第11話 ドナルド閣下登場
「あ、あなたはテレビでよく見かける……」
「そうだ、そのまさかだ。アメリカを再び偉大な国家にするのが私の使命だ」
「神経衰弱や7並べ、ババ抜きでお馴染みの……」
「私の事を知らぬ人類はいない様であるな。わっはっは」
「『大統領になったら24時間以内にロシアとウクライナの紛争は終わらせる』って言ってませんでしたっけ?」
痛いところを突く艦長ちゃん。憧れのドナルド閣下に会えて感極まってあらぬことを喋っている。
「悪いのはロシアのプッチンだ。俺様が提示した和平案を無視しやがって……」
「『クリスマスに大統領から良い子のお家にお電話』という企画で、女の子に『君はサンタさんを信じているのかい?……君は7歳か。微妙な年頃だね』」なんて言ってましたよね。見事に良い子の夢を砕きましたね」
艦長ちゃんの攻撃に何とか耐える閣下。
「その7歳の少女は『大統領が言っている意味がわからなかったけど、お話できて良かった』とメディアに語っていたぞ」
大統領なら7歳の少女の口を封じるなど、少女の手をひねるくらい簡単な事だろう。
閣下は懐から例のボタンを取り出す。
いつも艦長ちゃんのVチューブ配信を観ている閣下。感極まって思わず本音が出てしまった様だ。
「今日はどんなご用件でいらっしゃったのですか?」
と日本の危機的状況から話題を逸らす艦長ちゃん。
「お前、みかじめ料を払ってないだろう」
単刀直入に言う閣下。
「はて、閣下。私には何の事だかさっぱり」
時代劇の悪代官の様にしらばっくれる艦長ちゃん。
「お前はみかじめ料を逃れるために、わざとアイフォンを安く我が国の業者に売ったことにしているだろう。調べはついておるのだそ」
納品書を艦長ちゃんに見せる閣下。
「も、申し訳ござりませぬ、閣下。これはほんの手違いで」
「ほう、手違いと申すか。ならばここに記されている入浴料、サービス料を今すぐ俺様に納入するがよい!」




