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048 勇者パーティー14:掌の上で

 本日2話更新の1話目です。

 シャワーを済ませたクウカがバスルームから戻ってきた。

 服はちゃんと着ているが長い髪はまだ湿っており、首筋を伝う水滴が妙になまめかしかった。


「この後はどうしますか?」


 尋ねられたクリストフは思わずクウカの身体に手を伸ばす。

 まだ足りない。もっとクウカと交わりたい。

 そう思って自然と手が伸びていた。


「ダメですよ」


 しかし、クウカはその手をギュッと握りしめて押しとどめる。


「クリストフの気持ちは嬉しいです。私もそうしたいところですが……」


 クウカは上目遣いで恥じらいの笑みを浮かべる。

 それだけで、クリストフは動けなくなる。


「その前にやることがありますよね。お楽しみはその後で……きゃっ」


 自分で言っていて恥ずかしくなったのか、クウカの頬に朱が差した。

 そんな彼女の姿が、クリストフにはどうしようもなく愛おしく思える。


「リベンジですっ! ストーンゴーレムをやっつけるですっ! そのためにみんなで話し合わないとですっ!!」


 クウカの言葉で、あの場面がクリストフの頭の中で再生される。


「ヒッ……」


 心の奥底に刻み込まれた恐怖が顔を覗かせる。

 それだけで、クリストフは怯え、震え出す。

 俯いて、頭を抱え縮み上がるクリストフ。


 その姿を見たクウカは笑みを浮かべる。

 クリストフに見せてきたのとは違う、邪悪な笑みを。


 クウカはクリストフを抱きしめ、優しく頭を撫でる。

 弱い魔力で【平常心ピース・オブ・マインド】と【英雄の心(ブレイブ・ハート)】を発動させながら――。


 【平常心ピース・オブ・マインド】がクリストフの恐怖を薄れさせ、【英雄の心(ブレイブ・ハート)】が自尊心を取り戻させていく。


 ――大丈夫よ。

 ――あなたは勇者。

 ――あなたは強い。

 ――あなたは誰よりも強い。

 ――あなたが世界で一番。


 ――なにも怖くない。あなたが最強。

 ――どんなモンスターも楽勝。

 ――ストーンゴーレムなんかザコよ。

 ――あなたの前に立っていられるモンスターなんかいないわ。


 ――全ての者はあなたを敬い、ひれ伏すべき。

 ――あなたは全ての者の上に君臨する。

 ――あなたは世界で唯一人の勇者なのだから。


 ……………………。


 クウカはクリストフの心の隙間に刷り込んでいく。

 クリストフが最も望む言葉を。

 そして、クウカ自身が望む言葉を。


 ここまでは今までにも何度もやってきたことだ。

 クリストフが酔いつぶれた時。

 疲れ果て深い眠りに落ちている時。


 クウカはこれに昨日から新たな言葉を付け加えるようになった。


 ――怖い時は私に甘えなさい。

 ――私が守ってあげる。

 ――私が助けてあげる。

 ――私が癒やしてあげる。

 ――世界の全てがあなたの敵になっても、私だけはあなたの味方。

 ――決して裏切らない、あなたの味方。


 ――私を求めなさい。

 ――私の身体を。

 ――私の心を。

 ――私の癒やしを。


 ――あなたの帰る場所は私。

 ――なにがあっても私の場所へ帰ってくる。

 ――私はあなたのもの。

 ――あなたは私のもの。

 ――二人はひとつになるのよ。


 クウカの言葉は自尊心とともに、クウカへの依存心をクリストフに植え付けていく。

 クリストフはぼうっとした頭で、それを受け入れる。

 やがて――。


「落ち着きましたか?」

「ああ」

「良かったです」


 クリストフの目に生気が戻った。

 ストーンゴーレム戦以前の自信に満ち溢れた姿だ。


「クウカ、ありがとう」

「どういたしまして!」


 クリストフは真心のこもった礼の言葉を述べた。

 初めてのことだ。

 今まで彼女に礼を言うことはあっても形だけ。

 すでにクリストフの中で、クウカはかけがえのない存在になっていた。


「作戦会議だ。みんなに声をかけてくれ。俺はシャワーを浴びてくる」


 立ち上がったクリストフにクウカが歩み寄って、その身体を抱きしめる。

 そして――口づけを。


 長い長い口づけだった。

 唇を押し付け合い、舌を絡ませる。

 二つの魂が一つに融け合うような。

 それがあるべき姿のような。

 永遠に続くとも思われる――。


「はいっ、クリストフなら大丈夫ですっ!」


 身体を離したクウカは満面の笑みを浮かべる――。


 突如、クリストフの内側から煮えたぎるような強い自信が湧き上がってくる。

 かつてないほどの自信だ。

 今ならどんなモンスターでも軽く打ち破れるという強い強い自信だった。


「じゃあ、行ってくる。後は任せた」


 クウカの頭を軽くポンポンと叩き、クリストフはバスルームへ消えて行った。

 その足取りは自信に満ち溢れ確固としていた。


「ああ、カワイイわ〜。クリストフは本当にカワイイわ〜」


 一人になったクウカは情欲に染まった淫蕩な笑みを浮かべる。

 全てが自分の思惑通りに進んでいることに、クウカの全身を快感が駆け巡る。

 それだけで絶頂に達しそうな快感が――。


「後は邪魔者を排除するだけね」


 震えるクウカの口から不穏な言葉が発せられた――。

 クウカ「私がヒロイン!」


 ジワジワと忍び寄る破滅の音。

 勇者パーティーに明日はあるか?(多分ない)


 次回――『勇者パーティー15:作戦会議』


 クウカ「みなさん、作戦会議ですよ!」

 バートン「ヤり過ぎて寝てた」

 ウル「怖くて寝てた」

 ジェイソン「呆れて寝てた」

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― 新着の感想 ―
[一言] 同じ体と体のぶつかり合いでも主人公サイドの健全さよ こういう対比は嫌いじゃないので楽しみです
[一言] クウカの愛自体は本物だしこれも一つの幸せよね まぁ、このヤ○チン勇者が他の女に手を出さなければの話だけど 達磨にして監禁して……みたいなガチガチのヤンデレに比べたらかわいいもんよ!
[気になる点] 勇者パーティ側の話は割とどうでもいいのでもっとサクっと終わらせて欲しい
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