魔力試験
数日後。
リヴェル魔術学園の入学試験日になった。
魔術学園の校門には入学志願者である学生達が受付に並んで、園内の校庭で試験を受ける。
保護者は学外で待機と言う決まりがあるらしいんだけど、俺はシュタイナー氏の勧誘を受けて護衛兼、警備員として試験を見学させてもらえる事になった。
まあ、あんまり身内を贔屓してはどうかと言うわけで、リーサに声を掛けるのは試験終了後なんだけどさ。
一応、アクセサリーとか杖とか魔法道具で試験結果を誤魔化したり出来ないように私物は別途預けて試験に挑むっぽい。
当然だな。
リーサの場合、水龍の腕輪は使用出来ない。
ちなみにルーフェは留守番をしてもらっている。
ドラゴンウォーリアーが魔術学園に保護者枠で待機させたら驚かせてしまうだろうしね。
行きたがっていたけれど、それは機会があったらと言う感じで説得した。
まあ、最近じゃルーフェはご近所の主婦と話仲間って感じで仲良くなってきているそうで、料理とかを見せてもらっているようだ。
後は……ちょっと目を離した際、商店街の屋台とかの料理を美味しそうに凝視していて、店の人達を困らせたりしているようなので注意したら、店主がルーフェを庇うなんて珍事にも遭遇したかな?
どうも美味しそうに見ているルーフェに釣られて客が増えているから助かったとか言われてしまった。
まあ、凄く目がキラキラしてたもんなぁ。
食べさせたら美味しいって絶賛して更に客を呼んでいたので、店主に気に入られていたし。
っと、留守番しているルーフェの事は心配ないだろう。
なんていうか魔物故に外見で驚かれるけど悪さとか常識知らずの行動をするような事は無い。
自分を人間だと思って、丁寧に行動している魔物ってのがしっくりくるのがルーフェだな。
と言うのも俺は……なんていうかこの歳になって異世界生活も長いと言うのに、ちょっと感動しながら学園の敷地内を見渡してしまっていた。
前はレナさんの案内で外観だけを見ていただけだったからなぁ。
立ち寄らせてもくれたけどギルドの方を優先したんだった。
「はー……」
15歳で異世界召喚され、そのまま着の身着のまま冒険者になったから学園って所はかなり懐かしい感じがする。
それとは別に、魔法を学ぶ学校っていう映画みたいなシチュエーションに興奮をするなってのは無理な話だ。
前の異世界じゃ俺は魔法が使えなかったので行く事も無かったからなぁ。
そんな学園に入学したいと集まっている受験生達……最低限の資質とお金さえあれば入る事が出来るらしいけど、それでもなんていうか難関大学みたいな空気はある。
大学に関しては想像だけどさ。
高校受験って言えばいいのか?
「どうじゃ? チドリ殿」
「あ、なんていうか……凄いですね。人も多いですし」
かなりの受験生が入学するって事なんだろう。
「そうじゃな。まずはあれじゃ」
シュタイナー氏が指差したのは、校庭に設置された……なんていうの? 空港の危険物をチェックするゲートみたいなものだ。
あそこに受験生が一人一人ゆっくりと通って行く。
赤と青のどちらかが点灯するみたいだ。
あ、リーサの番になったみたいで、恐る恐ると通っている。
ゲートは青く、やや強めに光った。
「あれで赤く点灯した者は魔力が低いという事じゃ」
「うわー……」
……なんかこの段階で学園の外へと行こうとしている奴が居るけど、辞退したって事だろうか?
諦めるの早くないか?
