154 商会強襲3
「よし、一斉に突入!」
クラウゼの合図とともに、メンザによる隠蔽が解除される。
先頭は数人のボウタイメンバー。
その後に衛兵団が続き、館に雪崩れ込む。
俺たち三人も彼らの後を追いかけた――。
「なっ、何者だっ!」
戸惑う従業員が声を荒げるが、ボウタイのメンバーたちはその横を通り抜け、迷わず館の内部へと駆けていく。
続く衛兵の一人が従業員を拘束。
一瞬のうちに無力化してしまう。
「館内の人間は全員拘束しろ。あやしい物はひとつも残らず押収だ」
クラウゼの言葉に衛兵たちが蜘蛛の子を散らすようにわかれて行った。
ある者は付近の人間を拘束。
ある者は奥の部屋を目指し。
ある者は階段を登って行く。
「『精霊の宿り木』の皆さんは、ボウタイを追いかけて下さい」
「ああ、わかった。いくぞッ」
ボウタイはだいぶ先行しているが、風精霊が導いてくれるので問題ない。
先頭はシンシア。
俺とステフはその後ろ。
俺たちは全力で駈け出した――。
風精霊の案内がなかったとしても、ボウタイの後を追いかけるのは容易かっただろう。
彼らの行く手には、何人もの人間が意識をなくして、ゴロゴロと転がっていた。
同じ制圧するにしても、衛兵に比べてボウタイは随分と乱暴なようだ。
それでも、誰ひとり命を落としていないあたり、さすがの腕前だ。
俺たちは転がった人間を辿るように走っていく――。
いつもなら軽口を叩きそうなステフだが、見たことのないほど真剣な表情だ。
「許さんッ! 幼子を拐かすとは不埒千万ッ!」
珍しく怒りをあらわにしている。
怒りは原動力だ。強い力になる。
だが、あまり度が過ぎると、視野を狭めることになる。
たしなめようかと思ったが――。
「幼子は優しく愛でるものだ。青い果実が熟すまで、決して手を出さずに耐える日々。それこそ、至高の時間ッ!」
うん……。
やっぱり、ステフはステフだった。
いつも通りな姿に安心した。
これなら、大丈夫だろう。
「私も許せないわ。ロロちゃんの分も、他の子たちの分も、ぶん殴ってやるんだからッ!」
シンシアはメイスを握る手に力を入れる。
彼女は優しい女性だ。とくに、弱者に対しては。
倉庫のときも一切遠慮していなかった。
悪人どもを許す気はこれっぽっちもないだろう。
そして、俺も二人と同じ思いだ。
なにをしようとしてるのか分からないが、どんな事情があっても、ヤツらがやったことは絶対に許されないことだ。
精霊たちも俺の怒りに同調して、怒りを振りまいている。
「シンシア、その先を右だ。曲がったら部屋があってボウタイはそこにいる」
「ええ、わかったわ」
風精霊が教えてくれたように、廊下を曲がった先には部屋があり、両開きの扉が開け放たれていた。
書庫のような部屋だった。
部屋の前には数人の武装した者どもが意識を手放している。
明らかに戦闘要員だが、ボウタイの相手にはならなかったようだ。
部屋の中には8人のボウタイメンバーが立っていた。
そして、もうひとり。
商会の下働きのような格好をしているが、その鋭い視線は戦いに身を置いている者のそれだ。
ボウタイの間諜だろう。
「ほう。速かったな」
ヴェントンがこちらを見る。
「よし、開けろ」
ヴェントンの言葉に間諜の男が床にひざまずく。
よく見ないと気づかないが、床の一部が隠し蓋になっている。
男が蓋を上げると、そこには地下へと降りる狭い階段があった。
「地下?」
「ああ、地下一階は倉庫になっている」
シンシアの問いにヴェントンが答える。
「正面入口は厳重に封鎖されている。敵の本拠地はその下のはずだ」
「よっぽど秘密にしておきたいらしいな」
「ああ」
ヴェントンが頷く。
「行くぞ」
「この先は私も知りません。十分に警戒を」
「ああ」
ヴェントンを先頭に、俺たちは階段を下りて行った――。
後書き
次回――『地下一階1』
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本作品がHJ小説大賞2021前期「小説家になろう」部門で、受賞いたしました。
少し先になりますが、書籍化されます。
これもひとえに、ご支援くださった皆様のおかげです。
ありがとうございましたm(_ _)m
今後も他作品を含め、お付き合いのほどよろしくお願いしますm(_ _)m
下記サイトに結果がのっています。
https://firecross.jp/award/award16




