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145 誘拐

 夕方。

 ダンジョンから帰還した俺たちは、仕事があるというメンザと分かれた。


「ステフはどうする? また、女の子とデートか?」

「いや、私は真実の愛を知ってしまった。他の子と遊ぶのはしばらく控えよう」


 ステフは通信用の魔道具を取り出し、通話を始めた。

 漏れ聞こえてくる声によると、今夜約束していた女の子に断りを入れているようだ。

 やがて、通話も終わり――。


「待たせて済まない。今日は私も夕食を一緒させてもらおう。恋愛は抜きにして、二人とはパーティーメンバーとして、親睦を深めたい」


 ステフの心境に変化があったようだ。

 風の精霊王様との出会い。

 ステフにとっては運命の相手らしいが、話はそれだけではない。


 ステフも俺の仲間として、魔王討伐に向かうひとり。

 そう、告げられたのだ。


 世界の命運がかかっている。

 そのことを自覚したのだろう。


「よし、じゃあ、行こうか。ステフは食べたいものある?」

「そうだな。私は――」


 ステフが考えだしたところ、聞き覚えのある声で呼びかけられた。


「ラーズ兄さんッ!」


 駆け寄ってきたのは、一昨日孤児院で出会ったばかりの少女。

 双子のひとり、ララだ。


 あまり感情を表に出さないララだが、今は切羽詰まった表情だ。

 その表情がタダ事ではないと告げている。


「どうしたッ?」

「ロロがっ、ロロがっ――」


 ララは大粒の涙を流している。

 嫌な胸騒ぎがした。


 動転してちゃんとしゃべれないララを落ち着かせ、話を聞き取る。

 どうやら、最悪な状況らしい。


 ロロは孤児院の子どもたちを連れ、買い出しに行っていた。

 その帰り道、複数の男たちに襲われた。

 路地裏から飛び出してきた男たちは、子どもの一人を捕まえようと試みた。

 ロロは咄嗟に反応してそれを防ぎ、子どもたちを逃がすことに成功した。

 だが、その代わりにロロが男たちに攫われてしまったのだ。


 ロロの立派な行動は賞賛に値するが、同時にロロの身が心配だ。

 逃げ帰った子どもたちから話を聞いたララは、いてもたってもいられなかった。

 院長のロザンナさんに報告すると、ダンジョンにいるかもしれない俺を頼りにここまで来たそうだ。


「ラーズ兄さん、ロロを助けて」

「ああ、後は俺たちに任せろ」


 衛兵への連絡はロザンナさんがやってくれている。

 救いなのは、まだそれほど時間がたっていないことだ。


 俺たちなら、ロロを救えるかもしれない。

 いや、絶対に救ってみせるッ!


「ステフ、メンザに伝えてくれ。風の精霊王様が言っていた魔王の眷属がらみかもしれない」

「ああ、任せてくれ」


 ステフは通信用の魔道具を耳に当てながら、ギルド方向に走り出した。


「なあ、ロロの匂いは覚えているか?」


 風精霊は俺の問いかけに、クルクル回って肯定の意を示す。

 よしっ、これでなんとかなるかもしれない。


「シンシアは風精霊と一緒に先に行ってくれっ」

「ええ、わかったわっ」

『風の精霊よ、我とシンシアに加護を与えよ――【風加護ウィンド・ブレッシング】』


 速度アップの加護を俺とシンシアにかける。


「頼んだぞっ」


 風精霊を撫でると、ふるふると震えてから、凄い勢いで飛んで行った。

 その後を追いかけるシンシア。

 世界樹の靴を履いた彼女は、まさに風のように駆け出した――。


 走る速さではシンシアに追いつけない。

 彼女が間に合ってくれることを祈るばかりだ。


「ララ、君は孤児院に戻ってな。ちゃんとロロを連れて戻るから」

「はい」


 泣き止んだララの頭を軽く撫でる。


「じゃあ、俺たちも追いかけよう。案内よろしくな」


 別の風精霊にお願いする。

 風精霊は身体を揺すって応え、シンシアが向かった方向に飛び始める。


「間に合ってくれよッ」


 俺もシンシアの後を追って走り始めた――。

次回――『賊の拠点』


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― 新着の感想 ―
[一言] よりにもよってな相手の縁者を誘拐するとか 魔王の手先ならわかるけどそうでは無い普通の誘拐犯だと運がなさ過ぎる
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