確かに魔力が低い事が露見するのは恥かしい事だろうけどさ。
俺が通ったら赤だと思う。
だが、難しいからってすぐに諦めるのはよくない。
俺だって途方もない金銭を要求されるサンダーソードを十年かけて購入して現在に至るんだ。
がんばれば才能が開花して魔力の量も上がるかもしれないぞ。
「しっかりと魔力を上げる訓練をすれば良いからのう。そこまで酷いモノではないのじゃぞ?」
「そうなんですか?」
「うむ、何を隠そう、レナは赤じゃった」
「あー……そうなんですか」
それでも入学出来るって事は魔力が全てって訳じゃないのか。
なんて話しているとレナさんがやってきた。
「何の話をしていたんですか?」
「あ、レナさんも今日は学園に居るんですね」
「ええ、お爺ちゃんの手伝いで」
そう言いながらレナさんはゲートを見て、何を話していたのかを察したようだった。
「今度は青く点灯させます」
「うむ。きっと出来るじゃろう」
レナさんの技能は俺が弄っちゃったからね。
きっと青く光るはず。
「リーサちゃんはどうでした?」
「強い青じゃったよ」
「当然ですよね。リーサちゃん、魔法を覚えるのが凄く早いもの」
確かにリーサの技能を見る限り生まれつき魔法の資質は高い。
天才じゃないかと親バカっぽく答えたい衝動に駆られる。
「あの光り方ならリーサちゃん、特待生にだってなれるかもしれませんよ」
特待生か。
魔術学園の特待生……なんとなく憧れるシチュエーションだ。
「そうじゃな。ワシも応援しておる」
「ここ最近、ずっと魔法の練習をしていましたからね」
夜遅くまで魔法の練習をするのは元より孤児院の孤児達とも訓練していたし、レナさんとも勉強していた。
きっと良い成績で入学できるはずだ。
なんて感じで一次試験を見ているとリーサと同じく強めの青を出した受験生が何名か出てきた。
「お? なんか違う感じ?」
青の輝きが強いからか、周囲をキョロキョロと見渡している。
「ふむ……今年は粒ぞろいになりそうじゃな」
シュタイナー氏がキリッと顔を引き締めて答える。
なんかあるのかな?
「ちなみにチドリ殿は受けてみぬか?」
「俺が魔術学園に入学なんてしたら浮きそうじゃないですか?」
見る限り受験生達の年齢は俺よりも年下ばかりだ。
自分で言うのもなんだが、日本人ゆえに若く見えると思うけど、それでもあの輪の中にいたら違和感がある。
「そうかのう?」
「チドリさんも私に読み書きや薬草知識を聞いてきていますからこの際、入学しても良いかと思うのですけど」
「そこはシュタイナー氏の懇意で、警備の合間に授業参加を認めてくださっているじゃないですか」
そう、警備員として学園の書物の閲覧や授業の参加とかを許可してもらっている。
授業を受けると言うか、何かあった際の鎮圧班って事で教室の後ろの方で見張る形で見る権利があるようにしてもらったのだ。
こんな良い仕事を紹介してもらえるとは思いもしなかった。
ついでにリーサの学校生活を見守る事が出来るもんな。
何かあった際は俺が率先して敷地内で起こる問題の処理をしなくちゃいけないのだけどさ。
「そうじゃったがのう。ついでに入学をしても良いのじゃぞ?」
「いえいえ、歳を考えますとね」
「残念じゃな……なんて話をしている間に受験生達が全員通過した様じゃな」
見ると受験生達がゲートを全員通ったらしい。
ゲートの場所の人が減って、別の所に集まっている。
シュタイナー氏がゲートの方に移動したので俺も同行する。
「ほら、チドリ殿」
「……」
どうしても俺の魔力判定を見てみたいらしい。
「俺はそんな魔力無いですよ。赤で光っても知りませんからね」
「ほっほっほ」
全く、シュタイナー氏は良い人なのはわかるけど、俺を相手にするとなんかテンションがおかしいんだよな。
善意なのはわかるんだけど。
しょうがないので俺は人の減ったゲートを通る。
パチッとなんか変な感じがしたな。
見上げると……紫色に光った後に黄色く光った。
「し、失礼します」
なんか焦った感じで職員がゲートの機材を何度も確認している。
もしかして……壊れた?
ほら、こういう精密機器って電気に弱かったりするじゃないか。
いや、魔法製品は電子機器とは違うだろうけどさ。




