たドラゴンウォーリアーってエルイレアの所で飼われてるんだな」

「この前の使い魔のお披露目で見た魔物よりもすごーい!」


 って様子で生徒達がぞろぞろとルーフェに近づいて観察している。

 なんか平和な感じだな。

 魔物なんて慣れているって反応だ。


「……うん。私とチドリさんの家で同居してる」

「ルルーン!」


 無表情だけどちょっとリーサが照れてるのがわかる。


「それでルーフェ、なんで学園に来たんだ?」


 留守番をしているはずだったのになんで学園にまで来ているのだろうか?

 巡回が終わったら一旦様子を見に帰る予定だったんだけど……。


「ルル、チドリとリーサ、お昼御飯持ってきた! またご近所さんに教えてもらったから食べて!」


 ああ……なるほどね。

 持ち込みで弁当を持ってくる者も多いが学園の学食がある。

 一応、学食で食べるって話をしていたはずなんだけど……ルーフェは新しい手料理を俺達に食べてもらいたくて来てしまったって事なのか。

 うーん……家庭的と言うか押し掛け女房的な行動だよなぁ。


「ルル? ルーフェ、いけなかった?」

「……」

「あー……ちょっと騒ぎが大きくなるから避けてほしいな」

「ルル……ごめんなさい。チドリ、リーサ」


 シュンと反省する分、ルーフェは物わかりが良いドラゴンだ。


「いや、わかってくれるなら良いよ」

「ルル……」

「このドラゴンウォーリアー、凄く流暢にしゃべるな」

「あそこに居る冒険者が飼い主らしいけど、調教は元より改造の腕前が凄いって事だろうな……」

「俺聞いたぞ。デスペインの行軍を止めたって街で噂の紫電の剣士だってさ」

「おー! 超有名人じゃん!」

「剣士を名乗っていて魔物をあそこまで調教出来ているんだ。噂も全てがデタラメって訳じゃなそうだな」


 なんて感じで生徒達が俺とルーフェを指差して噂話をしている。

 凄く気恥ずかしい!

 前の異世界じゃ選ばれた異世界人って持ちあげられていた仲間がいたけど、こんな気分だったのかな?


「色々と聞きたい話はあるが……とりあえずはさっき起こった事の話をするか」


 ホルツ教官は改めて経緯を話し始めた。


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