残念イケメン澄也君
「おし、あったあった。」
澄也の案内で二階にあがってブラッディハートの台を見つける。
懐かしいなぁ……受験でしばらくやってなかったからなぁ。
「んじゃ、ちょっと両替してくるね。」
澄也が両替機のほうへ行く。
「あ、私も両替しなきゃ。」
今財布に100円玉入ってないからね。
「いやー、人とやるのは久々だなぁ。わくわくしてくるよ。」
「ていうか、むしろ一人でもできたの?」
今まで神様の仕事してたんじゃないの? ていうか、そう考えたらなんで神様がゲームのこととか知ってるんだろう。
「まあねー。一応、なんでも出せるわけだし。ゲームくらい出せてもおかしくないでしょ? まあやろうよ。」
「あー……なるほどね。何使う?」
「久しぶりだし、クローバーかなー。楓ちゃんは?」
「やっぱハートかな。カッコいいし。」
「なんとなく主人公は使いたくないんだよねー。サブキャラで戦うのが楽しいっていうかさ。カッコいいんだけどねー。まあ、そんなことはどうでもいいや。始めよう。」
「うん、そうだね。」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ちょ、強い! 強い!」
「ふふふ、甘い、甘いよ楓ちゃん!」
2PWIN!!というロゴが画面に映る。
残念ながら俺は2Pじゃない。つまり、負けたってわけ。
「はぁー……」
澄也本当に強い。全然敵わないわ……
「どうする? まだやる?」
「うーん……今日はもういいや。このままじゃ明らかに勝てないし。今度練習するからそしたらまたやろ。」
「そっかぁ……にしても、あんなに自信あった割には……言っちゃ悪いけど、操作がぎこちなくなかった?」
「いやぁ、それなんだけどさー……やりはじめて分かったけど、手の大きさが……ね?」
変わったからさ、操作しずらいんだよね。言い訳みたいだから言いたくなかったんだけどさ。
「あー……まあ、そのうち慣れるでしょ。」
「頑張る。」
これくらいのことでブラッディハートをやめるわけにはいかないからね。
「うん。んじゃ、皆と合流しよっか。」
「そうだね。なんか勢いで置いてきちゃったもんね。」
「まあ、なんとかなってるでしょ。」
「一階にいるかな?」
「いるんじゃない? 三人とも、格ゲーやりそうな感じじゃないし、音ゲーとかも多分やらないでしょ。」
今いる二階は格ゲーのコーナー、三階には音ゲーがある。三人とも上の階に用があるようには見えないからね。
「そうだねー。一階はー……UFOキャッチャーとかだっけ?」
階段を下りながら話す。
「確かそんな感じ。後は銃持って撃つような感じのシューティングとかも置いてあったよね。」
ああいうのも友達とやると面白いんだよね。たまに皆でやったなぁ。
「あぁ。ゾンビとか撃つあれね。」
「そうそう。あとロボットとか。」
「そうだね。ああいう系はあんまりやったことないんだよねー。腕疲れそうじゃん。」
「皆でやると結構楽しいよ。」
「へぇー。」
「で、三人は……いたいた。」
「どこ?」
「あそこ。クレーンゲームしてる。」
澄也が指をさす。
「えーと……あ、ほんとだ。」
直矢がクレーンゲームで大きなぬいぐるみをとろうとしている。大方、エディか雛ちゃんか辺りにねだられたんだろう。
「おいっす。どれとろうとしてるの?」
澄也が近づいて声をかける。
「あの猫のぬいぐるみだ。三人で一回ずつやってるんだが、全然とれないんだ。お前、こういうのもできたか?」
「任しときなよ。ゲームならなんでもこなす澄也君の実力、甘く見ちゃいけないよ?」
いよーし、と腕まくりをして澄也が前に出る。
「これだよね?」
澄也が確認する。
「そうそう。全然取れなくってさー。澄也君取れるの?」
雛ちゃんが聞く。
「任しといてよ。」
「おおー、流石澄也さん、頼もしいです。」
「……俺は頼もしくないってか。」
直矢がむっとした表情で言う。
「だって直矢さん……機械とかダメじゃないですか……すぐ壊すし……この間だって……」
エディが困った表情で言う。
「そりゃお前……あんな簡単に壊れるのが悪いんだよ。」
ふてくされたように直矢は言う。
「普通マウスは砕けません。」
逆に何をしたら砕けるんだよ……
「握ったら潰れたぞ。」
おかしい。
「もう簡単に直せなくなるんですから、パソコンとか、触っちゃダメですよ!」
「言われなくても触ったら爆発しそうだし触らん。」
「パソコンは爆発しませんよ……」
「どっちにしろよく分からんもんは触らん。」
「そうしてください。」
「おっし、取れたよ。」
澄也が言う。エディと直矢が言い争っているうちに取ったらしい。
はい、と言ってぬいぐるみを雛ちゃんに手渡す澄也。イケメンじゃん。
「おおー、すごいね!」
「まあねー。もっと褒めてくれても、いいんだよ?」
フッ……と髪をかき上げる澄也。
……これがなければイケメンだったんだけどなぁ……




