152 商会強襲2
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風精霊の加護を得た俺たち三人は街を駆ける――。
街外れの倉庫街から市街地へと。
少し距離があったのだが、それでも、十分もかからずに目的地に到着した。
広い敷地に建てられた三階建ての商館。
その入り口はひっそりと、怖ろしいまでにひっそりと静まり返っていた。
違和感を覚えたのは建物だけでない。
商館前の通りが……なにか、おかしい。
あるべきものがそこにない。
いるべき人がそこにいない。
冒険者としての直感が強く訴えかけてくる。
シンシアも同じように身構えている。
だが、ヴェントンとマレは気負った様子もない。
二人は違和感がある方向へとゆっくりと歩んで行き――その姿が消えた。
「なっ……」
「えっ……」
目は離していない。
瞬きもしていない。
しかし、いつ消えたのかもわからないまま、二人は消えた。
敵の罠ということはないだろうが、いったいどうしたんだ……。
疑問に思っていると、ヴェントンが消えた辺りに、一人の男が姿を現した。
格好からすると、この街の衛兵だろう。
革鎧を装備したエルフの男だった。
男はこちらに歩み寄り、敬礼とともに口を開いた。
「『精霊の宿り木』のラーズ殿、シンシア殿。ご協力感謝いたします。団長がお呼びですので、ご同行ください」
「ああ」
男は頷くと、踵を返し元来た場所へと歩き出す。
俺とシンシアはその背中について行く。
薄く透明な幕をくぐり抜けた感覚――。
その一瞬後に現れた光景に、予想していたとは言え、やはり、驚かされた。
そこには数十人の人間がいた。
大半は先程の男と同じ装備のエルフ衛兵たち。
長命種であるエルフの衛兵たちは皆、ダンジョンで鍛えられた元冒険者だと聞いた。
確かに他の街の衛兵とは違い、豊富な実戦経験を積んできた者の気配だ。
見知った顔も何人か。
ヴェントンにマレ。
エルフ王家の第一王子クラウゼ殿下。
それに、メンザとステフの姿まで。
「先日以来ですね、ラーズ殿」
「クラウゼ殿下……」
「今の私は王子ではありません。衛兵団長のクラウゼです。普通に話してください」
「そうか、わかった」
ボウタイに、衛兵団に、ギルマス。
この街の最高戦力が結集している。
彼らの本気度がうかがえた。
俺たちは巻き込まれたかたちだが、これも精霊の導きかもしれないな。
「この結界は?」
「ええ、メンザ殿のおかげです」
「やっぱりな……」
視線を向けると、メンザはにっこりとお茶目な笑顔を浮かべる。
これだけの人数を隠蔽する結界となると、使い手は相当限られる。
俺の予想通り、メンザだったか。
それにしても見事な腕前だ。
本人は衰えたと謙遜しているが、ダンジョンで見せた防壁といい、この隠蔽壁といい、間違いなく人類の最高峰だ。
「団長、鼠が地下にこもりました」
「そうか」
衛兵の報告を受け、クラウゼの顔が引き締まる。
「ここまで長かったですが、いよいよ、大詰めです。これから我々は館に突入し、地下にいる首謀者たちを一網打尽にします」
「それで、俺たちはどうすればいい?」
「お二人の戦いぶりはメンザ殿から報告を受けてます。ステフ殿と一緒に行動してください」
「ああ」
「好きに行動してください。我らも元冒険者です。レイド戦と一緒ですよ。冒険者らしく行きましょう!」
「それなら得意だ。任せてくれ」
「任せてください!」
「私も一緒だ」
ステフがやって来て、三人でかたまり、突入にそなえる。
一番槍は彼らに任せ、俺たちは後詰めだ。
「荒事は若者に任せて、年寄りはここでのんびりしてますよ」
「ああ、一匹も漏らさないでくれよ」
メンザは一緒に行動せず、ここに留まる。
その理由は言葉通りではない。
逃げようとした賊を障壁で閉じ込めるのが彼の仕事だ。
「よし、一斉に突入!」
クラウゼの合図とともに、メンザによる隠蔽が解除される。
先頭は数人のボウタイメンバー。
その後に衛兵団が続き、館に雪崩れ込む。
俺たち三人も彼らの後を追いかけた――。
次回――『ローガン商会地下倉庫』




