126 ステフ歓迎会1
三人で拠点に戻る。
夕食は帰宅途中に店で買ってきた。
「じゃあ、ワインを取ってくるよ」
「ええ、お願いね」
ステフは相変わらず無言だったが、俺に向かって軽く頭を下げた……気がする。
俺の見間違いだろうか?
いずれにしろ、その表情が朝に比べて少し柔らかいのは間違いなかった。
料理を並べるのはシンシアに任せ、俺は地下の酒蔵庫へ向かう。
エルフ王城で振る舞われたネクタールには及ばないが、それなりに高級なお酒が取り揃えられているのだ。
適当に数本見繕って、リビングに戻る。
丁度テーブルの支度も済んだところだった。
シンシアが椅子に座ると、ステフはさらっとその隣に腰掛けようとし――。
「ステフさんは向かいに座って下さい」
シンシアにすげなく、あしらわれていた。
俺に対して少しは殊勝になったのだが、隙あらば口説こうという態度には変わりがないようだ。
クリストフもそうだったが、これはもう病気みたいなもんだろう。
絶対に治らない病気だ。
呆れながらも、俺はシンシアの隣に腰を下ろし――。
「じゃあ、乾杯だ。新しい仲間に――」
乾杯すると、ステフはうつむき黙りこんでしまった。
何事かと心配になり、シンシアと視線を交わす。
シンシアも戸惑っていた。
やがて――ステフは口を開いて語り出した。
「私は男というものに良い印象をもっていない――」
ステフくらいイケメンで女性と見れば口説くタイプだと、やっかみや嫌がらせも多いことだろう。
それで男への態度を硬化させ、それによって、より疎まれるという悪循環。
長年の積み重ねですっかり男嫌いになってしまったんだろうか。
「なので、ラーズにはずいぶんと失礼な態度をとってしまった。申し訳ない」
そう言って、ステフは深く頭を下げる。
ほう。素直に謝れるのか。
俺は少し意外だった。
シンシアもその姿に驚いている。
「今すぐ、女性と同じように接することは難しい。だけど、私なりに努力していくつもりだ。だから、どうか、私をクビにしないで欲しい」
「ずいぶんと殊勝だな」
朝とのギャップがずいぶんと大きい。
ロード戦に二人で挑むという俺の作戦は功を奏したようだが、思っていた以上の効果だった。
「思い上がっていたよ。自分の才能に溺れていた。自分は優れている。私について来られる仲間がいれば、どこまでも登っていける――そう思っていたんだ。だが、私は間違っていた……」
アイツらもそれに気づけたら、こうはならなかったんだろうな……。
「二人に比べれば、今の私は足手まといに過ぎない。でも、必ず追いついてみせる。だから、どうか、よろしく頼む」
再度、深々と頭を下げる。
「――わかった。頭を上げてくれ」
頭を上げたステフはこちらを伺うような視線を向ける。
きっとこっちがステフ本来の性格なのだろう。
失敗を悔いて、きちんと謝れる。
根は悪い奴じゃないんだろう。
初対面でナメられないように、見下されないように、ツッパった態度を取る。
ステフの場合は行き過ぎだったが、冒険者であれば多かれ少なかれ、そういう部分はある。
「俺も冒険者だ。この件はこれでお終い。後に引きずらないと約束しよう」
揉め事があっても、一度和解すればそれを引きずらない。
それが、明日の保証がない冒険者の生き方だ。
俺の言葉にステフは安心した顔を見せる。
無防備な笑顔に、俺はドキリとする。
やっぱり、イケメンは反則だ。
「あらためて、よろしくな」
「ああ、よろしく頼む」
俺が差し出した右手をステフはがっしりと掴む。
盾職とは思えないほど柔らかい手。
俺は少しびっくりした。
「私からもよろしくね」
シンシアも手を差し出す。
ステフはやはり、俺の場合よりも念入りだった。
こいつはまったく……。
俺は呆れながらも、ひとつの提案をする。
「ステフ、冒険者タグを見せてもらえるか? もちろん、俺たちも見せる」
「ああ、もちろんだ」
俺の言葉にステフは目を輝かせる。
仮加入や臨時パーティーの場合は、冒険者タグを見せることまではしない。
ジョブやレベル――ギルドに照会すれば分かる程度の情報を伝えるだけだ。
冒険者タグを相手に見せる。
それは冒険者としての自分を全てさらけ出すこと。
本当の仲間と認める行為なのだ。
俺とシンシアはタグに魔力を流し、ステフに手渡す。
こうすれば、他者でもタグ情報を見ることが出来る。
「【精霊統】に【聖誅乙女】!?!? 聞いたことないが、なんか凄そうだっ! ユニークジョブか?? それに二人ともレベル285!!! スキルも凄い!!!」
「頼りになるだろ?」
「あっ、ああ……」
「じゃあ、今度はステフのを見せてくれ」
「二人のを見た後だと、見せるのが恥ずかしいが……」
おずおずと差し出されたステフのタグをシンシアと一緒に覗き込む。
「なッ!?!?」
そこに書かれていた情報に、俺は腰を抜かしそうになった――。
次回――『ステフ歓迎会2』
ステフの謎が明らかに!
バレバレという噂も……。




