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135 ララとロロ

「あっ、ラーズにいっ!!」


 少年の呼び声が広い庭に響きわたった。

 木剣を手に、他の少年たちと打ち合っていた子だ。


「おう、ロロ、元気にしてたか?」

「もちろんだぜっ! つーか、ラーズ兄こそ、どうしたんだよ。 サード攻略中じゃなかったのか?」


 元気いっぱい、やんちゃ盛りの少年の名はロロ。

 ララとは双子だ。

 落ち着いたララとは対照的に、年頃の少年らしく、落ち着きがない。


「まあな、後で話してやるよ。まずは、院長に挨拶しないとな」

「ふーん。それより、そっちの話が終わったら、俺と勝負してくれよなっ!」

「ああ、こてんぱんにしてやるよ」

「舐めんなよ、俺だって、この半年でかなり強くなったんだぞっ!」

「楽しみにしてるぞ」


 わしゃわしゃっとロロの頭を撫でてやる。

 口は悪いが、根はまっすぐな少年だ。


「あっ、綺麗なねーちゃんっ!!」


 ようやくシンシアに気づいたようで、ロロが大きな声を上げる。

 まあ、シンシアが世界で一番綺麗なのは真実なのだが……。

 思ったことをすぐ口にする悪い癖は相変わらずだ。

 悪気はないんだろうが、失礼なことには変わらない。

 注意しておこうかと思ったが――。


「ロロ、失礼」

「いてて……」


 ララがロロにゲンコツを落とした。

 結構、本気だったみたいで、ロロは頭を抱えてうずくまる。

 やんちゃな弟と、それを叱る姉。

 これが二人の関係だ。


「まだまだ、ガキでな。許してやってくれ」

「ええ、可愛いものよ」


 シンシアは年上の余裕で受け止める。

 冒険者には、もっと生意気な糞ガキがいっぱいいる。

 これくらいで腹を立てたりはしない。


「ほら、ちゃんと謝る」

「う〜、ごめんなさい。えっと……」

「シンシアよ。よろしくね」

「うっ……」


 シンシアに笑顔を向けられ、柄にもなくロロは顔を赤くする。

 まったく、色気づきやがって……。


「どうした? ロロ?」

「べっ、別に……」

「顔が真っ赤」

「うっ、うるさいっ!」

「シンシアさんが綺麗だから、照れている」


 ララに指摘され、余計に顔を真っ赤にする。

 ほんと、まだまだ子どもだ。


 同じ双子でも、ララは大人びた落ち着きを身に着けているが、ロロは相変わらずガキンチョのままだ。


「なあ、ラーズ兄……」

「なんだ?」

「シンシアさんって、ラーズ兄の彼女?」

「ああ、そうだ。素敵な女性だろ?」


 以前、よく会っていた頃は、「まだ彼女できないの?」と度々からかわれたな……。


「よかった。ラーズ兄、ずっと独り身だったから、モテないのかと思って心配してたんだ……」


 どんな心配だ……。


「そんなことない。ラーズ兄さんはカッコいい」

「ええ、そうよ。ラーズは意外と女の子に人気なのよ」

「そっ、そうなのか!?」

「えっ、そうなの?」


 ロロに続いて、俺も驚きの声を上げる。

 そんな話、聞いたことないぞ。


「ええ。それでも、その中から私を選んでくれたの」

「すっげー。ラーズ兄、かっけええええ」


 ロロが尊敬の眼差しを向けてくる。

 今まで、こんな真っ直ぐな視線を向けられたことなかったぞ……。


「ロロくんも冒険者になるんでしょ?」

「うん! 俺もラーズ兄みたいな冒険者になるんだ!」

「頑張ったら、ロロくんにも素敵な彼女ができるわよ」

「うおーーー、すげえやる気でた〜〜〜」

「単純……」


 ララが呆れたようにつぶやくが、ロロの耳には届かないようで、ガッツポーズでうなり声を上げる。

 年頃の男子は、本当に単純だ。


 だが、どんな動機であれ、それが原動力になるならば、それでいい。

 強い動機がないと、冒険者は続けられないから。


「よしっ、ラーズ兄、勝負だっ!」

「だから、それは後だって言ってんだろ」


 ためらいのない真っ直ぐさ。

 若さゆえの特権かもしれないが、とてもまぶしく思えた。


「じゃあ、また、後でな」

「うっす!」


 ロロは深く一礼してから、子どもたちの中に戻っていった。

 いつもより丁寧な礼だったのは、シンシアがいるからだろう。


「弟が失礼しました」

「ふふっ。大丈夫よ、ララちゃん」

「それでは、また、後ほど」


 ララも頭を下げてから、読書に戻った。


「じゃあ、行こう。院長と話がしたいんだ」

「ええ」


 子どもたちの姿を見送りながら、建物に向かう。


「ここは孤児院よね?」

「ああ」

「やっぱり、みんな……」

「うん。冒険者の子どもたちだよ……」

「…………」


 シンシアはすぐに事情を察し、黙り込む――。


 そう。

 ここにいるのは、ダンジョンで命を落とした冒険者たちの子どもだ。

 ダンジョン街では、どうしても、彼らのような孤児が生まれてしまう。

 この街にもここだけではなく、いくつもの孤児院が存在する。

 ギルドの支援や冒険者たちの寄付によって運営されているのだ。


「ここにいるのは、みんな、冒険者を目指している子たちだよ」


 冒険者の子どもだからといって、皆が皆、冒険者を目指すわけではない。

 職人を目指す者、商会に入る者、それぞれだ。

 進路ごとに配属される孤児院が割り振られる。

 ここは冒険者志望の子どもたちのための孤児院だ。


「ラーズはどうしてここに?」

「そうだな――」


 シンシアの問いに答えようとしたところで――。


「あらま、騒がしいと思ったら」

「お久しぶりです。院長」


 タイミングよく、建物から院長が出てきた。

 メンザと同世代――老齢と言っていい年の女性なのだが、まだまだ若々しい。

 悪ガキ相手なので、元気じゃなきゃ務まらないからな。


「立ち話もあれでしょ。中へどうぞ。そちらのお嬢さんも」

「ラーズとパーティーを組んでいるシンシアです」

「あらあら、ご丁寧に。私はここの院長をしてるロザンナです。我が家だと思ってくつろいで下さいね」

 次回――『ロザンナ』

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