表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無崎くんは恐すぎる ~~見た目だけヤクザな無能男子高校生の無自覚な無双神話~~  作者: 閃幽零×祝百万部@センエースの漫画版をBOOTHで販売中
『【急】 ファントムレクイエム』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/72

12話 自由になれた気がした。


 12話 自由になれた気がした。


「忘れるな、ロキ。貴様と私の時間は重なっている。幸か不幸かは知らんが……その奇跡は事実だ」


 また、ロキの目から涙が流れた。

 理由なんて分からない。

 分かる訳がない。


 泣き続けているロキから視線をそらし、

 イス無崎は天を仰いだ。


(無崎。……貴様には、本当に感謝をしている。貴様の精神に宿れたおかげで、同じ痛みを背負っている者に出会い、この私が驚くほどの奇怪で珍妙な刺激を受けられ、研究に費やせる時間も得た)


 『彼』は、広がる蒼穹そうきゅうや、流れる雲を見つめたまま、


(私は、いつか、必ず、時間の秘密を解き明かす。その時は、こんな婉曲えんきょくな形ではなく、貴様に、直接、感謝の言葉を伝えよう。時間の壁を超え、今の貴様に会いにこよう)


 心の中でそう呟いた直後、

 イス無崎は、覚醒の兆しに触れる。


(ぅむ。そろそろ私の時間も終わる。無崎、あとは貴様の好きにするがいい。ここからは――貴様の時間だ)


 その言葉を最後に、

 無崎の意識は切り替わった。

 超越者ではなく、ただの凡庸でヘタレなオタクに戻る。




「……ぇ? ……ぁ……ぁ……」




 頭の中で渦巻く、

 ロキを苦しめた地獄の記憶。


 ソレを垣間見た無崎は、


(ロキさんの記憶……ぇ、なんで、どうして、俺はどうして、この人の記憶を……ぃ、いや、どうでもいい、俺の事なんて……そんな事より……ぁ、あの話、全部本当だったのか……こ、こんなの……酷すぎる……)


 自然と涙が出てきた。

 心が苦しい。

 痛い。

 しめ付けられる。


「あ……ぁ……」


 何も考えられなかった。

 無崎は、耐えられなくなって、ロキを抱きしめた。


 ボロボロと泣きながら、


「ひ、酷いよな……」


 いつものかすれた吃音きつおんとは違い、ハッキリと聞きとれる声を発した。


 心を刺す痛みが、精神的吃音を抑え込んだ瞬間。

 小さな奇跡の一つ。


 成長なんかじゃない。

 今だけの、この瞬間だけの、

 ちょっとした認知のズレのようなもの。

 だが、口は開く。

 聞きとれる言葉を口にできる。


 だからだろうか?

 自然と、ポロポロと、言葉を発してしまう。


「あんまりだよな……辛かったよな……ぁ、あんなの、酷すぎるよな……」


 涙が止まらない。

 心が砕けてしまいそうだった。


「頑張ったよな……苦しかったよな……あんなの……あんなのさぁ、ひでぇよぉ……つぅか、なんだよ、あの判事……ふざっけんな……死ねよ……くそったれ……殺してやる……俺が殺してやる、あんなクソ野郎……うぅ、うぅうう……あぁ……ロキ……ごめん……いっぱい……酷いこと言って……ごめん……ごめんなさい……」


 知らなかったから。

 とは、言えなかった。


 そこまでのクズにはなりたくなかった。

 知らなかったかどうかなど、どうでもいい。

 自分が最低な事を言ったのは、ただの事実。


 ボロボロと涙を流している無崎に、

 ロキは、


「最初に、ダイアモンドバックの拳があなたに当たった理由……ようやくわかりました。正直、不思議に思っていましたの。あなたほどの方なら、あの程度の攻撃、楽に避けられたのに。……謝罪のつもりだったのですね。わたくしのために、あえてそうしたとはいえ、厳しい事を言った自分が許せなくて……」


「違う……そんなんじゃない……そんなんじゃないんだ……違う……」


 ボロボロと涙を流す無崎を見て、ロキは奥歯をかみしめた。

 うまく言葉が出てこない。

 何を口にするのが正解なのか分からない。

 無崎に出会ってから、ずっとそう。

 かき乱されてばかり。


(不器用な人……どんな時でも、自分の優しさを素直に表には出せないのね……)


 ボロボロと、みっともなく泣く無崎の腕の中で、

 ロキは、彼のことが、心が裂けそうなほど愛おしくなった。

 だから、当然のように、また、涙がこみ上げてくる。


「ぁ、ありがとう……無崎さん……うっ……ぅう……ぁ、ありがっ……うぅ……」


 自分を抱きしめてくれて、そして、おぼれるほど涙を流してくれる男を、ロキは、だから、力いっぱい、強く、強く、強く抱きしめる。


 いつも心のどこかが感じていた痛みが緩和していく。


 酷く安っぽい言葉だけれど、

 彼女は、確かに、救われたと思った。


 ――自由になれた気がした――






(――ダメだ)






 すべてに、綺麗なオチがつきそうだった、

 その時、無崎は、

 そんな、『おざなりのオチ(イス無崎の妥協)』を否定する。


(……『自由になれた気がしただけ』じゃダメだ)


 涙を流したまま、無崎は、

 とんでもないワガママをふりかざす。


(こんな結末は認めない。こんな胸糞悪い終わりなんかいらない。こんなんじゃ、誰も救われないじゃないか)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これ無崎の言ってる胸糞悪い結末ってどのみちロキの家族は死んでるってことならそれを解決するためには時間を遡ったりタイムリープが必要。 それを可能にするためにはイス人の目的の時間の秘密を解き明か…
[一言] 普通に感動したんだがw
[一言] イスの本体が無崎に宿ってるわけではないのか。 別の時間からフラグメントを飛ばして無崎に入ってるっぽい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