雷剣士
「さて……まあ、冒険者として依頼を受ける基礎を教える。まずは常時ギルドの依頼板に載っている薬草採取、魔物討伐を請けるぞ」
基礎講習は終わったって感じで教官が俺達に立って着いて来るように命じて来る。
「行こうか、リーサ」
「はい」
俺達は教官の導くままに総合ギルドの一階にある依頼板の小さな一角に案内される。
なんか古臭いメモがあった。
「まず文字が読めなくてもメモに触れてみろ」
リーサはメモに触れる。
「……声が聞こえる。近くの森で薬草ルートーン採取、またはブルージェリーかブラウンラビットの討伐……って」
「これには微量に魔石を塗料として使われたインクで書きこまれていて、手に触れることで触った者の意識に内容を教えてくれる。依頼内容を理解したな? ではこれを依頼受領カウンターに持って行って受付の奴に渡して登録するんだ」
リーサは教官がくれたメモを受け取り、恐る恐ると言った様子で受付の人に渡す。
「はい、少々お待ち下さい……登録完了しました。薬草ルートーンがどんな形状かは、こちらですのでご確認ください」
そう言って受付の人は見本の薬草を見せてくれる。
ふむふむ……アレって薬草なのか。
スッと頭に入って行く感じがする。
「では御武運をお祈りしています。見つからなくても次があるので肩を落とさずに頑張って下さい」
と言う感じでリーサは俺達の方に戻ってくる。
最後の励ましはなんだ?
「これが依頼の受け方だ。わかったか? じゃあ早速出発だ」
そんな訳で俺達は総合ギルドから出て町の外にある小さめの森へと向かった。
その道中で俺は自身のステータスを何度も確認する。
文月千鳥 Lv35 男 種族 人間 職業 狩人Lv1
習得技能 力向上4 知識向上3 生命力向上5 早さ向上6 視力向上4
異世界言語翻訳 ラルガー流剣術5 サバイバル技能7 交渉術4 品質鑑定2 品質管理2 アーマーマスタリー2 気配察知4 回避技能3
スキルポイント40
色々と習得出来る訳だけど、どうしたら今後の冒険や生活で役に立つだろうか?
習得出来る技能も様々な物がある。
サバイバル技能っていろんな技能を総合して修得して総括する技能みたいだ。重複も可能なのかな?
魔法資質開花に始まり、火の魔法資質や水の魔法資質、光や回復魔法……あっちの世界じゃ俺、魔法は使えなかったから覚えたい気持ちもある。
魔力回復量向上に回復魔法が覚えられれば傷薬とかを節約して行く事だって可能なはずだ。
まあ、前提に魔法使いでLv20以上とかあるみたいだけど……転職してしばらく上げてから覚えれば良いのかな?
武器の修練なんかも存在する。
剣や大剣、鈍器と数えたら無数にある。
他に掃除とか料理技能とかもあるみたいで覚えられる技能は無数にあって数え切れないのがわかる。
ここで……ふとある項目を見つけてしまった。
――サンダーソードマスタリー。
どこまでピンポイントの技能があるんだ。
習得条件はサンダーソードの入手があるみたいだ。
だが……しかし……これからの事を考えると魔法習得も捨てがたい。
魔力向上も取っていろんな魔法を使うのは夢がある。
多様性を上げる事でより強くなれるかもしれない。
魔法剣士とか出来る事が多く、それだけで冒険者としての格が上がるだろう。
しかし、チラッとサンダーソードに目が行く。
ここで心の奥底から声が聞こえて来るような気がした。
それは俺の本心だと分かる。
お前は何のために10年も掛けてサンダーソードを手に入れた?
そこまで誘惑し、心待ちにしたサンダーソードを手に入れたのに今更魔法を優先するのか?
何が重要なのか、お前ならば分からないはずはないだろう?
うん、そうだな、俺。
俺はサンダーソードの為にがんばり、そしてサンダーソードを手にした。
そのサンダーソードに相応しい男にならねばならない。
まずやらねばならない事はサンダーソードを極めることに他ならない。
強さ? それはこれから生き残る為に必要な事か?
それよりもまずはサンダーソードマスタリーを満たし、そこから派生するサンダーソード専用の技能を覚えるのが先だ。
見ていてくれ、俺はサンダーソード特化になるぞー! エロッチーーーー!
