111 風流洞攻略2日目2:ガーディアン
問題なく通路を進み、部屋が近づいてきたところで、シンシアがなにかに反応し、立ち止まった。
「どうした?」
「分かるの」
「なにが?」
「ゴーレムの情報。頭に流れ込んでくるの」
「本当かっ!?」
「多分、【精霊知覚】のおかげだと思う」
「!?」
「名前はウッド・ゴーレム・ガーディアン。推奨レベルは250――」
モンスターを鑑定できるスキルを持っている者は少ない。
だが、通常のダンジョン攻略であれば、出現モンスターの情報は出回っている。
情報収集を怠らねば、初見の相手でも困ることはない。
だが、これから未踏破領域に挑む俺たちにとっては、なによりもありがたい能力だ。
「――弱点属性は雷と刺突。逆に、それ以外の属性には耐性があるわね」
「弱点まで分かるのか……」
精霊と触れ合えて、力を借りられるだけでも凄いのに、弱点まで分かるモンスター鑑定まで出来るのか。
【精霊知覚】は思っていた以上に強力なスキルだ。
なぜ、【精霊知覚】でモンスターを鑑定できるのか、理由は分からない。
モンスターと精霊――なにか関連があるのだろうか?
そもそも、ダンジョンは精霊術士を鍛えるための場所だ。
もしかすると、モンスターは精霊王様が……。
いや、これ以上は憶測だ。
考えても仕方がない。
目の前の課題に集中しよう。
それにしても雷属性か……。
ウルのような【賢者】であれば雷属性魔法が使える。
だが、精霊術では火風水土の四大属性しか使えない。
雷の精霊がいるのかどうかも不明だ。
俺もサラも雷属性は使えないし、シンシアも打撃攻撃しか出来ない。
俺たちとは相性が悪い相手だ。
「でも、推奨レベル250なのに、よく勝てたよね。サラちゃんを入れても三人なのに」
昨日一日で15ほどレベルを上げたとは言え、まだ推奨レベルを下回っている。初戦に至っては20もレベル差があった。
それでも、勝つことが出来たのだ。
「それだけ、俺たちのジョブが優秀なんだよ」
「サラはー?」
「ああ、もちろん、サラも優秀だ。助かってるよ」
「にひー」
精霊石を吸収して成長したサラの強さは俺たちに匹敵する。
残りの精霊石を全部与えたら、俺たちなんか置いてけぼりだろう。
だが、それだとサラに頼り切りになってしまう。
サラには俺たちと同じペースで成長するように精霊石を与えていくつもりだ。
「よし、これからアイツは『ガーディアン』と呼ぼう」
「了解よ」
「がーでぃあんー!」
わざわざ宣言したのもちゃんと理由がある。
モンスターには短い呼称を与え、共有しておく必要がある。
共通する呼び方がないと戦闘中に混乱するし、呑気に「ウッド・ゴーレム・ガーディアンを攻撃しろ」なんて言っている暇はない。
――ガーディアンを攻撃!
と短く正確に伝えるのだ。
オークを『豚』、ゴブリンを『ゴブ』と呼ぶように、ダンジョンに出現するモンスターには冒険者の間で共有されている呼称がある。
他パーティーと共闘することもあるからだ。
だが、俺たちがこれから出会うのは新種ばかりだろう。
ひとつずつ呼び名を決めていかなければならない。
その意味でも、【精霊知覚】で正式名称が分かるのはありがたいな。
「じゃあ、今日もガーディアン討伐だ」
「おー!」
サラは勢い良く手を挙げると、シンシアへ期待の視線を向ける。
「おー!」
サラにせがまれ、シンシアまで片手を挙げる。
照れくさいのか、ちょっと恥ずかしそうにしているシンシアが可愛い。
だが、シンシアはすぐに冒険者の顔に戻る。
「最初は私に任せてもらえないかしら?」
「ああ、任せた」
昨日の時点でシンシアも一撃でガーディアンを倒せるようになった。
安心して任せられる。
それに、【精霊知覚】が戦闘にどう生かされるかも興味深い。
「じゃあ、行くわね」
シンシアはガーディアンへと駆け出す。
そのシンシアを追いかける一体の風精霊。
さっき、シンシアに懐いていたやつだ。
風精霊はシンシアに力を貸し――シンシアは一段と加速するッ!
そのままガーディアンに向かって飛び上がり――。
『――【極重爆】』
渾身の一撃がガーディアンの胸部に打ち込まれ――上半身が爆散する。
「オーバーキルだろ……」
風精霊のサポートを受けた一撃は昨日とは桁違いの破壊力だった。
「まま、すごいー!」
自分でも信じられない様子のシンシアの周りを風精霊がクルクル回る。
「ずいぶんと懐いたようだな」
「ええ、可愛いわ」
ちょっと嫉妬する気持ちが湧き起こり、いかんいかんと反省する。
精霊相手に嫉妬するなんてな……。
「じゃあ、こいつにも精霊石を上げようか」
「いいの?」
「ああ、シンシアを守ってくれよ」
精霊石を差し出すと、風精霊は飛びついて吸収する。
そして、ひと回り大きくなった。
シンシアは慈愛に満ちた顔で優しく撫でてやる。
微笑ましい光景だ。
そう思っていると――。
「むー、あるじどのー、サラも」
こっちも可愛く両手をお皿にしておねだりだ。
「ああ、そうだな」
手のひらに載せた精霊石をサラがパクっと咥える。
「ぱわーあっぷー!」
「ははっ」
やっぱり、サラも可愛いな。
シンシアに向けるのとは別の感情だが、サラも大切な存在だ。
いざという時に二人を守れるよう、もっと強くならないとな。
「じゃあ、サクサク行こう。今日の目標はガーディアン百体だっ!」
「おー!」
「おー!」
次回――『会食』