と言う訳で振れるだけのスキルポイントを全部サンダーソードマスタリーに振って行く。
上限はどんな物なのかは……日本に居た頃にやったこんな感じのスキル振りゲームだと10とかその辺りだろう。
なんて思いながらどんどん振って行ったのだが……。
文月千鳥 Lv35 男 種族 人間 職業 狩人Lv1
習得技能 力向上4 知識向上3 生命力向上5 早さ向上6 視力向上4
異世界言語翻訳 ラルガー流剣術5 サンダーソードマスタリー40 サバイバル技能7 交渉術4 品質鑑定2 品質管理2 アーマーマスタリー2 気配察知4 回避技能3
スキルポイント0
なんかいつまで振っても上限にならなかった。
他の技能に比べて随分と突出してしまった代わりに他はまともに振れていない。
まあ、初期で結構覚えていたし、問題ないだろ。
後悔は無いぜ!
森の中は……うん。
小さめの森で木々の合間から光が差し込んでいて見晴らしは悪くない。
地形もデコボコせずに散歩するのに良さそうな森林公園って感じの場所だな。
「ルートーンはこの森で生えている。まあ……新米冒険者等に根こそぎ採取されていたりして見つからない事もあるがな」
ああ、なるほど……今回みたいな受講者用の依頼だけど、見つからない場合もあるって事なのね。
失敗しても大丈夫って事か。
なんて思いながらちょっと奥まで歩いて行くと……なんか、藪の影にさっきみたルートーンが淡く光って見える。
自己主張の激しい植物だな。
「まあ……もしもこの依頼を完遂、より多くの報酬が欲しければ狩人の職業を授かった者を連れていくと良いだろう。採取技能や狩猟能力があるのでな。狩人はその辺りの力を持っている」
……これって俺が習得しているサバイバル技能7のお陰って事か?
「リーサ、そこ」
俺がそっと藪を指差す。
するとリーサは藪を掻きわけ、ルートーンを発見して引き抜いて来る。
「む? もう見つけたか……」
あ、教官が俺を見てる。
「とにかく、後はその薬草を納品して終わりだ。ちなみに魔物と遭遇した場合、その魔物の魔石を持って行けば倒した証明となる」
なるほどなるほど……この辺りは俺が居た方の異世界でも似た様な仕事があったから変わりないな。
ちょっとこっちの方が設備の説明が良い気もする。
あっちだと文字が読めない場合は職員に聞くとかが常だった。
場合によっては良い依頼を職員に紹介してもらうって感じだったし。
「それじゃあ……」
「ブルフィ!」
教官が帰る素振りを見せた直後、森の奥の方からイノシシの声が聞こえてきた。
なんかここに来る前に来たイノシシよりも少し大きくて黒いな。
「な……アンバーソードボアだと!? いや、色が黒くて大きい……亜種の主個体か!」
教官が切迫した表情でイノシシの方を睨みながら腰に刺した剣を引き抜く。
「新米魔法使いは急いで逃げろ。おい、お前は俺と一緒に足止めをするぞ! その後は急いで町に戻ってこの事を報告するんだ」
「ああ、そうですね」
こんな人里にイノシシが出るとか確かに危ない。
きっともっと弱い魔物の生息地なんだろうしな。
俺は冷却時間が終わったのを確認して職業を剣士……『雷剣士』という職業が増えている!
これはサンダーソード特化の俺にこそ相応しい!
是非この職業にならねばな!
そう思って雷剣士に転職する。
転職した直後、サンダーソードを鞘から抜いて構える。
おお……今までよりもよりサンダーソードが手に吸い付く様な気がするぞ。
「行くぞ」
「待て! ソードボアは侮ると中級冒険者でも危険だ。しかもアレは亜種の主個体――」
そして道中で戦った時と同じく、いや……牽制とばかりにサンダーソードを振りかぶる。
すると木々の合間を縫って雷が降り注いだ。
今までよりも太い雷だった。
「ブルフィイイイイイ――――…………!?」
イノシシに雷が降り注ぎ、絶叫と共に倒れた。
「よし!」
やっぱ大したことない魔物だな。
サンダーソード特化の雷剣士になった俺に勝てない相手ではない。
とはいえ、毛皮と魔石が売れる訳だし、街も近いので今回はしっかりと解体して持って行こう。
「な……」
「戦闘は終了。それじゃあ解体して帰りましょうか」
目的は完遂した訳だし、危険な魔物はその分実入りも良いはず。
エロッチ「……」




